
ニットは、糸の選び方、編み立ての密度、パーツをつなぐ縫製、最後の仕上げ。その一つひとつが、着心地と見え方にそのまま表れる。山形でニットが編まれるようになって、すでに半世紀以上が経つ。その間に蓄積されてきたのは、技術だけではない。素材の組み合わせ、編み地の度目、目立てを意識したミシンの調整など。言葉にしにくい感覚が、土地に根ざした産業の中で、職人から職人へと受け継がれてきた。山形ニットが服を知る大人に選ばれるのは、こうした見えない工程の積み重ねが品質として表れているからに他ならない。
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大人が山形ニットを選ぶ理由1ニットの聖地で作られているから
日本は産地によって様々な繊維業が栄えている。たとえば尾州ならウール、児島ならデニム、今治ならタオル、鯖江なら眼鏡、燕三条なら金属加工、桐生なら織物。「日本製」と一口に言っても、土地によって得手不得手があり、どの土地の、どの産業が手掛けているかでクオリティに大きな差が生まれる。そのなかで、山形はニット産地として発展してきた歴史がある土地だ。
はじまりは明治時代、日本政府が近代化と軍備強化、とりわけ寒冷地での戦闘を想定した軍服用ウールの自給自足を目指し、農家に羊の飼育を奨励。そのなかでも山形県の寒河江や山辺は、冬に農業ができない「農閑期」に屋内で行う養蚕が盛んだったため、家畜を育てるノウハウがあり、羊の飼育に適しているとみなされた。1930年代、佐藤繊維の創業者が各農家に1〜2頭の羊を預け、農家がその毛を刈り取って手紡ぎで糸を作る内職がスタート。これが、地域に紡績技術が根付くきっかけとなったと言われている。
写真提供:米富繊維株式会社
終戦後、軍服の需要はなくなったものの、日本人の服装が和装から洋装へと劇的に変化したことで、セーターなどのニット製品の需要が急増。当時、山辺町などで手に入れられた唯一の物資が羊毛だったこともあり、羊毛を活用した手編みセーターの製造・販売が本格化した。手編みのセーターを風呂敷に包んで県外まで売り歩くような商売から始まり、徐々に自動編み機の導入が進み、高度成長期には国内ブランドの生産を支える巨大な産地へと成長を遂げた。
大人が山形ニットを選ぶ理由2職人の情熱を感じられるから
丁寧に作られているのは当たり前。そのうえで山形ニットは、ニットの聖地で生まれ育ち、そして当たり前のようにニットの生産を生業とする多くの職人たちの手によってつくられているという背景も、見逃せない要素だ。山形県山辺町で1952年の創業以来、ニット専業メーカーとして経営を続けている米富繊維株式会社の3代目代表を務める大江氏に「ニットとは何か?」という問いを投げかけたところ、「色んなものを許容する柔軟さがあり、答えのない追求をしたくなる不思議な存在」という答えが返ってきた。
パートナーと同じセーターをシェアできるほどの柔軟性がありながら、裏毛スウェットやTシャツにはない品がある。そんなニットの可能性を生涯追求し続けるという作り手の情熱が込められているからこそ、山形ニットは着る人の感情すら動かす。袖を通した瞬間、背筋がすっと伸びるような感覚。鏡の前に立つのが、少し楽しみになる朝。それは単なる大量生産された衣類では、決して味わえない体験だ。
大人が山形ニットを選ぶ理由3意欲作のミドル〜ローゲージニットに出会えるから
山形ニットは横編みのパーツ編み、いわゆる成型編みのニット生産が基本。身頃・袖・襟などを別々に編み、リンキングなどで接合するため、シルエット設計の自由度やクラシックなスタイルを作り込めるのが強みだ。とりわけミドルゲージ以上の立体感がある編み地の表現に優れている。
山形ニットを手がける職人は、そんな成形編みニットの生産技術をいかに効率化しながら高められるかに心血を注ぐ。例えば米富繊維株式会社が手掛けるファクトリーブランド「COOHEM(コーヘン)」では、複雑な編み組織の構築はもちろん、コットン、ウール、アクリル、ポリエステルといった異素材MIX、さらに配色や形状が異なる糸を組み合わせることで、独創的なニットを展開し続けている。
同じく山形県にファクトリーを構える奥山メリヤスが展開する「BATONER(バトナー)」は、ブランドを代表するSIGNATUREシリーズに見られるように、シンプルなデザインを軸としつつ、糸の質感や編み地の密度、立体感のあるシルエットにこだわったニットを展開。どのブランドも山形の職人の情熱が感じられるハイクオリティな仕上がりで、服にこだわる大人の男性たちからアツい支持を集めている。
「GENTLEMAN PROJECTS(ジェントルマン プロジェクト)」も、山形の生産背景を活かし、糸の組み合わせや編み地、そして現代的なシルエットと他にない縫製仕様にこだわった刺激的なベーシックウェアを展開している。山形ニットの魅力や詳細は、下の動画で公開しているため、ぜひチェックを!

























