レザーグローブの名門として有名なデンツ(DENTS)。最高級の素材を用い、伝統の技術によって実現されるフィット感抜群のデンツの手袋は、冬を乗り切るためのマストアイテムと言えるだろう。今回は「つけたままでも新聞がめくれる」とまで賞賛されるレザーグローブを手がける、デンツの魅力について紹介!
スポンサーリンク
デンツ(DENTS)とは
1777年創業のイギリスの老舗高級手袋メーカー「デンツ」。レザーグローブの製造を得意とし、中でも猪豚に似た哺乳類であるペッカリーを素材にした主力製品は長年に渡り人気を誇る。他にも北アメリカ産のディア(鹿)や、エジプトのヘアシープ(羊)など、上質な素材を使ったフィット感抜群のコレクションを多数展開。英国のみならずグローバル展開も積極的に行っており、レザーグローブの傑作として世界的に認知されている。
創業時から「シークレットフィット」と称されるデンツのフィット感
1777年、イギリスのウースターという都市で誕生したデンツ。創業者のジョン・デント(John Dent)氏が一組の手袋をカッティングしたのが始まりだった。革の鑑別と裁断技術において天才的な才能を持ったデンツ氏が作り出す手袋は「優れたつけ心地を持ち、使用したものは手にしていることを忘れてしまうほどである」として話題を呼ぶ。そのような極上のフィット感は「シークレットフィット」と称され、創業当時から名声を博した名門レザーグローブブランドである。
tweedlandthegentlemansclub
創業者ジョン・デント氏(左)とその息子、ジョン・デント・ジュニア氏(右)
早い段階で海外進出を果たしたデンツ
ジョン・デント氏が退いたあとも、その息子であるジョン・デント・ジュニア氏とウィリアム・デント氏によって順調に成長を続けたデンツ。1833年までには、ウースターとロンドンの工場に133人の職人を抱えるまでの規模へと拡大することに成功していた。そして、積極的に海外への輸出も開始。19世紀から20世紀にかけて高級手袋及びアクセサリーの大手輸出会社として、ニューヨーク、パリ、グルノーブル、ブリュッセル、ライプチヒ、プラハ、シドニー、ナポリなどの高級店へ販売。あらゆる社交の場で手袋を着用することが一種のステータス的な意味を持っていたファッション意識の高い婦人や紳士達をターゲットに、早い段階からグローバルに展開していたのだ。
エリザベス女王が戴冠式で使用、「ロイヤルワラント(英国王室御用達)」の称号を持つ
1897年にはビクトリア女王のダイヤモンドジュビリーを記念して特製のグローブを作成。また、1953年にはエリザベス2世が戴冠式用の手袋としてデンツのグローブが選ばれた。皇室にも愛用されたデンツの手袋は、他の由緒ある英国メーカー同様、最高品質の証であるロイヤルワラントの称号を授かる。
ロイヤルファミリーの愛用は英国のみにとどまらず、ナポレオン・ボナパルトの最初の妻であり、フランス后妃のジョゼフィーヌ・ド・ボアルネもデンツの手袋を使用していた。ウィルトシャー州ウォーミンスターにある現在のデンツ本社工場にはミュージアムが建設されており、そこではこれらの伝説的なコレクションが展示されている。
デンツの技術力を受け継ぐ手袋カッターの育成
創業から230年以上が経つ今なお、デンツの手袋が「シークレットフィット」と呼ばれ続けるような品質を維持している理由は、カッター(裁断士)の育成にある。設立当初においては、デンツの熟練した手袋カッターになるためには、通常7年ものあいだマスターカッター(親方裁断士)の下での年奉公が必要とされていた。ジョン・デント氏の2人の息子も15歳の時より7年間、徒弟として修行を積んだとされている。現在では年奉行の期間自体は少し短くなったとのことだが、資格あるカッターになるには、今でも長年の経験と長期の訓練期間が設けられている。鋭い目と器用な手が養われた職人たちによって、デンツの手袋は作られているのだ。
デンツの手袋に使用されている皮革の素材
