上質なスーツ生地を見極める7つのポイント

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上質なスーツ生地を見極める7つのポイント

スーツといえば「仕立て」と同等に重要なのが「生地の品質」。生地の重要性はオーダースーツ、既製スーツを問わず、値段もピンからキリまで幅広い。安い買い物ではないため、購入する場合は自分の納得できる品質のものを選びたいところ。ということで、今回は良いスーツ生地を見極めるためのポイントを紹介!

スーツ生地を見極めるポイント①「基本的には天然繊維100%を選ぶ」

スーツ生地といえば天然繊維であるウール100%が代表格だ。ポリエステル混などのスーツ生地はどこかチープなイメージを与えがちだが「シワになりにくい」「速乾性が高い」など低価格以外のメリットも存在するため選択肢のひとつではある。しかし、質感、耐久性においては天然繊維の風合いを真似て生産したものであるため、どうしても天然繊維100%に勝るものではないのが事実。勝負スーツには、天然繊維100%のスーツを選ぶのがマスト。ナチュラルな光沢感を求める場合、シルク混のウール生地を選ぶのも有力だ。

化学繊維をミックスした生地の長所と短所

トレンドとしてピックアップされることも多いポリエステルやナイロンなどの化学繊維ミックス素材。それぞれの長所と短所を知ることによって、目的に応じたアイテムを選ぶための視点になるのではないだろうか。

ポリエステル
長所「シワになりにくい」「速乾性が高い」「低価格」
短所「毛玉ができやすい」「吸湿性が低いため静電気が溜まりやすい」「チープな印象を与えることが多い」
ナイロン
長所「ポリエステルと比べて機能性、耐久性が高い」「油に強い」
短所「日焼けによる劣化が速い」「吸湿性が低いため静電気が溜まりやすい」
ポリウレタン
長所「伸縮性が高い」「生地のコーティングが可能」
短所「加水分解するため寿命が短い」

スーツ生地を見極めるポイント②「毛番手(原毛の細さ)は、使用環境に応じた参考指標」

生地の風合いにこだわるとしたら、まず気になるのは原毛の細さ。例えば、国際羊毛機構(IWTO)の定めた「SUPER120’s」などのスペックがこれに相当する。(例えばSUPER120’sは「1グラムの原毛から120メートルの繊維を作ることが出来る」という理論上の指標。)
一般的に原毛は細いほど、すなわちSUPER◯◯’sの数値が高いほど高級で繊細な雰囲気になるが、そのぶん耐久性が落ちるという傾向がある。日常使いのビジネススーツにはSUPER100’s、すこし気合いを入れたスーツにはSUPER130’sを選ぶなど、スーツの着用環境に応じて選ぶのが賢い選択だ。
※SUPER表示は80’sから250’sまで存在し、数値が10増えるごとに0.5ミクロンずつ細くなっていく。例:SUPER100’s(18.5μm)、SUPER110’s(18.0μm)、SUPER120’s(17.5μm)

TAGLIATORE(タリアトーレ)のSUPER100’S生地を使用したスーツ

1960年代に創業したLERARIO(レラリオ)社のサポートの元、二代目Pino Lerario(ピーノ・レラリオ)氏が1998年に立ち上げたブランド「TAGLIATORE(タリアトーレ)」。独特な素材感と、セクシーなウエストの曲線デザインが特徴的。SUPER100’Sのウール生地を使用したスーツ。

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TAGLIATORE(タリアトーレ)のSUPER130’S生地を使用したスーツ

こちらはSUPER130’Sの生地を使用したTAGLIATOREのスーツ。光沢感などの質感の違いを見比べておきたい。

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スーツ生地を見極めるポイント③「糸番手(糸の細さ)は生地質感を決める重要項目」

原毛繊維のままでは一般的なウール生地を作ることはできない。原毛を糸状に紡ぐ必要がある。原毛の細さに連動して糸も細いというケースが多いが、指標としては別物というのを理解しておきたい。糸になった状態での細さを示すのが糸番手だ。実は、スーツ業界において毛番手以上に「糸番手」が生地の質感を決める重要な指標としてとらえられている。
それを証明するかのように、誰もが知る世界的生地ブランド「ゼニア」はSUPER◯◯表示をしないことで有名だ。関連記事▶︎ゼニアはなぜ世界の男から選ばれるのか?

