スコッチグレインといえば、上質な素材選び、グッドイヤーウェルトへのこだわり、日本の熟練職人による確かな縫合技術を誇りながらも、3万円台という圧倒的なコストパフォーマンスの良さを実現する日本を代表する革靴ブランドだ。今回はそんな「スコッチグレイン」にフォーカスし、その魅力とおすすめモデルを紹介!
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素材選びから縫製に至るまで、上質を追求するスコッチグレイン
スコッチグレインは、日本のヒロカワ製靴が展開するシューズブランド。ヒロカワ製靴は1964年、廣川悟朗氏によって東京都台東区にて創業。1978年に自社オリジナルブランドとしてスコッチグレインの販売を開始した。ブランド名の由来となった「スコッチグレインレザー(scotch grain leather)」は、革の工法のひとつ。表面に細かい粒状のエンボスが刻まれる皮革の加工方法で、スコットランドで偶然麦の文様が革についてしまったのが発祥とされている。スコッチグレインはそのブランド名があらわすとおり、レザーの素材はもちろん糸の1本に至るまで品質の追求に妥協がない。東京の墨田区にある工場にて職人たちが一貫生産で行なっており、日本人の足に合う靴を手がけている。
世界各国の名門タンナーから厳選されるスコッチグレインのレザー
皮革の種類をそのままブランド名にしてしまうほど、スコッチグレインのレザーに対するこだわりは凄まじいものがある。職人としても腕を振るう社長自らが世界各国へと飛び、一流タンナーと直接交渉。ドイツ、フランス、イタリア、イギリスといったヨーロッパ諸国で、徹底的に質にこだわって素材を買い付けている。たとえば一部モデルではフランスのアノネイ社など、海外の有名ブランドでも使われている良質なレザーを採用。国産レザーにおいても姫路や栃木などから高品質なものを集め、一切の妥協を許さない。
世界の革の”個性”を活かすスコッチグレイン
ひとくちに名門タンナーの革と言っても、実はその品質はさまざま。そのため、スコッチグレインでは革の”個性”を見極める厳しく選別基準を設けている。人間の皮膚が一人ひとり違うように、牛の皮を加工した皮革も、1枚1枚異なった個性を持つ。どれだけ丁寧な鞣し加工を施しても、個体差と呼ばれるこれらの違いは避けられないもの。そういった革の個性を踏まえた上で、タンナーから送られてきた革を自社の職人によって改めて検品し、商品に相応しいグレードかどうかを判断しているのがスコッチグレインのこだわりだ。「トラ」や「血スジ」といった天然素材にしかない特徴を大事に生かしているのもこの革靴ブランドの強み。革の繊維1本1本が生み出す艶などは、そのレザーが上質であると言えるひとつの証だ。
全モデルのライニングを上質素材のみで仕上げるスコッチグレインのこだわり
スコッチグレインの製品は、エクスクルーシブラインからスタンダードラインまで、品質に応じてグレードを分けている。当然高級なものほどアッパーレザーの革には質の良いいものを採用しているわけだが、「ライニング」だけはどのグレードも同じ素材を使っているのが特徴。なぜなら、ライニングは足が直接触れる部分だからである。スコッチグレインでは、ライニングと中底のレザーにバングラデシュから輸入したこだわりの牛革を使用。足に触れる部分だからこそ、自然な革本来の風合いに近い仕上がりを徹底して追求している。
ライニングを設けていない革靴メーカーも少なからず存在する中、つま先に至るまで全面にライニングを使用しているのもスコッチグレインならでは。長時間履いた時の蒸れの軽減や、汗の吸収の促進など、快適な歩行のサポートをグレード問わず考慮しているのだ。
32種類の豊富なサイズ展開を行うスコッチグレイン
同価格帯のシューズメーカーでは、足長のみでサイズを合わせるのが一般的だが、スコッチグレインは23.5㎝~27.0cmの0.5cm刻みの足長に加えて、足幅を測る単位「ウィズ」を4種類備えることで32通りのサイズを展開。実店舗に行けば、自分に適した足長と足幅のサイズを専門のスタッフが丁寧に説明してくれる。
日本人の足型にフィットするスコッチグレインの木型
その革靴が自分の足に合うかどうかは、木型によって決まると言っても大げさではない。スコッチグレインの木型は、長年の経験を積み重ねてきた、熟練の靴職人がコンマ数ミリ単位で削り出しを行なって製造されている。
スコッチグレインの木型は、日本人の歩行癖まで考慮されている!?
