日本でも高い人気を誇るスイスの高級時計ブランド「オメガ(OMEGA)」。言わずと知れた名門だが、オメガの時計が一流たる理由は、3つの伝説と4つの魅力にあった。
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「オメガ」とは?
1848年、時計職人だったルイ・ブランが、スイスのラ・ショー・ド・フォンの小さな工房からスタートした高級時計ブランド「OMEGA(オメガ)」。時計の精度の高さを上げることに情熱を抱いていた彼によって生み出される、正確かつ高品質な時計がスイス国内で瞬く間に評判を呼び、ヨーロッパ全土へと知名度を広めていった。1879年のルイ・ブランの死後は、彼のふたりの息子であるルイ・ポールとセザールが会社を継ぐことに。父の情熱を継承した時計づくりで会社は順調に成長を遂げ、1880年には活気に満ちたスイス北西の街・ビエンヌに大きなオフィスを構えることとなった。
その5年後、兄弟は最初の量産型のムーブメントとなる「ラブラドール」を製造。1894年には新たなムーブメント「19ライン キャリバー」を発表し、これが時計製造における新たな基準となった。このムーブメントは精度が極めて高いだけでなく、どの部品も容易に取り替えることが可能。心棒とリュウズで巻上げと時間設定ができる点も革新的で、今日に至るまで広く使い続けられている。
オメガはこれまでに時計業界だけでなく、歴史上の重要な場面や映画など、さまざまなシーンでカリスマ的活躍を見せているのをご存知だろうか。ここからは、時計業界に留まらない、オメガの歴史に残る伝説的なエピソードを紹介しよう。
オメガの伝説①『007』ジェームズ・ボンドの相棒として、“ボンドウォッチ”の名をほしいままにするオメガ
オメガの時計は不朽の名作『007』シリーズの主人公であり、ファッションアイコンとしても注目を集めるジェームズ・ボンドが着用していることはあまりにも有名だ。始まりは5代目ボンドを務めたピアース・ブロスナン出演作。彼がボンドを演じた1作目『ゴールデンアイ』から始まり、引退作の『ダイ・アナザー・デイ』までの4作全てで着用された。オスカー受賞者でもある当時の衣装デザイナー リンディ・ヘミングスは、ゴールデンアイでボンドが着用する時計を選考し、オメガのシーマスターを選択。その際に彼女はこう語っていたのだそう。「海軍所属のダイバーであり、世界に名だたる控えめな紳士である海軍中佐のボンドが、ブルーダイアルのシーマスターを着用すると確信していました。」
ピアース・ブロスナンからボンド役のバトンを引き継いだダニエル・クレイグは、デビュー作の『カジノ・ロワイヤル』から最新作の『ノー・タイム・トゥ・ダイ』まで、やはり全ての作品でオメガの時計を着用した。劇中に登場した時計は通称“ボンドウォッチ”と呼ばれ、時計好きはもちろん、映画ファンからも人気を集めている。オメガの公式サイトでは、ジェームズ・ボンドが着用したモデルを紹介するページが公開されているため、どの作品でどのモデルが登場したのか気になる方はぜひチェックしてみてほしい。
オメガの伝説②NASAも認める正確性によって生まれた月面着陸の逸話
人類初の月面着陸の際、アポロ11号に搭乗していた乗員がオメガの時計を着用していたことも有名なエピソードだ。1964年にNASAが有人宇宙計画にふさわしい時計を探すため、世界中の時計メーカーにクロノグラフを発注。その過酷な試験を唯一突破したのが、オメガのスピードマスターの第4世代「スピードマスター プロフェッショナル」だった。宇宙空間でも使用できる高性能な時計として認められ、NASAの公式装備品となったスピードマスターは、1969年7月20日にアポロ11号が月面着陸した際の乗員たちが装着。それ以降、人類は6度月面に降り立っているが、その全てのミッションで携行することを許されたのは「スピードマスター プロフェッショナル」のみだ。
そんなエピソードに由来し、アポロ11号の月面着陸後、スピードマスターは「ムーンウォッチ」という愛称で親しまれている。機械式時計の主流が自動巻き式となった現在でも、この「スピードマスター プロフェッショナル」だけは手巻き式にこだわったラインナップを維持しており、過去のモデルも高値で取引されるほどの高い人気を誇っている。
オメガとスヌーピーの意外な関係性とは?
