
今では上品なトップスというイメージが強いセーターだが、歴史を辿ると意外な側面が見えてくる。キレイめな着こなし以外にも、ラギッドにもスポーティーにも着られるという文脈を追った上で、4軸のコーデ事例とおすすめのブランドを紹介!
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セーターのルーツ現代の上品なイメージとは真逆!漁師のワークウェアとして生まれ、軍にも採用されたタフな歴史
セーターの源流は、イギリス海峡に位置するチャネル諸島のジャージー島・ガーンジー島という島にあるとされている。イスラム圏で生まれたニット製法が11世紀頃にこの島々に伝えられ、その後、チャネル諸島の漁師たちの漁労作業を支えるために作られた衣服が、今日のセーターの原型となるものだ。ちなみに、ニット素材の一つとして知られているジャージー素材の語源は上記のジャージー島にあることから、このチャネル諸島域がニットウェアの本場であったことが窺い知れるだろう(高級銘柄のジャージー牛乳もこの島発祥)。また、ガーンジー島から名前をとった「ガーンジーセーター」というフィッシャーマンセーターの一種も現代に受け継がれている。
漁師のために作られたセーターは、ウールを高密度に編むことで水を弾き、耐久性に優れ、過酷な船上での作業にも耐えられるタフな仕様。そのスペックが認められ、後の19世紀半ばにはイギリス海軍の制服「Seaman’s Jersey(水兵用ジャージー=ウールの被りニット)」として採用されている。つまり、現代では上品な服の一つとして認知されているセーターも、元を辿るとワークウェア・ミリタリーウェアというラギッドなルーツに結びつくのだ。
さらに、その流れを汲んでイギリス諸国では様々な形でニットウェアが発展した。中でも特徴的で、今も独自のポジションをキープし続けているのがアランニット。現代の全体的なニットウェアへのイメージとはやや毛色が違い、フィッシャーマンのイメージを強く残す武骨なニットウェアであるため、海外のストリートスナップなどを見ていても、ワークジャケットの中に着込んだり、ジーンズとブーツに合わせたようなラギッドなコーデで使われることが多い。むしろルーツを汲んで見れば、セーターは武骨なコーデにこそ似合うのかもしれない。
写真は、ワイルドな男という印象が強いスティーブ・マックイーンがアランニットを着こなした姿。(『華麗なる賭け』1968)
ワークウェアから品格・知性の記号へと転化王族・銀幕のスター・知識人が、現代のイメージに通ずる“気品”をセーターに与えた
今ではファッションに欠かせないものとなったセーターが、ファッションアイテムとして世界に広まった大きな契機は、1920年代のウィンザー公(プリンス・オブ・ウェールズ、のちのエドワード8世)の存在。1921〜22年頃、稀代のファッションアイコンであった彼がフェアアイル柄のセーターを着てゴルフ場に現れたり、ポートレート撮影時の衣装にフェアアイル柄セーターを用いた姿が、世界で初めてニュースをイラストレーション入りで報じることに主眼を置いた新聞『Illustrated London News』で拡散されたことで、ワークウェアにすぎなかったセーターを「社交の場にふさわしい余暇服」へと昇華させた。
その後、世界中でファッションアイテムとして認知されたセーターは、映画の衣装としても広く使わあれるように。そんな銀幕の中で躍動するスターたちが、“上品な大人のセーター像”を補強した。ケーリー・グラントは『To Catch a Thief』(1955)で軽やかなセーター姿を見せ、都会的でエレガントな紳士像を確立。ショーン・コネリーは『007/Goldfinger』(1964)でバーガンディのVネックをゴルフシーンで着用し、「上品な大人のカジュアル」という新境地を提示した。
さらにApple社の創業者であるスティーブ・ジョブズは、イッセイミヤケの黒タートルネックニットを何枚も所有し常に着用。黒のタートルネックを“制服”として愛用し続けたことが、セーターを「知性の記号」として社会に刷り込む決定打となった。スティーブ・ジョブズがきっかけというわけではないが、現在タートルネックのニットは準フォーマルウェア的なポジションを確立し、スーツやジャケットスタイルのインナーとして定番となっている。
