原料と人件費の高騰から、どのアパレルブランドもこの数年で販売価格の値上げを強いられている。特にアウターは数年前と比べて販売価格が2倍近くにまで跳ね上がっているなんてことも珍しくない。その影響からか今年は筆者の元に「新しくアウターは欲しいけど、ブランド物は高額過ぎて買う気になれないし、出所不明のブランドが展開する安価なアウターにも手を出したくない。何か良い選択肢はない?」といった相談が来ることが多い。そんな“アウター難民”の彼らに提案すると意外に好感触だったのが“古着アウター”だ。
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“選んで間違いない鉄板ブランド”からイマ買いの古着アウターにフォーカス!
古着アウターは年代物の貴重なヴィンテージや即完売したコラボ物でなければ新品と比べてかなりリーズナブル。ヴィンテージウェア特有の着古されて小慣れた風合いは、羽織るだけでコーデに大物感が出るのも魅力のひとつだ。意外に古着を着てこなかった層も「素肌から一番遠いアウターなら古着でも抵抗なく取り入れられるかも」といったポジティブな反応が多い。しかも昨今は古着ブーム。ヴィンテージ風に加工された新品の服も多く出回ってるのだから、本当の古着で本物感を楽しむのも十分良いと筆者は思う。
ただ古着の懸念点は「着るのに抵抗がある」以外にもある。それは「選択肢が多すぎて何を選べば良いかわからない」こと。特にアウターは単純にブランドが過去にリリースしたウェア以外にも、個人経営のオーダーメイドサロン店が展開していたであろうマイナーブランドのアウターやリアルに作業着として着られていたジャケット、軍放出品(ミリタリーサープラス)などの流通量が多いカテゴリーだ。そこで今回は「古着の初心者でも取り入れやすい間違いないブランドのアウター」のみにフォーカスして、注目のコーデと共に魅力を紹介していく。
鉄板の古着アウター①「バーバリーの“トレンチコート”」
ジーンズなら「リーバイスの501」、スウェットなら「チャンピオンのリバースウィーブ」といった関係性と同様に、トレンチコートの定番として位置付けされている「バーバリー」。1856年に創業し、第一次世界大戦中の1910年代にトレンチコートを生み出してから、現代でもなおブランドの定番、そしてトレンチコートの代名詞的な存在として幅広い層からアツい支持を集め続けている。下のモデルが着用しているのは1970〜1980sに流通していたトレンチコート。着込まれて味わいのある風合いが増したコットン生地とカーキベースの玉虫色の絶妙なカラーリングが秋冬の着こなしに貫禄を与える。チンフラップやエポーレット、ストームフラップやDカン付きベルトといったトレンチコートならではのディテールをふんだんに取り入れた本格的な凝った仕様ながら、古着だからリーズナブルに購入できるというお得感がたまらない。
バーバリーのトレンチコート 41,800円〜(デイヴィッツ クロージンング)ジェントルマンプロジェクトのドライバーズニット27,500円、コーデュロイパンツ19,800円(www.gentleman-projects.com/) アイヴァン 7285のサングラス64,900円(アイヴァン 7285 トウキョウ)
鉄板の古着アウター②「アクアスキュータムの“ステンカラーコート”」
バーバリーとおなじくトレンチコートやステンカラーコートが有名な英国の名門ブランド「アクアスキュータム」。ブランド名はラテン語で「水(aqua)」と「盾(scutum)」を組み合わせた造語で、創業者のジョン・エマリーがウール地に防水加工を施したオリジナル生地を開発したことから由来している。諸説あるが、ラグラン将軍が考案したラグランスリーブを仕立てたのもこのブランドだったとか。そんな歴史的な背景のあるブランドが手掛けるラグランスリーブの正統派ステンカラーコートは、羽織るだけで英国紳士を思わせる気品と瀟洒な雰囲気がただようことうけあい。