デンツの手袋の素材となる皮革は、デンツ社の熟練の革バイヤーや選別士によって厳正に選ばれている。傷はもちろん、微妙な変化や濃淡によって全く使い物にならなくなってしまう天然の革。選別士たちは、経験に裏打ちされた眼識によって、あらゆる種類の革から、そのキメや感触、厚み、強さを識別。機械では決して行えないこの技術によって、デンツの手袋に上質な質感がもたらされるのだ。
ペッカリー
柔らかい手触りを持つデンツを代表する高級皮革。ペッカリーとは、南米の熱帯雨林に生息する猪豚のような哺乳類。銀面に3つの連なった剛毛の痕の毛穴を持ち、厚みがありながらも柔軟な繊維組織を持っていることが特徴だ。一般的な革であれば水は大敵だが、ペッカリーは水汚れに強く、硬くなりにくい性質を持ち合わせている。シボの揃ったグローブを作るため、ペッカリー1頭分の革から一組作れれば良しというのがデンツのこだわり。使い始めの美しい光沢も魅力的だが、時間が経つにつれて、色の深み、生地のなめらかさが変わり、自分だけのエイジングを楽しめるのも大きな長所。
ディアスキン
最高級の北米産の雌鹿が使われたディアスキンは、滑らかな光沢の銀面層を持つ。軽くて丈夫なだけでなく、キメが細かいのでしっとりとした肌触りが特徴。また、繊維が細かいため、高い保湿力と優れた通気性を備えている。ペッカリー同様水に強く、匂いも付きにくい性質なため、湿気の多い日本では特に重宝する素材。皮革材料の中でも群を抜いた耐久力を誇るため、冬の時期は毎日のように使用するグローブの素材としては最も適したレザーだと言える。
ヘアシープ
脂肪の穴が多く、革をなめした際に断熱と保温性を高くする効果を持つため、防寒用の衣料にも多く使用されるシープスキン。デンツのヘアシープは、エジプト周辺の砂漠地帯に生息する羊革を使用。英国の名門ピタード社が制作する世界有数の高品質レザーを採用している。非常に薄く柔らかくなめされているため、肌に吸い付くように滑らかでシルキーな肌触りを実現している。快適な使い心地だけでなく、見た目からも品の高さが窺えるため、ドレッシーな着こなしにも合わせることが可能。
シルク(裏地)
ライニングに使用されているシルクは、皮膚に最も近い素材として手に吸い付くような一体感がもたらされる。抗菌や吸臭、紫外線カットなどの効果を持ち、冬に暖かく夏に涼しい性質のため、真冬以外のシーズンにも使用できる。
カシミヤ(裏地)
カシミール地方に生息するとても細く長い繊維を持った山羊から採取するカシミヤ。デンツは、カシミヤ製品で高名なジョンストンズ社で特注した カシミヤ・ライニングを使用。1頭からわずか200gほどしか採取できない稀少素材で編上げられた裏地は、贅沢で包み込むような温もりを手に与える。
デンツグローブのディティールへのこだわり
最高の素材も、技術がずさんでは台無しである。デンツの手袋の最大の魅力である「シークレットフィット」はマスターカッター(親方裁断士)の技術と経験によって生み出される。現在使われている型紙は1939年に作られたものが受け継がれており、天然側の自然な伸びによって調整が加えられる。指先の十字縫いや、手袋の甲を装飾する3列の「ポインツ」など細かい部分も含め、殆ど手作業で行う32もの違った工程を経てようやく1組の手袋が完成する。最高峰の技術で作られたその感触は、「手袋をしたまま新聞をめくることができる」と言われているほどだ。
「007」のジェームス・ボンドもデンツの手袋を愛用
007シリーズの「スカイフォール(2012)」や「スペクター(2015)」において、ダニエル・クレイグ扮するジェームス・ボンドが黒いグローブを嵌めているシーンが度々確認できる。この2作品で使用されているのが、デンツの手袋だ。「スカイフォール」、「スペクター」とそれぞれの作品名にちなんだモデル名で発表されたが、発売当時はたった3日で売り切れるほどの人気を博した。ちなみにダニエル・クレイグが着用していたのは2作品ともヘアシープのグローブ。やはりボンドのようなスーツスタイルには、ドレス感のあるシープスキンが最も合うのだ。
デンツの手袋は着用したままスマホの操作が可能?