また、スウェットトレーナーの定番デザインとして常に一定以上の人気を誇るカレッジスウェットも、元を辿ると1880年代の“カレッジセーター”が起源。ハーバード大学の校名と校章が入ったレタードセーターが、エリート大学の証としてこのスタイルをアイビーリーグを中心に広め、「学業とスポーツに秀でた学生の誇り」を象徴した。ハーバード大学の卒業生であるジョン・F・ケネディ元米大統領もこのカレッジセーターを愛用していたそうだ(ジョン・F・ケネディが実際に着ていたセーターは、2021年にオークションで約8万5000ドルで落札された)。これらも知的な文脈として「セーター=アカデミック」という強い連想を生んだ事例である。(写真は現行のハーバード大学のレタードセーター)
セーターという名前は「汗」から生まれた!フットボール選手のトレーニング・減量に使われたスポーティーなエピソードも
ここまでセーターの歴史と、性格の変遷について綴ってきたが、そもそも「セーター」という名前の由来をご存知だろうか?ルーツであるワークやミリタリーとは全く関係なく、意外にも今はイメージがないスポーツが由来だ。“sweater”という名の通り、英語のsweat(=汗をかく)が語源になっているのだが、これは19世紀後半頃にアイビーリーグのフットボール選手が、トレーニングや減量の際にニットの保温性を利用して「汗をかくための服」として使用していたことが理由。このエピソードから、セーターの歴史にはスポーティーな要素も刻まれている。
YALE VS. PRINCETON, 1879. Ivy League football match between Princeton and Yale, 27 November 1879. Engraving after a drawing by A.B. Frost from Harper’s Weekly, 1879.(写真:GRANGER.COM/アフロ)
また、1956年の開催されたコルティナ冬季オリンピックでは、ノルウェー代表がDale of Norwayというブランドが手掛けた公式チームセーターを採用。白黒のノルディック柄が「競技ユニフォーム」として国際舞台に登場した。2026年には同じくイタリア・コルティナで冬季オリンピックが開催予定で、Dale of Norwayが今回も公式チームセーターを制作しており、同ブランドのサイトでは現在特集ページがアップされている。
ニットセーターは、目指すスタイルによってゲージ・デザインを使い分けるのが正解
ここまでで取り上げたセーターの歴史を鑑みて本質を理解すると、柄や編み方によってキレイめスタイルにもスポーティーなスタイルにも、ラギッドコーデにも振れることが分かるだろう。クルーネックやVネック、タートルネックなどネックラインも様々で、糸の太さや編み地の表情により印象が異なるセーターは、目指すスタイルや他アイテムとのバランスを考えたニット選びでコーデの軸を決めるのが吉。大きく分けると、一般的にケーブルニットなどの表情豊かなローゲージのざっくり系はカジュアルコーデの主役として活躍し、主張が控えめで上品な印象を作るハイゲージはキレイめなスタイリング向きでドレスにも馴染みやすく、スーツやテーラードジャケット、オーバーコートのインナーにももってこいだ。
続いては、ここまでで触れてきた3つの軸にトレンドを意識したパターンを加えて、コーデの4つの方向性をスナップで見ていこう。
ニットセーターコーデの方向性1ハイゲージニットやカーディガンを使った上品軸
色々と紹介してきたものの、やはり現代のセーターの王道はキレイめコーデになるだろう。スーツやジャケットのインナーとして着るのはもちろん、セーター+スラックスや、カーディガンを使ったスタイリングもこの方向性に入ってくる。そんなドレスアイテムと合わせた着こなしはセーターが調和するイメージだが、ハイゲージニットのセーターは単体でも上品な雰囲気たっぷりなので、カジュアルアイテムに合わせた場合はセーターがキレイめな印象を引っ張る立場に。なので、デニムスタイルを品よくまとめるなど、ラフなボトムスやアウターを着たコーデにキレイめな要素を加えたい時はセーターでアレンジしてみて。
この方向性でのアイテム選びとしては、ジョンスメドレーやエヌピールなどのセーター発祥の地 イギリスのニットブランドが王道。他にもイタリア系でドルモアやザノーネなどが有力だ。ニットブランドを頼るのが間違いないが、ドレスウェア全般に強みを持つブルネロ クチネリなども上等なニットウェアを多く手がけている。
ニットセーターコーデの方向性2ケーブルニットを選んだり、ジーンズやブーツを組み合わせるラギッド軸