スヌーピーがNASAのマスコットであり、宇宙飛行士たちの間で幸運のお守りとされていることをご存知だろうか?その発端は、1969年5月に行われたアポロ10号のミッション。月面着陸のリハーサルのための事前検証が任務であったアポロ10号は、アポロ11号の着陸地点を定めるために、月面を周回しながら「嗅ぎ回る」 必要があった。そこから、この月面着陸船をSnoopyと命名。それ以来、スヌーピーは宇宙ミッションの安全を見守る「番犬」として、宇宙飛行士たちの間でお守りとして大事に扱われている。NASAはそんなエピソードから、宇宙でのミッションにおいて安全と成功に貢献した人物や企業を称える名誉ある賞として、「シルバースヌーピーアワード」を設置。1970年にアポロ13号の酸素タンク爆発事故が起こった際に、艦内コンピューターが制御不能になった中、「14秒」を目視で正確に計測して、手動で軌道修正の逆噴射をしなければならない状況に陥ったところ、その計測に使われたのが高精度なオメガのスピードマスターであった。結果、軌道修正は成功し飛行士を救ったオメガが「シルバースヌーピーアワード」を受賞。
オメガの伝説③コンマ1秒の差が勝敗を分けるオリンピックのタイムキーパーを計31回も担当
1932年に開催されたロサンゼルスオリンピックで、全競技でタイムキーパーを務める初の時計メーカーとなったオメガ。それ以降も時計性能を常にアップデートし、コンマ1秒の差が勝敗を分けることもあるオリンピックの競技において、パリ2024大会を入れて計31大会も公式タイムキーパーを務めている。2024年のパリオリンピックでは、フォトフィニッシュカメラの次世代モデルやコンピュータービジョンテクノロジーを導入するなど、その時代に合わせて最先端の技術を反映。2017年には、パートナーシップ100年目となる2032年までの継続を発表しており、これほどの長期契約を行うのはオメガが初である。
過去に記念モデルも発売されており、2024年のパリオリンピック開催に際しては6つのモデルが発表されている。
オメガの時計が持つ4つの魅力とは?
なぜ、オメガの時計があらゆるシーンから支持され続け、今日に至るまで愛され続けてるのか。4つの項目に分けて、その魅力を見ていく。
オメガの時計の魅力①オーバーホールの周期を大幅に延ばした、革新的な脱進機による耐久性と精度
オメガの腕時計は、ムーブメント内の摩擦を軽減し、部品の寿命を大幅に延ばせる「コーアクシャル脱進機」を業界で唯一採用している。現在、時計界で主流となっているのは「スイスレバー脱進機」というものだが、これは油切れを起こしやすく、効率が悪いという弱点が。しかし、コーアクシャル脱進機は、高速で絶え間なく動き続けるパーツ「ガンギ車」とアンクルの接触面を小さくすることで摩擦を抑え、油切れを起こしづらくすることに成功した。また、一般的な機械式時計では、注油等のため3〜5年に1回のオーバーホールが必要だが、コーアクシャル脱進機は摩擦が少なく、油切れがしにくいため、オーバーホールが5年から8年に1回で済むのも嬉しいポイント。ちなみに、この脱進機は1999年に発表されたが、機構自体は1974年に完成していた。しかし、非常に精密な構造だったため、時計に組みこむための量産化、小型化に25年もの時間がかかったそうだ。
オメガの時計の魅力②磁気に対する防御力が圧倒的に高い、オメガならではの耐磁性能
オメガの時計には「マスターコーアクシャル」という、前述したコーアクシャルよりさらに上位のムーブメントが存在する。通常のコーアクシャルとの違いは、時計の精度を落とす原因となる磁気から時計を守る「耐磁性能」だ。耐磁性の高さをうたっている時計の耐磁性能が1000ガウスなのに対し、マスターコーアクシャルはなんと15倍の15000ガウスを誇る。磁力の強さを数字だけで見ても分かりにくいかもしれないが、日常生活の中で生み出されている磁気で例を出すと、スマートフォンが380ガウス、ラップトップが1200ガウス、スマートフォンのケースやバッグの留め具に使われるマグネットが1400ガウス。そして、強力な磁気を利用した医療検査のMRIは一般的なもので15,000ガウス。これらの磁気を鑑みると、マスターコーアクシャルを採用したモデルは、着用したままMRIを受けても耐えられる耐磁性を持っていることが分かる(検査の規定上、基本的に金属類を身につけての検査は禁止されているのでご注意を)。
オメガの時計の魅力③圧倒的な精度の高さを証明する「マスタークロノメーター」の称号
オメガのほぼすべての機械式時計は「マスタークロノメーター」という認定を受けている。これは、スイス連邦計量・認定局(METAS)と共同開発したテストで、10日以上にわたって計8つのテストが行われ、様々な環境における時計の精度とパフォーマンスをクリアしたモデルにのみ、この称号が与えられる。時計の精度を計るテストとして一般的に用いられるCOSC認定があるが、その基準を大きく上回っており、認定を受けたモデルは超耐磁性と高精度を兼備したムーブメントであることが証明されるのだ。オメガでは、このマスタークロノメーターを搭載したモデルを多く展開。製品ごとに発行された証明書番号をオンライン上で入力すれば、この8つのテストでどのような成績を収めたのかを知ることも可能だ。
オメガの時計の魅力④デザインと性能を向上させるためにこだわり抜いた素材使い
オメガは様々な素材を採用することで、デザイン性だけでなく性能や堅牢性も向上させている。例えば、時計の素材として加工が難しいとされている「セラミックス」を独自技術で加工し、ケースやベゼルなどに採用。また、セラミックス製部品に18Kゴールドの装飾を施し、リキッドメタルと呼ばれる非晶質のアルファモス合金を組み合わせ、素材のデザイン性や耐久性をさらに高めることにも成功した。オメガが独自開発した絶妙な赤みが美しい「セドナゴールド」は、ゴールド・銅・パラジウムという3つのマテリアルを巧みに配合することで、色褪せしにくいゴールド素材として高く評価されている。また、磁気の影響を軽減するために、精度に影響するムーブメントの主要パーツには「非磁性素材」を使用するなど、こだわり抜いた素材使いもオメガならではの特徴だ。