昨今の手袋選びにおいて、着用したままスマートフォンが操作できるかどうかが重要なウェイトを占めている人は少なくないはず。デンツのグローブは、一部ヘアシープやスエードなどのモデルでタッチスクリーン操作に対応したものが展開されている。伝統の技術をただ守るだけでなく、最新のニーズにも応えるあたりさすがといったところだ。
また、一般的なスマホ対応の手袋と言えば、指先に特殊なチップが埋め込まれていたりステッチが施されているものがほとんど。ところが、デンツのスマホ対応グローブにはそういった細工が一切なく、オールレザーにもかかわらず指先のデザインは通常どおり。どのような技術でこれを実現したのかは不明だが、これにより見た目的にもフィット感としても違和感なく使用することができるのだ。
デンツを着用したスタイルを紹介!
王道の黒のヘアシープモデルはスタイル問わず合わせることが可能。重くなりがちな冬のコーディネートだが、暖色系のマフラーとコートから覗かせるシャツで上手くバランスを取っている。
アクセントに最適なイエローのグローブ。ややシボ感のあるペッカリーレザーは、フランネルやツイードのような厚手のコートと抜群の相性を持つ。
手の甲側に手編み加工が施されており、見た目にも暖かなレザーグローブ。ドレスダウンしたい場合の選択肢として重宝するカジュアルライクなグローブ。
デンツの定番モデルを紹介
デンツ「ヘアシープレザーグローブ」
高い人気を誇るヘアシープスキンで作られたレザーグローブ。キメの細かやかな表面は、ドレス感たっぷりの見た目だけでなく手触りにおいてもシルキータッチな仕上がりとなっている。デンツ特有の吸い付くように滑らかな着け心地によって、ライニングに使われているピュアシルクの良さを最大限引き出している。
デンツ「ペッカリーレザーグローブ」
王道のペッカリー素材を使用したデンツを象徴するグローブ。手の甲を装飾しているポインツ(3本ライン)や、水かきの部分など、そこかしこにハンドメイドならではの雰囲気を楽しめる。長年愛用することによって現れるエイジングの風合いも、ブラウンであればより顕著に味わうことができる。裏地には保温力に優れたカシミヤを使用。
デンツ「タッチパネル対応ヘアシープレザーグローブ」
手袋を着用したままスマホ操作を可能にしたレザーグローブ。ヘアシープの高級感ある質感を一切損なわずに最新の技術でタッチスクリーン対応を可能にした。「シークレットフィット」の着け心地ももちろん健在。
デンツ「ジェームズ・ボンド スカイフォールモデル」
映画「スカイフォール」で使用され、発売当初たった3日で完売した伝説のボンドグローブ。一切の装飾を排し、とことんシンプルを突き詰めたディティールはヘアシープの質感があるからこそ可能。裏地を使用しないことによって、よりスタイリッシュなシルエットを実現している。また、表面のヘアシープの質感をより堪能できるのも、ノーライニングモデルの長所。
デンツ「ジェームズ・ボンド スペクターモデル」
こちらは「スペクター」で使用されたジェームス・ボンドモデル。スカイフォールと違い、ボタンや3本ラインのポインツ、穴飾りなどが施され装飾的な仕上がりとなっている。ドレス感の高さはそのままなのでスーツスタイルはもちろん、幅広いシーンで着用することが可能。ノーライニング仕様なので、指先に伝わる繊細な感触も実感できる。
デンツ「ハリスツイード・ディアスキンレザーグローブ」
ヘリンボーン織りハリス・ツイードと最高級のディアスキンを組み合わせた贅沢なモデル。見た目から伝わる暖かさはもちろん、ディアスキンによる通気性の高さで蒸れにくくなっているのも魅力。高級感のあるデンツのロゴ入りボタンがアクセント。