アクアスキュータムのステンカラーコート 27,500円(Safari 3号店)ジェントルマンプロジェクトのセーター22,000円、スラックス19,800円(www.gentleman-projects.com/) アイヴァン 7285のサングラス 68,200円(アイヴァン 7285 トウキョウ)
鉄板の古着アウター③「マッキントッシュの“ゴム引きコート”」
上で紹介したバーバリー、アクアスキュータムといった老舗よりもさらに30年ほど長い歴史があり、英国紳士に防水コートを提供してきたオーセンティックブランドが「マッキントッシュ」。防水機能に優れたゴム引きコートは創業からブランドアイコンとして親しまれ続けている名素材だ。そんなマッキントッシュは、これまでブランドと積極的にコラボレーションを実施しており、アーカイブを調べると実は「こんなブランドともコラボしていたのか!」と思わされるほど、あらゆるコラボレーションモデルのゴム引きコートが見つかる。その一例がこちらの2010年に展開された「メゾンキツネ」×「マッキントッシュ」のゴム引きコート。随所に施されたコーデュロイ生地の切り替えやゴールドのドットボタンといった副資材使いがインラインとは一味違う華やかな魅力を演出する。
マッキントッシュのコート66,000円(Safari 3号店)ジェントルマンプロジェクトのドライバーズニット27,500円,スラックス19,800円(www.gentleman-projects.com/)、E5 アイヴァンのアイウェア46,200円(アイヴァン PR)グランドセイコーの時計1,210,000円(セイコーウォッチお客様相談室)
鉄板の古着アウター④「オールドイングランドの“ダッフルコート”」
歴史の深いコートのひとつとして外せない存在であり、古着で根強い人気を集めているのがダッフルコート。もともとは、北欧の漁師が海での作業用防寒着として着ていたもので、その後、イギリス海軍が着用していたと言われている。日本でダッフルコートが有名なブランドといえば、インバーティアやグローバーオール、そして今回ピックアップした「オールドイングランド」だ。1867年にパリでオープンしたセレクトショップからスタートし、正統派スタイルを軸としたユニークで質の良い商品展開で洒落者たちから愛され続けているブランドとして知られている。モデルが着用しているダッフルコートは90sらしい着丈が長く、アームが太いゆったりしたフィッティングが特徴。ここ数年で注目されているオーバーサイズスタイルの気分にマッチし、羽織るだけで存在感のあるコーディネートを実現してくれることうけあいだ。
オールドイングランドのダッフルコート82,500円(Safari 5号店)ジェントルマンプロジェクトのカーディガン29,700円、Tシャツ9,000円(www.gentleman-projects.com/)ヒューストンのカーゴパンツ8,250円(中田商店)アイヴァン 7285のサングラス64,900(アイヴァン 7285 トウキョウ)
鉄板の古着アウター⑤「バブアーの“ワックスドコート”」
ストリートシックやノームコアといったキレイめ軸のコーデが注目を集めるイマの時代にあえて逆行する男臭いスタイルを追求するのも良いだろう。そんな方におすすめしたいのが、バブアーの古着コート。ワックスが改良される2006年以前に生産されたバブアーのアウターは、どれもワックス特有の匂いとベタつきを感じる漢っぷり満点の仕上がり。なかでも注目したいのが、定番のビデイルよりも分厚い8オンスの生地を採用し、ミドル丈まで着丈を伸ばした存在感のあるモデル「Northumbria」。バブアーといえばビデイルやビューフォートといったヒップ丈のワックスジャケットが人気だが、こんなコート感覚で着用できるミドルロング丈なら周りとの差別化も容易い。
バブアーのカーキコート25,300円 (Safari 3号店)ジェントルマンプロジェクトのセーター22,000円(www.gentleman-projects.com/)カンタータのネイビーパンツ55,000円(クリシェ)アイヴァンのサングラス44,000円(アイヴァン 東京ギャラリー)