当メディア名の由来である”男前”。我々は、OTOKOMAE 発足以来、さまざまな角度から男前になるための情報を発信してきた。本企画では、イケてる男性にインタビューし、とりわけ外見的に男前を上げるのに必要なエッセンス、すなわち”男前の素”を抽出し紹介していく。
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ファッションアドバイザー:奥州谷 知宏
第1回目は、ファッションアドバイザーとして活動する傍ら、自身が手掛けるウェアブランドCATAMARAN(カタマラン)を始動させたばかりだという奥州谷 知宏(おうしゅうや ともひろ)氏に話を伺った。その容姿はもちろんのこと、佇まい、所作、会話から男の色気があふれ出していた。少なくともその場に居合わせた我々の目には確実に男前に映った彼が考える“男前の素”を探っていく。
奥州谷 知宏(おうしゅうや ともひろ):ユナイテッドアローズなどセレクトショップに長年勤務し、販売、アシスタントバイヤー、VMD、ホールセールなどのキャリアを積む。現在は自身のアパレルブランド〈CATAMARAN〉の運営や、青山骨董通りにあるコンセプトショップ〈Vandori〉のセールスアドバイザーなども務める。2023年6月時点でInstagramのフォロワーは1万2000人を超える。
男前の素①「都会に溶け込む、8割のドレスアップ」
待ち合わせ場所のカフェにスーツを巧みに着崩した格好で現れた奥州谷さん。早速我々は、今日の装いのポイントから尋ねてみた。
スーツにポロシャツ、そしてミリタリージャケットをラフに羽織ってドレスカジュアルなコーディネートを組みました。ポイントは8割ドレスアップ。スーツの胸元にチーフ、足元には革靴を合わせてドレッシーにまとめながら、インナーにはカジュアルなポロシャツをチョイスするなど、キメすぎないスタイルを意識しています。
ーー(編集部)8割ドレスアップ、非常にわかりやすいと思います。日常着としてスーツを自然に着こなすための秘訣ですね。他にもスタイリングを組む際に意識しているポイントはありますか?
着こなしを考えるときは、いつも街並みに馴染ませるということを考えています。例えば、東京はビルやコンクリートが多く灰色のイメージがあるので、それに合わせてグレースーツとブラックシューズなど、モノトーンアイテムをベースにまとめる。そしてカジュアルな原宿の街並みに合わせて、ミリタリージャケットを羽織ってカジュアルダウンしています。
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デッドストックで購入したというU.S.ARMYのファティーグジャケット
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自身がアドバイザーを務めるニットブランド“Vandori”の鹿の子ニットポロ
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イギリス好きが集う名店BRITISH EQUIPMENT PUBLISHINGのベルト
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出張で訪れたミラノで購入したというAldenのプレーントゥ「990」
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ーー(編集部)日焼けした肌に映える都会的なミディアムグレーのスーツも素敵ですね。
スーツは静岡のセレクトショップ Giotto(ジオット)で仕立てたもので、まだ下ろしたての一着です。趣味でサーフィンをやっているので、肌は自然に焼けますね。ギャル男スタイルに傾倒していた過去もありましたが、今は狙って焼いてるわけではないんです。
昔から痩せていることがコンプレックスだったので、基本的にスーツは身体のラインを拾わないハリのあるイギリス製の生地で仕立てています。
大人の品良き“抜け感”は、モノの状態を見極めることで生まれる
大人の品を損なわないために身に着けるものは、なるべくキレイなものを選ぶようにしているのもポイントです。服装の末端である襟元や袖口、足元は意外と人の目につくので、特に気をつかうようにしています。
ーー(編集部)たしかに品を損なわないという視点で、清潔感は重要ですね。着用されているファティーグジャケットは古着らしさがありながらも、破れや退色といったダメージが目立つわけではなく、品の良さを感じます。
モノの“状態を見る”ことも大事にしています。白いものは白くあるべきで、黒いものは黒くあるべき。また、ジーンズやワークブーツのようにダメージや経年変化がカッコ良さにつながるものがある一方で、スーツやドレスシューズといった汚れていてはいけないものが何なのかを見極めることも大事だと考えています。
男前の素②「自然体のかっこよさを追求してたどり着いた“計算された無造作ヘア”」
身だしなみにおいて、服装と同等に重要なのがヘアスタイルだ。ファッションの次は奥州谷さんの髪型について尋ねてみた。
期待されているような答えを出せなくて申し訳ないのですが、髪型はほぼ適当です(笑) というのは半分冗談で、自然なヘアスタイルに見えるようにキチンと美容師さんに計算して切ってもらってます。いわゆる無造作ヘアだと思うのですが、強いてこだわりポイントを挙げるならサイドを刈り上げないことでしょうか。刈り上げの“やんちゃ感”が出ないよう、ここも計算した短さに切ってもらっています。
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セット時間はわずか1〜2分だという、ラフなヘアスタイル
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サイドは刈り上げず、自然に流すのがポイント
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ーー(編集部)どちらの美容室に通われていますか?
表参道のACQUAという美容室です。もう10年近く同じ美容師さんに切ってもらっていますね。何度か微調整はしていますが、思えば10年前からこのヘアスタイル一筋です。この髪型は伸びてもそこまで違和感がないので、2ヶ月に1度くらいのペースで通っています。
ーー(編集部)なぜその髪型にたどり着いたのでしょうか?
自然体のカッコ良さを追求してたどり着いた髪型なんだと思います。あと実は最初にこのヘアスタイルにカットしてもらったとき、本に載っていた彫刻の写真を美容師さんに見せたんですよ(笑)
ーー(編集部)まさかの彫刻ですか!?意外ですが骨格に合う自然でかっこいい髪型のヒントがありそうですね。美容師さんに見せたのは有名な彫刻ですか?