ヨーロッパのブランドが手がける革靴がいかに人気が高かろうと、日本人の足型に合わせられたものではないのは事実。たとえ上質な革を使ったとしても、日本人の足に合わなければ良い靴とはいえないというのがスコッチグレインの考えだ。履き心地を左右する重要なファクターである木型において、このブランドは日本人の足の形状はもちろん、歩行の癖までも研究しながら細心の注意を払って削り上げているのだ。創業時から作り続けた木型は約1万足分にまで及ぶ。昭和53年のブランド発足以降、積み上げられたこれらの経験こそスコッチグレインの誇りである。
スコッチグレインの全革靴は長年愛用できるグッドイヤーウェルト製法
スコッチグレインでは、全ての靴がグッドイヤーウェルト製法によって製造されている。靴上部の「甲革」に縫いしろの役割を果たす「ウェルト」、足裏に位置する「中底」の3つのパーツを1本の糸ですくい縫いすることで完成する革靴は、メンテナンスを施しながら履くことで長く愛用することが可能だ。”直し続けながら大切に長く使い続けてほしい”という思いが、スコッチグレイン創業当時からグッドイヤーウェルト製法一本にこだわる理由である。
オリジナルパーツでクッション性を向上させるスコッチグレインのグッドイヤーウェルト製法
一般的なグッドイヤーウェルト製法ではクッション材として練りコルクを入れるが、コルクは劣化しやすく弾力性が低下するというデメリットがある。スコッチグレインでは、劣化しにくいEVA製のスポンジを使用することで弾力性を強化。さらに、土踏まず部分のシャンクには金屬ではなくプラスチック製のパーツを用い、強度を高めるとともに軽量化を実現している。アウトソールにはイタリアのタンナーCMC社から仕入れた革を採用。靴のサイズに応じて微妙に異なる厚み2種類を使い分けながら、快適な歩行感を追求しているのだ。
スコッチグレインの最大の魅力!圧倒的なコストパフォーマンスの良さ
上質なレザー素材、長年愛用できるグッドイヤーウェルト製法、日本人の足型に合う計算された木型などといった多くのこだわりが詰め込まれているスコッチグレインの革靴。妥協の無い靴作りを行いながらも”3万円代から購入可能”という圧倒的なコストパフォーマンスの良さを実現している。日本の熟練職人たちが手掛ける上質な革靴をこの価格帯で手に入れることができるのは、スコッチグレインの最大の魅力と言っても過言では無いだろう。
スコッチグレインのシリーズ一覧と型番の見分け方
スコッチグレインは多くの木型を作り上げてきた背景から、多彩なシリーズ展開を可能としている。どのシリーズにも個性があり、幅広いニーズに応えられるのもこのブランドの強みだ。また、スコッチグレインの各モデルの大半は、型番から製品を見分けることが可能。型番は3〜4桁の数字+アルファベットで構成されており、頭3桁はシリーズ名を、4桁目はスタイルを、アルファベットはカラーを表している。たとえば958BLなら「958 = インペリアルプレスティージ」「BL = ブラック」。3526DBLなら「352 = アシュランス」「6 = ストレートチップ」「DBL=ダークブラウン」となる。
シリーズ名 | 特徴 | 番号 |
---|---|---|
インペリアルプレスティージ | 最高級カーフなどの 厳選素材を使用した 最高級シリーズ |
956/ 958/ 959 |
インペリアルⅡ | 初代モデル「インペリアル」 の伝統を受け継ぐ正統派 |
936/ 938 |
インペリアルⅢ | ビジネスでもカジュアル でも対応できる ドレッシーなデザイン |
960 |
インペリアルブラック | ブラックへのこだわりを 追求したドレスモデル |
946 |
インペリアルブラックⅡ | 長い歴史から生まれた 珠玉の木型を採用 |
948 |
オデッサ | 細身の木型を用いた スタイリッシュな ロングノーズシリーズ |
91 |
オデッサⅡ | ロングノーズスタイルを 継承しながらアッパーの 品質も追求 |
920 |
ブローデンⅡ | ヨーロピアンボックスカーフ の高級アッパーを採用 |
24 |
ベルオム | カーフ本来の光沢を 生かしたスリムライン |
756 |
ベルオム・マーブル | 大理石を思わせる 紋様を施した個性派 |
756 |
アシュランス | バランスの良いフォルムと 履き心地で愛され続ける 王道シリーズ |
