こだわりの素材と伝統のグッドイヤーウェルト製法によるハイクオリティな靴が世界中の人々に愛されているサンダース(SANDERS)。ミリタリーコレクションをはじめ、ビジネスからカジュアルまで幅広いバリエーションのアイテムを展開している英国の老舗革靴ブランドだ。今回は「サンダース」にフォーカスし、その魅力と定番アイテムを紹介!
スポンサーリンク
140年以上もの歴史を誇る英国の老舗革靴ブランド「サンダース」
サンダースは、1873年にウィリアム・サンダースとトーマス・サンダースの兄弟によってラシュデンに設立された英国の老舗革靴ブランド。140年以上にわたってファミリービジネスを受け継ぎ、現在は4代目のもと90人以上の職人が高品質な靴を手がけている。グッドイヤーウェルト製法へのこだわりは英国メーカーの中でも随一で、パーツのほとんどに天然素材を使用。
また、サンダースはロイヤルワラント(英国王室御用達)を授与されているだけでなく、エリザベス女王のクラウンを製品に刻印することを許されている数少ないブランドでもある。ギーブス&ホークスやマルセルラサンス、A.P.C.、ラルフローレンなど錚々たるファッションブランドへのOEM生産のほか、英国国防総省へも革靴を納入。サンダースの靴は30以上の国で愛用されており、日本へは2006年に本格上陸を果たした。
サンダースの靴は上質な素材を使用しながらもリーズナブルな価格を実現
サンダースの革靴は、本格的な英国靴メーカーの中では、やや控えめの価格設定。それにもかかわらず、素材のバリエーションや品質の高さはハイブランドに勝るとも劣らないクオリティだ。代表的な素材が、サンダースの代名詞とも言える「Military Collection(ミリタリーコレクション)」で採用されているポリッシュドカーフ。チープなガラスレザーとは一味違う、しっとりとした光沢を放つ。
通常のカーフレザーのクオリティも一級品。底光りするようなナチュラルな光沢感は、キメの細かい牛革ならではだ。
チャッカブーツなどに採用されるスエードの出来栄えも見事で、柔らかくも高級感溢れる仕上がりとなっている。また、毛羽立ちが短く整えられているため、必要以上に暑苦しい雰囲気を煽ることなく、春や秋にも使いやすいのが魅力だ。
これだけの上質素材を揃えながらもリーズナブルな価格で展開できるのは、サンダースがイギリス国防総省(MOD)向けにレザーシューズを供給しているため。イギリス国防総省の靴のほとんどがサンダース製で、ファクトリーの約50%をその製造ラインとして割当てている。民間企業ながら政府に協力していることもあり、生産コストを抑えられているのだ。
サンダースの靴はオールアラウンドグッドイヤーウェルト製法による優れた耐久性と履き心地が魅力
サンダースのドレスシューズの多くは、グッドイヤーウェルト製法によって手がけられている。ソール交換が可能なことに加え、優れた耐久性や、履くたびに足に馴染むインソールによる快適な履き心地を得られるなど、多くのメリットがあるのがこの製法の魅力だ。高級既成靴の代名詞とも言えるこの仕様だが、内部に使うシャンクなどのパーツやコバの張り出し具合など、メーカーによってその仕上がりはさまざま。サンダースのグッドイヤーウェルト製法は、パーツのほとんどに天然素材を用いているのが特徴。コバの張り出しもあえて抑えることはせず、クラシックかつ重厚感溢れる仕様となっている。
また、一般的なグッドイヤーウェルト製法が靴の前半分のみに施すのに対し、サンダースは360度外周全てに施すオールアラウンドグッドイヤーウェルト製法を採用しているのも特徴。360度ウェルトやダブルウェルテッドとも呼ばれるこの意匠は、アメリカ靴などに多く見られ、通常よりも重厚な雰囲気を演出する。機能面においては、ウェルトを全周することによりカカトの固定に、重量化の原因となる釘を用いる必要がないというのが利点として挙げられる。釘を使わないことで見た目の重厚感に相反して軽く仕上げることが可能となるのだ。
