ワックスドジャケットと言えば、経年変化を楽しみながら、自分だけの一着に馴染んでいく男心をくすぐるアイテムの一つだ。そんなワックスドジャケットと聞いて真っ先に「バブアー(Barbour)」が思い浮かぶ方は少なくないだろう。バブアーは、英国の老舗ブランドでライダースジャケットの代名詞となるモデルを生み出し、セレブリティやロイヤルファミリーにまで愛されるなど、数々の逸話を残すブランドだ。今回はそんなバブアーにフォーカスして、知られざる魅力や着こなしを紹介！
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バブアー(Barbour)とは？
1894年にジョン・バブアー(John Barbour)氏によりイングランド北東部のサウスシールズで創業された。北海の不順な天候の元で働く水夫や漁師、港湾労働者に向けてワックスで生地をコーティングし、防水や防風機能を実現させた”ワックスドクロス”を提供したことが始まりだ。ワックスドジャケットは耐久性が高く、創業当時から現在に至るまで、バブアーの名品として知られる。
バブアーは漁師から英国軍、英国王室まで幅広く愛されるブランド
バブアーのワックスドクロスを用いた防水ジャケットの高い耐久性は、当時の漁師を始め英国海軍や王室にも評価されていることで知られる。それを証拠に、バブアーは第一次・第二次世界大戦共に、防水服を英国軍に提供。第二次世界大戦では、ジョージ・フィリップ大尉によって潜水艦ウルスラの公式搭乗員服として採用された。大尉が部下にバブアーの防水ジャケットを着せて消火ホースで水を浴びせたところ、激しい水圧にもかかわらず部下の体は全く水に濡れなかったという逸話も残されている。
防水ジャケットの変わらぬ耐久性は、英国のフィールド&カントリーウェアーとして愛用され続け、1974年にエジンバラ公、1982年にエリザベス女王、1987年にはチャールズ皇太子の命を受け、英国王室御用達(ロイヤルワラント)の栄誉を授かっている。バブアーは、3つあるロイヤル・ワラントのすべてを保持している希少な存在だ。
バブアーの創立者ジョン・バブアー氏とは？
1849年に、スコットランド南西部のキャロウェイ地方で農家を営む旧家の次男として生まれた。少年時代は、寒さの厳しいスコットランドの天候のなか、羊の世話をする一般的な農家の子供だった。青年時代に故郷をはなれ、イングランド北東部に移住。布地の行商を始めたのは、当時バブアー氏が21歳頃の1870年からだ。その後24年間経験を積み、現在のバブアーブランドに至る新会社「J Barbour & Sons」を設立した。
バブアーは歴史を重ねるごとに世界中で愛されるブランドへ
1936年、ジョンの孫にあたるダンカン・バブアー(Duncan Barbour)氏がモーターサイクル仕様のライダース・ジャケット「インターナショナル」を発表。高機能かつ洗練されたインターナショナルはトライアルレースのイギリスのナショナルチームにも採用され、ライダース・ジャケットの代名詞となる名品になっている。６デイズ トライアルサーキットに出場した多くのレーサーや、1964年に出場した俳優のスティーブ・マックィーンも着用している。
1970年代に入ると、ハンティング、フィッシング、乗馬といった英国上流階級のアクティビティと密接にリンクし、カントリー・ジェントルマンの装いを彩ることで、英国を代表するアウトドア・ライフスタイルブランドとしての確固たる地位を築いた。マーガレット・バブアーが1980年に、ワックスドコットン生地でミドル丈にデザインされた「ビデイル」という乗馬服を発表し、大ヒットを記録した。1983年にはゲームハンティング用の「ビューフォート」も発表。現在では世界40ヶ国以上で販売され、アウトドアユースだけでなく、ファッションとして自分のスタイルにこだわりのある人々まで幅広く愛用されている。ジーンズといえばリーバイスと言われるように、英国ではワックスドジャケットといえばバブアーというイメージが定着しているのだ。
バブアーのジャケットは幅広いスタイルにフィットする！
バブアーのジャケットは、合わせられるアイテムの幅が広い点も魅力だ。ピッティウオモでは、ジーンズやTシャツを合わせたカジュアルスタイルはもちろん、スーツやジャケットに合わせたドレススタイルにバブアーのジャケットを活用している姿が散見された。
