ワイシャツといえば、既製品でもオーダー品でもサイズ感が命。特に首回りについては着心地や見た目に直結する部分なので細心の注意を払ってサイズを選択したいポイントです。「指が2本入るくらいの余裕があったほうが良いですよ」なんていうアドバイスをされた経験はありませんか?中には「余裕のあるサイズがお好きなら3本分の余裕をもたせても良いですよ」などというアドバイスをする店員さんもいます。IMAGE:Body Measurements
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「ワイシャツの首回りに指2本分の余裕が必要。」は本当?
ワイシャツの首回りはジャストサイズが正解。「指1本分の余裕だって要らない!」と断言する専門家すらいます。
ここでスーツスタイルの良きお手本である、ダニエルクレイグ氏のワイシャツのサイズ感がよくわかる画像を1枚。
首にジャストフィットしたサイズ感ですね。指が2本も入ってしまったらこの引き締まった首元は実現不可能です。
ワイシャツ首回りに余裕は、着こなしに乱れに直結。
ダニエルクレイグ氏の着こなしと比較してしまうのは酷ですが、参考に下の画像をごらんください。
①「首とワイシャツ襟の間に隙間ができて影になっている」
②「ルーズな首回りサイズに対してネクタイはしっかり締めているので襟の付け根が重なっている」
という点に気づくはずです。※上記の画像についてはモデル撮影のため、ジャストサイズのシャツが間に合わなかった等の事情があると思います。
また、ビジネスマンにも意外とよく見られるのが③「首回りのサイズが大きすぎるために襟の付け根の角度が限りなく鋭角に近いパターン」。
もちろんワイシャツデザインや撮影条件の違いはありますが、同じレギュラーカラーの画像で比較しても差が顕著です。
首まわりはルーズなのに、シャツの裾だけはきっちり引っ張ってスラックスに入れてベルト固定するので間の抜けた感じになってしまいます。
「ワイシャツの首回りに指1本分の余裕」はハイカラーシャツの名残
「ワイシャツの首回りに指1本分の余裕を」というのは、実は西洋でよく言われることですがこれは元々ハイカラーシャツ着こなしの名残だと言われています。襟が高いと見ため的にも、着心地的にもジャストサイズではさすがに窮屈なので、少しだけ余裕を持たせるという類のスタイル。現在は襟腰が低いものが安定したトレンドなので隙間は不要です。
「すべてのワイシャツは程度の差こそあれ縮む。特に縮みやすいトップヒューズ芯とは?」
ジャストサイズがベストなのは分かったものの、どんなワイシャツも程度の差こそあれ繰り返しのクリーニングによる繊維の縮みから逃れることができないという問題があります。(高番手の上質生地ほど縮みが小さい傾向にありますが。)
さらに日本国内に流通するワイシャツの多くは、トップヒューズ芯と呼ばれる低コストでしっかりした襟を製造することのできる仕組みが採用されています。詳細は省略しますがデメリットは、クリーニングの作業工程でかかる熱に弱く「縮みやすいこと」です。クリーニングを繰り返すと最悪の場合、3cmくらい縮みます。(高級シャツに採用されるフラシ芯は縮みにくい)
<参考>一般的なトップヒューズ芯地の洗濯回数と洗濯進行収縮の関係を示すグラフ。トップヒューズ芯地研究資料より抜粋。(1998)
首回りの余裕を持たせたがるお店は、もしかするとここに自信がなく、縮みによるクレームを恐れているのかもしれません。自分で選んでしまうと「サイズが大きいじゃないか!」というクレームはつけにくいですからね..
とは言ってもクリーニング技術や紡績技術などの進化によりワイシャツの縮みは、日々どんどん解消されています。腕の確かなクリーニング店ほど、洗浄する際の湯やプレス温度の調整など日々研究を重ねており「縮み防止コース」を設けていたりします。
「上質なシャツをジャストサイズで長く着る」という王道から、「縮みうやすいワイシャツを選んでも、クリーニングにはこだわる」「トップヒューズ芯の中でも縮みが少ないものを賢く選ぶ」「縮みペースのピークにあわせたサイズチョイス」など様々な選択肢・観点が考えられます。いずれにせよ一概に「首回りに指2本分の余裕」というのは間違いと言わざるを得ないでしょう。