いえ、全く知られていない彫刻だったと思います。ここでお見せできれば良かったのですが、残念ながら私も忘れてしまいました。それぐらい知られていない、どこにでもあるような彫刻だったんです。
スタイリング剤はクックグリース一筋
髪のセットに関しては、グリースで髪を立ち上げてツヤを出したら、あとは自然に馴染ませます。本当にそれだけなのですが、後ろの見え方まではあえて気にしないとか、どこかに無意識の部分があることが僕の場合は落ち着きますね。だからベースの髪型は約10年変わってないんですが、実は毎日のセットによって微妙に違うんです。ちなみに昨日は分け目が逆でした(笑)
スタイリング剤はベタつくのが嫌なので、わずかな量でもセット力とほど良いウェット感を出せる「クックグリース」のエクストラハードをずっと愛用しています。あらゆるところで販売されているので気軽に購入できますし、夕方になっても髪型が崩れにくいキープ力の高さが良い。パイナップルの香りも好みです。
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男前の素③「旅で得た“経験”を身だしなみや立ち振る舞いに落とし込む」
私が男前だと思う方は、身だしなみの外面だけでなく内面まで魅力的です。そして外面と内面は密接に関係していると考えています。
ーー(編集部)内面の魅力を磨くことで、大人のこなれ感や余裕が生まれ、身だしなみにも魅力が滲み出てくるということでしょうか。
そうですね。そして私の場合は、海外旅行の経験が内面の成長につながっていると感じています。
ーー(編集部)奥州谷さんはイタリアのピッティウオモやパリコレクションなど、頻繁に海外出張されてそうなイメージがあります。
それもありますが、自身の成長につながっていると感じるのはプライベートでの旅ですかね。昔から好奇心旺盛なので、ひとり旅はよくしていました。例えば、コロナ以前には世界最大規模のアートフェア「アートバーゼル」を観に、香港へ1人で行きました。
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イギリスの現代アートの巨匠、デイヴィッド・ホックニーの作品『The Scrabble Players』
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旅行先は私が好きな映画や著書から選ぶことが多いです。香港は2人の男前(トニー・レオンと金城武)が出演している、1995年に公開された映画『恋する惑星』を観て実際に訪れてみたいと思いました。
また、ロンドンを訪れた際は、映画『ノッティングヒルの恋人』でジュリア・ロバーツ演じるアナが定宿していたホテルにある「ザ・リッツ・レストラン」に行きました。予約の前日に偶然前を通る機会があったので下見として覗いてみたら「スニーカーで入ってはダメ」と、門前払いされたのを思い出しますね。日本と比べて海外では、昼夜問わずレストランでのドレスコードが厳しいことを実感しました。当日はしっかり準備していたジャケットスタイルに革靴を履いて食事を楽しみましたね。
ひとり旅では、いかなる状況においても頼れるのは自分自身。図らずとも内面が磨かれると思います。どこに行き何をするのか。予算や移動手段、時間繰りなど、旅には様々な制約があります。楽しい反面、TPOのミスが許されない。その一時に工夫を凝らすことで、大人にふさわしい余裕、いわゆる“こなれ感”が身につくのではないかと考えています。
ーー(編集部)今日お召しのスーツ生地やロンドンでのエピソードなどを聞くと、奥州谷さんのスタイルはイギリスの文化に影響を受けているのでしょうか?
それもありますが、一番影響を受けている国はイタリアだと思います。それこそユナイテッドアローズに勤めていた20代の頃は、クラシコイタリアが注目を集めていて、カッコ良くドレスウェアを着こなす先輩たちやピッティ・ウオモに参戦する洒落者たちに強く憧れていました。当時ピッティウオモのリアルな空気感をどうしても味わいたくて、自腹を切って同行させてもらったこともあります。
初めて自分の眼で見たイタリアの男前たちは衝撃でした。立ち振る舞いはもちろん、スーツやジャケット姿のこなれ感が圧倒的に違う。ノーネクタイで着崩していてもダラしなく見えないんです。その経験は間違いなく現在の8割ドレスアップの着こなしに反映されていると思います。
男前の素④「“読書”を通して内面を磨き、大人の魅力を深める」
最後の男前の素として奥州谷さんは「読書」を挙げた。ジャンルを問わず、気になったものは実用書から小説、アート、写真家の作品集まで何でも読むという。
読書は情報収集のために欠かせません。最低でも月に5冊は読みますね。私が人と話すことが好きなのと、話の引き出しがある人の方が魅力的だと考えているので、話のネタ作りとしても読書を習慣化するのは有効だと思います。
ーー(編集部)奥州谷さんが好きな著者や本のタイトルを教えていただけますか?
最近ハマっているのは、元東京都知事の故石原慎太郎や、洒落者として知られる音楽家の故加藤和彦など、カッコ良く生きた男達の自伝です。そういった著書を読むことで、この人はあのシーンで何を感じたのか、試練をどうやって乗り越えたのかを知れるので、とても良い刺激やインスピレーションをもらえます。
ーー(編集部)スマホやタブレットではなく、紙で読むのには理由がありますか?
一時期はデジタルに乗り換えようとスマホやタブレットを試したのですが、何となくしっくりこなかったため、結局紙に落ち着きました。中古の文庫本だったら100円で購入できたりするので、気になるタイトルを複数まとめ買いするなど、紙ならではの楽しみ方があると感じています。
電車で移動する隙間時間を読書に充てることが多いです。これは後付けですが、車内でスマホを見ているよりも、本を手に持っている姿の方が知的に見えますよね。あと何を読んでいるのかを周りに見せびらかしたくはないので、表紙を裏返して読んでいます。