352/ 353 |
フレキシブル | こだわりの安定感を実現 するロングセラーシリーズ |
351 |
4Eウィズ | 幅広・甲高木型で 仕立てたワイドシリーズ |
401 |
アバンス | チゼルトゥが特徴の 都会派木型を使用 |
171 |
リベロ | シャープなデザインと 柔らかいソールを兼ね備える |
797 |
シャインオアレインⅢ | 撥水加工レザーを 用いた雨天対応シリーズ |
272 |
シャインオアレインⅣ | シャープな木型でⅢよりも スタイリッシュなフォルム |
277 |
シャインオアレイン4Eウィズ | 雨の日の歩きやすさを 追求した4Eサイズモデル |
422 |
ブーツ | デザインと機能を 調和させたブーツシリーズ |
560 |
ブリックカジュアル | クラシックな雰囲気が 特徴のカジュアルモデル |
74 |
キングサイズ | ビッグサイズモデル | 525 |
スタイルの場合、ストレートチップなどの定番デザインを中心に番号が割り振られているようだ。
<スタイル>
0=ブローグデザイン/ダブルモンクストラップ
1=ローファー
4=プレーントゥ
5=ウィングチップ/フルグローブ
6=ストレートチップ
7=シングルモンクストラップ
9=Uチップ
最後に、スコッチグレインの注目モデルにフォーカスして魅力を紹介!
スコッチグレインの十八番「内羽根ストレートチップ」
正統派の内羽根ストレートチップは、スコッチグレインが最も得意とするところ。定番シリーズのアシュランスでは、アッパーレザーに国産高級カーフを採用。しっとりとした贅沢な光沢を宿しているストレートチップの主役とも言えるダブルステッチは流石の職人技。狭い間隔を乱れることなく平行に施されている。ビジネスからフォーマルまで幅広く使える内羽根ストレートチップだけに、見た目の美しさのみならず機能性まで追求した逸品だ。
ビスポークシューズのような美フォルムを実現したスコッチグレインのストレートチップ
ラストは、セミスクエアトゥでやや都会的なシルエットを採用。立体感のあるチゼル気味のつま先も美しく、まるでビスポークシューズのような佇まいだ。
ヒールにはくびれを描くようなステッチが走っており、スコッチグレインならではのデザインに仕上がっている。
レザーソールの弱点を克服したスコッチグレインの「ノンスリップレザーソール」
アウトソールは「ノンスリップレザーソール」という仕様。良質なヨーロッパ原皮を使い、イタリアにて鞣された革底だ。日本で底部分にゴムを注入する形で流し込むことで、レザーソールの弱点である滑りやすさを克服。グリップ力に優れ、安定した歩行を可能としている。
計算された端正なルックスが魅力!スコッチグレインの「ダブルモンクストラップ」
ダブルモンクストラップモデルでは、海外の一流ブランド顔負けの端正なルックスが魅力。2本のベルトの開きは絶妙な角度に計算されており、高級感と貫禄を漂わせる。アッパーには生後6ヶ月以上のキップレザーを使用。革靴の定番であるカーフレザーではなくあえてキップをチョイスすることで、独特のシボ感と優れた強度を実現している。
補強いらずの本格レザーソールを備えたスコッチグレインのダブルモンクストラップ
オールアラウンドグッドイヤーウェルト製法によって張り出したコバは、程よい重厚感を演出。アウトソールはイタリアCMC社の上質素材を使用した本格的なレザーソールを採用している。カカトとつま先部分にはラバーが施されており、購入後に自身で補強する必要がないのが嬉しいポイントだ。
足元にさりげないアクセントをプラスしてくれるスコッチグレインの「パンチドキャップトゥ」
バランスの良いフォルムで人気の高いアシュランスシリーズのパンチドキャップトゥ。キャップ部分に入ったパーフォレーションが、シンプルなディティールの絶妙なアクセントとなっている。トゥは若干低く抑え目に作られているのが特徴。ヒールカップもシャープで、全体的にすっきりとした印象に仕上げられている。海外製のロングノーズシューズに窮屈さを感じる人にとって、ベストシルエットな1足だと言えるだろう。
カラーによってテイストに差をつけるのもスコッチグレインの革靴
ブラックモデルでは国産カーフの光沢が品質の高さを最大限に表現。ビジネスからインフォーマルまで応用範囲の広い逸品となっている。一方、ブラウンモデルではマーブル模様を施し、マットに仕上げることで独特の色ムラを表現。2つとない表情豊かなアッパーで、ややカジュアルなデイリーユースでも存在感を発揮できる。