ドレススタイルにも好相性なバブアーのジャケット
バブアーのワックスドジャケットにネイビーストライプのスーツを合わせたコーディネート。ワックスドジャケットは、いわゆるカジュアルウェアの範疇に含まれるが、英国発祥というバックグラウンドのせいかドレスアイテムにあわせても意外にも馴染んでしまうという不思議なアウターだ。ワックスドクロスの経年変化が着込むほどに味になるという楽しみもある。
きれい目カジュアルスタイルにバブアーのインターナショナルをプラス
バブアーといえば、定番のビデイルやビューフォートが注目されがちだが、それらに次ぐ人気を集めるバイカーズジャケット「インターナショナル」にも注目しておきたい。ホワイトのケーブルニットにグレースラックスをあわせたきれい目カジュアルコーデにブラックのインターナショナルを取り入れることでスタイリングがキリリと引き締まる。
バブアーのジャケット×ホワイトジーンズのコーデでクリーンな雰囲気に
バブアーのジャケットにホワイトのスリムパンツを合わせてクリーンな雰囲気をプラスした着こなし。ワックスが抜けたクタッとした風合いも、バブアーのジャケットならではの味であり魅力のひとつ。
ちなみに、秋冬を中心に展開されるワックスドクロスバージョンの他に、春夏にはワックスドではない布帛の生地を用いた商品も毎シーズンリリースされている。春夏に向けてバブアーを検討するならチェックしておきたいところ。
バブアーのジャケットは、ワークウェアが原点のジーンズにももちろん好相性
ワークウェアを皮切りに英国で生まれたバブアーのワックスドジャケット。同じくワークウェアとして米国で誕生したジーンズ。そんな両者を組み合わせたコーディネートがこちら。
首回りに立体感を演出する襟立てやノークッション丈のロールアップ。さらに、Aラインを構築するようにジャケットの下半分のボタンをオープンにするなどの、”さりげないアレンジ”によって、こてこてなワークスタイルに終始せず、こなれ感のあるスタイルに仕上げているこの御仁には学ぶところが多い。
オンオフ両用アウターの定番キルティングジャケットもバブアーなら本物感が漂う！
キルティングジャケットといえば、ビジネススタイルにフィットする定番アウターだ。今や様々なブランドから展開されているが、やはりバブアーの展開するキルティングジャケットは英国発祥の本物感が漂う逸品。ジャケットの裾が隠れる絶妙なショート丈のため、オンオフ問わず軽快に装えるのがなんとも嬉しい。
バブアーの十八番”英国チェック柄の裏地”がシンプルコーデにアクセントをプラス！
ワックスドジャケットとカーゴパンツ、ワークブーツを組み合わせることで、武骨なワークスタイルを構築。ワックスドジャケットのライニングに配されたタータンチェック柄が無骨な装いにポップなアクセントをプラスしている。カーゴパンツはインナーのニットセーターに合わせてネイビーをチョイスすることで、統一感のある落ち着いた印象に。
バブアーのワックスドジャケットの魅力とは
バブアーのワックスドジャケットの具体的な魅力について知るために、「ビデイル」というモデルのディテールに注目して魅力を紹介。
バブアーの魅力①「耐久性と光沢感を持たせるワックス加工」
ワックス加工を施すことで、優秀な耐久性や防水性を実現。また、ワックスによる光沢感がバブアー独特の風合いを生み出しており、この素材感に惚れて購入するファンも多い。だが、ワックス加工には特有の匂いと他の衣類へのワックスの付着といった問題が存在する。保管にはガーメントケースを掛けるなどして、他の衣類にワックスが着かないように注意が必要だ。また新品時は特にワックスが移りやすいため、新品を着用する際には人混みをなるべく避けるのもエチケットとして心得ておきたいところ。
バブアーの魅力②「ワックスドジャケットに適した仕様のパッチポケット」
バブアーのパッチポケットは、マチ入りのため大容量な機能性のあるポケットに仕上がっている。防水・防風機能があるワックスコーティングされた生地を考慮し、マチ部分にはベンチレーションホールを設けることで、雨天時などにポケットへ水が侵入して溜まらないよう設計されている。このディテールも、バブアーならではの特徴のひとつだ。
バブアーの魅力③「保温効果のあるコーデュロイ素材の衿」