グッドイヤーウェルト製法の靴は重さを理由に敬遠する人も少なからず存在するが、サンダースの靴はクラシックな雰囲気を損なうことなく軽量化し、快適な歩行にちょうどいい重量を実現している。また、釘を使わないことにより、かかと周りにもコルクを敷き詰められることから、一般的なものよりクッション性に優れているのもオールアラウンドグッドイヤーウェルト製法の魅力である。
サンダースを象徴するシリーズ「Military Collection(ミリタリーコレクション)」
多種多様な革靴を手がけるサンダースの中でも、近年特に高い人気を誇るのがMilitary Collection(ミリタリーコレクション)だ。このシリーズは、MOD(英国国防省)へのオフィシャルサプライヤーでもあるサンダース社が収蔵しているミリタリーシューズのアーカイブを元に、木型からデザインされている。
贅沢な光沢と機能性を備えるポリッシュドカーフを採用した、サンダースのミリタリーコレクション
ミリタリーコレクション最大の特徴は、アッパーに採用されているポリッシュドレザー。通常のカーフレザーに樹脂でコーティングするポリッシュドレザーは、非常に綺麗な光沢が特徴だ。サンダースのポリッシュドレザーは、革のダイヤモンドとも呼ばれるコードバンに類似する質感を生み出していることで有名。これは、キメが細かくしっとりとしたカーフレザーを素材に使用しているため。生後6ヶ月以内の仔牛の皮を鞣した上質なカーフレザーの表面に樹脂を薄く塗り、丁寧に磨き上げることで美しい光沢感を実現しているのだ。
ポリッシュドレザーは、雨の日でも履けるというのも大きなメリット。本来、雨は革靴にとって大敵であり、水に塗れることで輪ジミになって変色したり質感が変化するだけでなく、最悪の場合カビが発生してしまうこともある。しかし、ポリッシュドレザーの場合は樹脂膜に覆われていることから、高い耐水性が備えられている。多少の雨ぐらいであれば、ほとんどケアすることなく着用できるため、「雨の日は革靴を履けない」という認識を覆す素材だと言えるだろう。
また、一般的なカーフレザーの革靴と異なり、定期的な手入れがほとんど必要ないとうのもポリッシュドレザーの特徴だ。土や埃などの汚れが気になる場合は、水で濡らした布でサッと拭き取るだけで解決する。月に2〜3度クリームを塗って磨き上げる作業を苦に感じる人にとっては、非常に魅力的な素材である。また、手入れが不要だからといってエイジングが楽しめないということもなく、履き皺などの経年変化で格段に味わい深くなるのもこのレザーの魅力だ。
ヒールに刻印されたエリザベス女王のクラウン
シューメーカーに限らずロイヤルワラントを授かっているブランドは少なくないが、サンダースはイギリスの官納入品を手掛けてきた実績から、女王のロイヤルクラウンを靴に刻印することが許されている、英国でも限られたブランドの一つだ。ミリタリーコレクションのヒールには、エリザベス女王のクラウンが刻まれており、さり気ないアクセントとなっている。
サンダースのミリタリーコレクションを代表する「MILITARY DERBY SHOE(ミリタリーダービーシューズ)」
ミリタリーコレクションの中でもひと際愛用者が多いのが、外羽根ストレートチップの「MILITARY DERBY SHOE(ミリタリーダービーシューズ)」。まず注目すべきは、このモデルの最大の特徴でもあるトゥ部分のディテールだ。一般的なストレートチップが2本のステッチによってラインが描かれているのに対し、ミリタリーダービーシューズのつま先には3本線のステッチが入っている。これはサンダースの伝統でもあるミリタリールーツを示すものであり、他の革靴とはひと味違う雰囲気を醸し出す意匠。カジュアルな印象を演出し、堅すぎない雰囲気に仕上がっている。