ジーンズやミリタリーパンツを穿いたり、レッドウィングなどのブーツを合わせるなど、ラギッドなコーデにはやはりケーブルニットや目が粗めのニットがよく似合う。ケーブルニットは厚みがあって暖かい反面、着膨れしやすいため、アウターの中に着る場合は身幅やアームにゆとりがあるものを合わせよう。
ブランドとしては、アランニットの定番であるインバーアランが日本では圧倒的に有名かつ人気。本場アイルランドやスコットランド周辺のブランドが手がける伝統的なフィッシャーマンセーターも良いが、ジェントルマン プロジェクトの「CROWN」など、今ではデザイナーズブランドなども現代的にアップデートさせたケーブルニットを手がけているため、クラシックなものが欲しいか、現代版が欲しいのかでブランドを選ぶのもアリだ。また、ストーンアイランドのコンパスバッジがついたセーターもラギッドなコーデによく似合う。
ニットセーターコーデの方向性3合わせるアイテムによって味付けしていくスポーティー軸
ノルウェー代表の公式セーターの話であったように、ノルディック柄のセーターはウィンタースポーツのイメージがついているため、分かりやすく冬のスポーティーなコーデに合うが、変哲のないハイゲージのクルーネックニットでももちろんOK。キャップを被ったり、アクティブなパンツを合わせたり、スニーカーをセットしたりと、スポーツ要素を組み込んでいくと、普段は上品に見えるセーターもどこかスウェットトレーナーのようなスポーツテイストが浮かんでくるように思う。
柄モノ(ノルディック柄だけでなく、ハーバードなどのカレッジセーターもスポーツテイスト強め)の他には、ギャラリー2枚目のスナップの男性が着ているようなボタンディテールが入っているものや、ハーフジップのものは分かりやすくスポーティーな要素を加えられる。とは言っても、セーター単体でスポーツテイストを出すことはなかなか難しいので、他アイテムで色々と味付けをしながら組み立てていこう。
ニットセーターコーデの方向性4どこか抜け感のあるエフォートレスなセーターを
最後はジャンルにとらわれず、今っぽい着こなしをピックアップ。肩が落ちたゆったりシルエットのセーターを使ってエフォートレスなムードを演出したり、ゆるシルエットのパンツを合わせてAラインを構築したり。寒さが厳しい時期を外すなら、インナーが透けて見えるようなざっくり編みのシースルーニットもおすすめ。潮流としては、ストイックな印象のセーターではなく、どこか抜け感のあるセーターが今の気分だ。
モダンなセーターで今おすすめしたいのは、シンプルだけどどこか他とは違う要素が入ったモダンなルメールや、エッジの効いたデザインで差別化を図れるアンダースン・ベルなど。アワーレガシーやアクネ ストゥディオズ、サカイなどもチェックしておくべし。
FAQ(よくある質問)を最後にチェック
Q1. セーターとカーディガンは同じもの?A. 広義にはどちらも「ニットウェア」
広義にはどちらも「ニットウェア」に属するが、セーターはかぶって着るプルオーバー型、カーディガンは前開き型という構造上の違いで区分されている。
Q2. ビジネスシーンでセーターは失礼にならない?A. 欧米では「知的で上品な装い」として定着、日本でもOK
ジャケットの下にハイゲージニットを合わせたスタイルは、欧米では1960年代以降「知的で上品な装い」として定着。『The New York Times』(1987年)でも「セーターはビジネスマンの新しい鎧」と評された。日本でも準フォーマルウェア的な立ち位置で捉えられており、ドレスコードがあるレストランやビジネスシーンでもOKとされている。
Q3. スポーティーな着こなしにセーターを取り入れるなら?A. ノルディック柄のクルーネックやレタードセーターがおすすめ
セーターコーデをスポーティーに見せたいときは、ノルディック柄のクルーネックやレタードセーターを選ぶのがおすすめ。白地やモノトーン配色を選び、スニーカーやアクティブスラックスと合わせれば、清潔感あるアスレジャーに仕上がる。
Q5. セーターの手入れで注意すべきことは?A. 洗濯機ではなく中性洗剤での手洗い、もしくはクリーニングが基本
ウールやカシミヤといった素材は摩擦や熱に弱いため、洗濯機ではなく中性洗剤での手洗い、もしくはクリーニングが基本。ハンガーに掛けると肩の形が崩れて伸びてしまうので、干すときは平干しにして伸びを防ぐ。保管時もハンガーではなく畳んで収納するのが基本だ。




















