衿には、スロートフラップ（風止）付のフード用留め鋲(リベット)が施されている。素材は、コール天とも言われる素材のコーデュロイを採用。程よい起毛感が保温効果を期待できる。
バブアーの魅力④「機能性を高めるラグランスリーブ」
襟ぐりから袖下にかけて斜めの切り替えが入った袖のことをラグランスリーブという。これは、クリミア戦争で活躍したラグラン将軍が右手を負傷した際、簡易な着脱を目的に採用したことから生まれたと言われているディテールだ。セットインスリーブと比べて、腕の可動域も広がるので、ハンティングジャケットに必要不可欠であろう機能性の向上のため、バブアージャケットの多くでラグランスリーブが採用されている。
バブアーの魅力⑤「ハウス・タータンチェック柄」
裏地に施されたチェックは、イギリス発祥のスチュワート・タータンチェックだ。スチュワート家が輩出した家系が生み出した柄と言われており、英国では家紋と同じようにオリジナルのタータンチェックがいくつも存在する。もちろん、バブアーのジャケットに施された裏地の配色はブランドオリジナルのハウス・タータンチェックだ。
バブアーの代表的モデル紹介
乗馬コートを踏襲したバブアーが誇る名作をモダンにアレンジした「ビデイル SL(Bedale SL)」
1980年に発表されて以来、世界中で人気を集めている大人気モデル。ちょうどジャケットが隠れる丈感でどんな着こなしにも合わせやすいのが特徴だ。「BEDALE SL / ビデイル SL」は、ブランドを代表するベストセラーをモダンなサイズにアップデートしている。ラグランスリーブやサイドベンツ、ハンドウォーマー、袖口に施されたリブなど乗馬用コートのディテールはそのままに、現代的なフィッティングを採用しておりスッキリと着こなせるのが魅力。バブアーを検討している方にはこのモデルは有力候補として挙げられるのではないだろうか。
【関連記事】英国の老舗バブアーの名作アウター「ビデイル」の魅力とは？
バブアーのビデイルはロング丈も展開
スーツの上に着られるアウターとしても有名なビデイルだが、ロング丈のモデルであればビジネスシーンにおいて、よりスマートな着こなしが可能だ。前面裾部分に付けられたナイロンの泥除けや、ウエスト部分のアジャスターなど、細かいディテールがポイント。ボトムスを選ばない汎用性の高さを維持しながら、スーツスタイルに最適なサイズ感を実現している。
新素材を採用したバブアーロング丈の定番「ボーダー SL 2レイヤー(Border SL 2LAYER)」
ロング丈の定番モデル。スリムなシルエットに裾広がりのAラインが映える設計だ。SLモデルならではの綺麗なシルエットも魅力的。ラグランスリーブのロング ビデイルと異なり、ボーダーはセットインスリーブ(普通袖)のため、よりベーシックな着こなしが可能。2レイヤーのこのモデルでは、バブアー特有のワックス感とは一味違う新素材の質感を堪能できる。
バブアーが狩猟用コートとして開発した「ビューフォート SL (BEAUFORT SL)」
ハンティング用として開発されたワックスドジャケット。ビデイルと形はよく似ているが、ビューフォートには”ゲームポケット”と呼ばれる、ハンティングで得た獲物を入れる大きなポケットが備えられている。シンプルなデザインに見えながら、脇の下のオープンリベット(通気口)や比翼の内側に隠れたポケットなど、機能性に優れたディティールを数多く備える。中に着込んだジャケットが隠れる着丈なので、幅広いコーディネートで重宝する。
バブアーが誇る元祖バイカーズジャケット「インターナショナル SL(INTERNATIONAL SL)」
1936年に発表し、ライダース・ジャケットの代名詞ともなっているモデル。バイクに乗っていることを前提に作られているため、取り出しが行いやすいよう左胸のポケットは斜めに設計されている。SLモデルによるサイズ感の変化に合わせてポケットの大きさも調整された、こだわりの一着だ。
街着としても活躍するバブアーのショート丈ジャケット「スペイジャケット(SPEY JACKET)」
短めの着丈とゆったりしたシルエットが特徴のジャケット。元はフライフィッシング用として開発されたモデルのアーカイブをベースに作られており、ダブルジップやフラップポケット、右胸部と左側腹部のDリングなど独特のディティールを備えている。ラグランスリーブで動きやすく、タウンユースからアウトドアまで活躍する。
