他のヨーロッパ製の靴に比べても堅牢なものづくりで、“一生靴”と呼ばれるモデルを多く手がける「Crockett & Jones(クロケットアンドジョーンズ)」。今回は、革靴大国であるイギリス生まれのクロケット&ジョーンズが作るモードなサイドゴアブーツ「CHELSEA(チェルシー)」に焦点を当てて、その魅力について詳しく紹介!
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靴職人のサラブレッドが立ち上げた英国の老舗シューメーカー「Crockett & Jones(クロケット&ジョーンズ)」
クロケット&ジョーンズは、1879年にジェームズ・クロケット(James Crockett)とその妹の配偶者で義理兄弟の関係にあるチャールズ・ジョーンズ(Charles Jones)によって創業。イギリスにある靴の街ノーサンプトンのシューズファクトリーを起源とする老舗シューズブランドだ。両者ともノーザンプトンの靴職人の家柄に生まれた熟練の職人でありながらも、早いうちから既成靴の量産に注力。アメリカのチャールズ・グッドイヤーが開発した、ウェルトを用いて中底と本底(アウトソール)をミシンで縫い付ける「グッドイヤーウェルテッド製法」を英国でいち早く取り入れた。1924年には、後のジョージ6世となるヨーク公がファクトリーに見学に訪れたことで、イギリス国民から熱い関心を獲得。効率よく商品を生み出し、かつ誠実なものづくりと品質の高さが評価され、第2次世界大戦中は1万足以上のイギリス軍靴を製造したことでも知られている。
もともとは自社以外のシューズブランドのOEMも手がけた、イギリス靴の裏方的ポジションだった
現代のクロケット&ジョーンズは、世界的に評価されているシューズブランドであることは間違いないが、もともとはシューファクトリーとして数々のブランドのOEM(他のブランドの下請け生産)も担ってきた。同じくイギリスのシューズブランドであるJOHN LOBB(ジョンロブ)やGeorge Clevery(ジョージクレバリー)をはじめ、アパレルブランドではBrooks Brothers(ブルックスブラザーズ)やアメリカのRalph Lauren(ラルフローレン)など名高いブランドのOEM生産を手がけていた実績もある。
日本では「高級靴」としてのイメージが強いが、近年まではOEM生産をメインとしたイギリスの靴産業を支える立派な裏方的存在であり、イギリス国内でも「庶民的なシューメーカー」といった立ち位置であったクロケット&ジョーンズ。そんなイメージを払拭しようと、4代目のジョナサン・ジョーンズが現社長に就任後、OEM生産を縮小し自社ブランドに力を入れたことが、今のクロケット&ジョーンズのブランドイメージにつながっている。ジョナサンは、スタンダードコレクションの他に、新たにハンドグレードラインをスタートさせることで、靴に使用する素材の質をワンランク以上アップさせ、それに伴って新たなラスト(木型)作りや、靴のパターンのリプロダクトに注力し、独立したシューズブランドとして躍進することとなった。
もちろんスタンダードコレクションでも、さまざまなハイブランドのOEM生産で培ってきたノウハウを生かして高品質の素材、職人の高い技術力、勤勉な靴づくりを続けている。たった一代で庶民靴から世界的な「イギリス高級靴」の地位を確立した、伝説的な実力派シューメーカーだ。
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