シルエットは至ってオーソドックス。太すぎず、細身すぎないフォルムは、決して流行に左右されず「質実剛健」という言葉が相応しい。実用性に優れ、ビジネスでもプライベートでも使用できる汎用性を備える。グッドイヤーウェルト製法によって製造されているため、インソールは足裏と指の形にあわせ、足を入れるたびに中のコルクが沈み込む。滑らかなスムースレザーを使用することでクッション性に優れているのも特徴だ。また、踵の内側部分はスエードで作られており、これが滑り止めの役割となり踵が抜けにくくなっている。
ソールにもこだわりがあるのがMILITARY DERBY SHOEの特徴。いわゆるダイナイトソールに近い形状を持つこのコマンドソールは、英国ITSHIDE社製のもの。非常に頑強な作りとなっており、ソールから雨が侵入する可能性はほぼ皆無と言える。最初の履き心地こそやや硬さを感じるものの、通常のラバーソールよりもソールの減りが格段に遅いのも魅力だ。グリップ力とクッション性も抜群で、一度足に馴染んでしまえば長時間の歩行にも疲れにくい設計となっている。悪路を進むために開発された、まさにミリタリールーツによる実力を発揮したソールだと言えるだろう。
シューレースはロウ引きの「平紐」を採用。一般的なドレスシューズは丸紐が使われることが多いが、実は平紐はビスポークシューズに多く使われる。その理由は、フィット感の良さにある。靴を「面」で押さえる平紐は歩行時の密着感が高く、丸紐以上にしっかりと足をホールドすることができるのだ。装飾性という意味でも、3本ステッチのトゥとの相性は抜群。ミリタリーダービーシューズにはスタンダードなブラックのシューレースに加え、カーキのシューレースも付属しており、シーンやコーディネートによって使い分けできるのは嬉しいポイントだ。
シンプルなデザインが魅力のサンダース「MILITARY OFFISERS SHOE(ミリタリーオフィサーズシューズ)」
外羽根プレーントゥのミリタリーオフィサーズシューズ。同じミリタリーコレクションでも、こちらはサンダースならではの3本ステッチが入っていないため、よりオーソドックスな一足となっている。ただしポリッシュドカーフのアッパーや、オールアラウンドグッドイヤーウェルト製法などの意匠は健在。質実剛健ながらも機能性に優れた逸品だ。
足元を華やかに演出するサンダース「MILITARY HIGHLAND BROGUE SHOE(ミリタリーハイランドブローグシューズ)」
ミリタリーコレクションの外羽根ウイングチップ。メダリオンやパーフォレーションなど、フルブローグの装飾性とポリッシュドカーフの光沢が見事なほどにマッチしている。ITSHIDE社製のコマンドソールによってさらに重厚感が増すとともに、防水性を向上。アッパー、アウトソールともに多少の雨をものともしない仕様となっている。平紐のシューレースも装飾と相性抜群。
カーフレザーの美しい質感が魅力のサンダース「HELSINKI(ヘルシンキ)」
老舗英国ブランドらしい技術力が窺える内羽根ストレートチップのモデル。オールアラウンドグッドイヤーウェルト製法によって一般的なキャップトゥよりもややソールの存在感はあるが、フォーマルでも充分使用できるようなクラシックな佇まいが特徴だ。見た目に反して軽く、長時間の歩行でも疲労を感じさせないのも魅力。カーフレザーの美しい質感が、サンダースがポリッシュドカーフだけのブランドでないことを物語っている。
007のジェームズ・ボンドも愛用するサンダース「HI TOP CHUKKA(ハイトップチャッカ)」
ハイトップチャッカは、映画「007 スペクター」でジェームズ・ボンドの足元を飾ったことでも有名なチャッカブーツ。ハイトップチャッカの原型であるマッドガードというモデルは、アメリカの俳優であるスティーブ・マックイーンも公私共に愛用していたとされている名作中の名作だ。そんなハイトップチャッカのソールは底付けに「マッドガード製法」を採用している。その名の通り泥除けのために生み出されたこの製法は、靴の弱点とも言えるアッパーとソールの隙間に薄いゴムを貼りつけることで隙間部分を強化。泥の汚れや雨の水分などの侵入を防ぐとともに、独特なルックスに仕上がっている。分厚いラバー製のアウトソールによってクッション性も◎