オンオフ両用で使えるバブアーのキルティングジャケット「リッズデール SL ナイロン(LIDDESDALE SL NYLON)」
裾を直角にカットしたスクエアカットが特徴のキルティングジャケット。落ち着いた雰囲気とスリムフィットなサイズ感で高い人気を誇る一着だ。ナイロン素材を使用したこのモデルでは、程よい光沢感と襟のコーデュロイがポイントになっている。
バブアーを長く使用するための手入れ方法紹介
経年変化を長きに渡り楽しむためには、メンテナンスは必要不可欠だろう。こまめな手入れにより、バブアーのジャケットを長く使用するための方法を紹介！
バブアーの手入れ方法 1「ブラッシング」
ジャケットの表面に付着した汚れや砂埃は、革靴同様に普段からブラッシングで払い落とすと長持ちする。特にコーデュロイの衿はバブアーのジャケットで、最初に汚れが目立つ部位なので注意深く扱いたいところだ。また、コーデュロイは痛みやすい生地でもあるため、優しくブラッシングを行うのがポイント。できれば、ワックスを他の衣類へ付着させないためにも、バブアー専用にブラシを準備するのが好ましい。
バブアーの手入れ方法 2「カビを防ぐための乾燥」
湿気が多いと言われる日本ではカビの恐れは無視できない。特に雨や風を通しづらい特性を持つバブアーのジャケットにとって、カビに対するケアはマストだ。対策として、通気性の良い場所で保管し、湿気を無くすために通気性の良い布を上に被せることで、カビの対策と同時にワックスが他衣類へ付着する危険性を軽減できるだろう。
バブアーの手入れ方法 3「リプルーフ」
ワックスドジャケットはワックスを入れる(リプルーフ)作業が、防水性を長持ちさせる基本的な要素の一つと言えるだろう。業者に頼むか、セルフで行うかは個人の自由だ。自分が納得できる方法で、オリジナルのワックスドジャケットを作っていきたい。ちなみに、リプルーフの頻度は5年に1度で十分と言われている。
バブアーの「リプルーフ」とは？
年月と共に、ワックスコーティングは剥げて味がでてくる。経年変化を楽しめる要素の一つでもあるが、ワックスが剥げすぎると雨風を防げなくなり、ジャケットの強度も弱くなってしまう。ワックスドジャケット独自の表情と性能を保つには、防水ワックスを塗り入れる「リプルーフ」という作業を定期的に行う必要がある。専用のワックスが販売されているため、自分で手入れする場合はあらかじめ購入しておくと良いだろう。
バブアーのリプルーフの手順として、
1:表面の汚れをブラッシング&スポンジで優しく落とす。
2:ジャケットをドライヤーで温める。
3:専用ワックスを缶に入った状態でお湯に浸け、外側から溶かす。
4:ワックスを満遍なくジャケットに塗りこむ。
5:ドライヤーとブラシでワックスを馴染ませ、風通しの良いところで干す。
以上の工程を行うのが正しい手入れの手順だ。
バブアーの修理・リプルーフを専門家に頼む場合
ワックスドジャケットのメンテナンスはラヴァレックス社に依頼が可能だ。バブアー本社での研修を受けた長く経験を持つ職人が、１点ずつ丁寧にリプルーフをはじめとした修繕などのメンテナンスを行ってくれる。
ラヴァレックス社にメンテナンスを依頼する際は、ジャケットを郵送する必要がある。ラヴァレックス社のメンテナンスサイトより、メンテナンス依頼書と同意書をダウンロードし、ジャケットと同梱して郵送。その後メンテナンス費用を相談し、合意すると依頼が完了する。店舗に持ち込む場合も手続きは同じだ。▶︎ラヴァレックス社のメンテナンスサイトはこちら
バブアーの店舗紹介
バブアーは、渋谷旗艦店を中心に全国にブランドストアを展開している。重厚感のあるレンガの壁、アイアンフレームの窓など、ブランドの世界観が体現された店内に一度足を運んでみるのはいかがだろうか。※下記の画像はバブアー銀座店
・バブアー渋谷店
住所：東京都渋谷区神宮前6-17-15
TEL：03-6450-5993
営業時間：11:00 ～ 20:00 [不定休]
・バブアー銀座店
住所：東京都中央区銀座6-10-1
TEL：03-6264-5569
営業時間：11:00 〜 20:30 [不定休]
TEL：06-6151-1547
営業時間：10:00 ～ 21:00 [不定休]
・バブアー岩田屋天神店
住所：福岡市中央区天神2-5-35 岩田屋本店本館6階
TEL：092-724-5209
営業時間：10:00 〜 20:00 [不定休]