糸番手

filmar.it

ステッチの糸にも番手は存在

生地はもちろん、縫製やステッチワークに採用されるミシン糸にも番手は存在する。一般的な布帛などに使用されている番手の太さは60番手、ジーンズなどの厚地に使用される糸は20番手など、生地によって使用される太さは異なる。あえてステッチ糸の番手を調節してデザインにしているブランドもあるため、頭の片隅に留めておくとより服選びが楽しくなるのではないだろうか。

スーツ生地を見極めるポイント④「織り密度(打ち込み本数)は、糸番手とセットで考える」

縦糸と横糸が織りなされたものが布帛という生地になるが、1インチあたりに縦糸と横糸が何本ずつ織り込まれているかで生地の質感が異なる。糸の本数が多い程しっかりとした硬い質感の生地になり、本数が少ないほど軽くてソフトな質感に。コストカットのために織り密度を粗くするケースもあるが、ソフトな質感を得るために密度をあえて下げる場合も存在するため、一概に「織り密度が低い=粗悪生地」と言い切れないのが難しいところ。言うまでもないが、糸の密度と糸番手のバランスが生地の質感を決めるポイントだ。

織り密度

薄い上質な生地の例

スーツに使用されるリネンやトロピカル素材などは、目が粗いながらも上質な生地が多い。夏仕様のスーツもサマーウールの薄い生地をあえて使用している。ポケットチーフもクラシックと言われているものは、ホワイト無地のリネンだ。ワンランク上のスタイルを目指すなら、TPOや季節などにも留意して上質な生地を見極めていきたい。

アイリッシュリネン生地の織り柄。随所に見える隙間から織り密度の低さが伝わる。

スーツ生地を見極めるポイント⑤「有名スーツ生地ブランドにもランクがある」

「ロロピアーナ」「ドーメル」「エルメネジルド・ゼニア」など有名スーツ生地ブランドを選べば万事OKというわけではないため注意が必要だ。例えば、同じドーメルでも「SUPER180’s SILK & KIRGYZ」や「VANQUISH Ⅱ」といった高級生地と「SUPER100’s」では価格的にも生地の質において大きな違いがある。同じブランドの中での生地の良し悪しは、今まで紹介してきた指標で概ね判断することが可能だ。
ちなみに、ブランド自体にこだわるメリットとしてスペック表示が信用できるという点が挙げられる。すべてではないが、無名ブランドの中には謳っているスペックが誇大表示ということも。例えばSUPER100’sの原毛がわずかしか使用されていないポリ混生地でも堂々とSUPER100’s表示をしてしまう等のケースが存在するため注意が必要だ。

ゼニアスーツ生地

スーツ生地を見極めるポイント⑥「数値化できない質感も大事にする」

数値化できないポイントも存在する。たとえば「光沢感・ツヤ感」が代表的。羊毛はそのままでは汚れや余分な油がついているため「洗毛」という工程を入れるが、上質な原毛はもともと油を多く含んでいるため洗いをかけても十分に油分が残り自然な光沢感を演出してくれる。逆に低品質な羊毛は油分が少なく、光沢感をだすためには人工的に多量のオイルを添加する必要があり、結果的にどこか安っぽい光沢になると言われている。
生地の数値化できない良し悪しを理解する場合は、触り比べたり、見比べたりすることによって質感を見極める目を養うことが重要になってくるだろう。

スーツ生地を見極めるポイント⑦「スーツ生地選び。まずは直感を大事に、直感の裏付け指標としてスペックやブランドを参考にするスタンス」

以上のようにスーツの生地の良し悪しは「数値に表れる点」と「数値に表れない点」の双方が存在する。
特に「SUPER120’s」「ロロピアーナ」など、単一の指標やブランドの威光にだけとらわれた先入観は、時としてミスにつながるため注意が必要だ。まずは自分が直感的に良いと思った生地を手にとることが重要。その裏づけに対してスペックやブランドの確認をして納得するようなスタンスがスマートではないだろうか?

自分の納得できるスーツを選ぶ

スーツの生地以外にも仕立ての良さやデザイン、仕様の違いなど選ぶ視点は様々だ。昨今のトレンドにフォーカスしてみると、ワイドラペルやプリーツパンツなどのクラシックなディテールを採用したスーツが今シーズンの注目株。オーダーメイドよりも低価格で購入できる吊るしのスーツでトレンドを取り入れると同時に、上質な生地を見て目を肥やすのも有力な手段だ。

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