“フルサドル”がドレス感を際立たせるスコッチグレインの「コインローファー」
スコッチグレインのロングセラーシリーズ「フレキシブル」のコインローファー。ベーシックでバランスの良いフォルムで、長きにわたって支持されている1足だ。ひとくちにコインローファーといっても、甲部分のサドルの形状によっていくつかの種類に分類される。スコッチグレインのコインローファーは”フルサドル”と呼ばれる仕様で、サドルの両端がソール部分まで覆っているのが特徴。アメカジっぽいビーフロールや定番のハーフサドルと比べてカジュアル感は控えめ。ローファーながら上品でドレッシーな雰囲気を漂わせる。
スコッチグレインはローファーにもグッドイヤーウェルト製法を採用
モカシン縫いの丁寧さも流石のクオリティ。マッケイ製法のローファーが多い中、コインローファーでもグッドイヤーウェルト製法を貫いているのもスコッチグレインのこだわりだ。気軽に履けるローファーだからこそ、長く愛用できる品質を追求している。付属品のタッセルをつけることで違った表情を楽しむことも可能。
個性的なデザインもお任せ!スコッチグレインの「シングルモンクスリッポン」
珍しいシングルモンクストラップ仕様のスリッポン。脱ぎ履きが楽で実用面に優れながら、すっきりと伸びたUラインがスマートな印象を演出する。国産カーフを使用したアッパーと大ぶりなバックルつきのストラップが、足元の小粋なアクセントとして機能。イタリアで鞣された本革にスリップ防止のラバーを施したノンスリップレザーソールで機能性も申し分なし。
革のしなやかな風合いを残しながら撥水性に優れたスコッチグレインの名作「シャインオアレイン」
水は革靴の天敵であり、長年解決できない問題でもあった。不意な雨に襲われて水分が染み込んでしまったレザーは、変色してしまったり、水ぶくれになってしまうことがある。もちろん適切なケアをすればカビなどの最悪の状況は防げるものの、手間がかかるのも事実。こうした悩みを解決するためにスコッチグレインが開発したのが、「シャインオアレイン」のシリーズだ。
本格レザーで優れた撥水性を実現したスコッチグレインの「シャインオアレイン」
シャインオアレインの最大の特徴は、優れた撥水性を実現しながらも本格レザーの質感を備えている点。他の撥水性の高いレザーとしてはポリッシュドレザーが有名だが、チープなものだと鏡面の加工がいかにも取ってつけたかのような光沢で好みが分かれるのも事実だ。また、ゴアテックスなどの最先端素材を使用した革靴などもあるが、やはり本革に比べると表情に違和感が残るものである。その点シャインオアレインは、アッパーレザーを鞣す段階で”フッ素”を入れることで水に強い革を作り上げているのが特徴。見た目はあくまで上質なカーフレザーだが、水を弾いて侵入を防ぐ高い機能性を実現している。
雨の日も安心!スコッチグレインの「SGソール」
ソールは合成底の「SGソール」を使用。雨に強いことはもちろん、耐磨耗性とグリップ性にも優れている。すり減りやすいつま先やヒール部分ではゴム硬度を硬めに、接地面にはしなやかに返るようにゴム硬度を柔らかめにするなど、それぞれの箇所で巧みに硬度を変えているのも特徴だ。もちろんスコッチグレイン伝統のグッドイヤーウェルト製法で縫合。そのため、濡れた路面でも安心して歩けるだけでなく、日常使いでも快適に歩行できる。
スコッチグレインの革靴にはオリジナルのシューキーパーが付属
シューキーパーは別売りという革靴ブランドが多いなか、スコッチグレインはほとんどの革靴に純正のシューツリーが付属している。上質な革靴を長きにわたり大切に履いていくのに必要な道具が最初から備えられているというのは、嬉しいポイントのひとつだ。
スコッチグレインはアフターサービスも充実
スコッチグレインは匠ジャパンという修理専門の工場を構えている。オールソール(1万円~)から補修(1000円~)のメニューまで豊富に揃えており、そのほとんどに中敷と靴ヒモの無料交換とワックス仕上げが含まれているという手厚いサービス内容だ。修理依頼で工場に送った革靴は、直接の電話によるヒアリングを行なった後、丁寧に仕上げられる。修理費の支払い方法は今のところ代引きのみだが、代引き手数料に加えて配送料も片道負担してくれるので申し分なしだ。