海軍由来のミリタリーアウターである「Pコート(ピーコート)」。コートとはいってもジャケットライクなショート丈が特徴で、今の気分にマッチしたアウターだ。今回はそんな「Pコート」にフォーカスし、アイテムの歴史と最新のコーデをピックアップ!
Pコートの豆知識1海の男たちの防寒アウターとして生まれたPコート
19世紀末から、英国海軍や漁師たちが船上の防寒服として着用していたPコート。中でもフランスのブルターニュ地方の漁師がよく着用していたものが、現在のPコートの起源となっている。名前についている“P”は、オランダの衣服の「pij jekker」=「ラシャ(ウールの一種)のコート」から由来したもの。派生して「Pea Jaket」という言葉が生まれ、現在の「Pコート」という呼び名に形を変えた。ちなみに、ドイツ語では「Caba」と呼ばれているそう。
Pコートの豆知識2海兵の階級によってデザインが異なっていたPコートは兵士たちの誇りだった
Pコートには海軍の伝統が色濃く反映されており、特にイギリス海軍で使用されるPコートのボタンには、特別な意味が込められている。一般的には鉄や真鍮で作られたボタンを用いたものが多かったが、中には「金のボタン」や「イギリス海軍の紋章」が刻まれたものも。これらは海兵隊員の高い階級を示すもので、特に金色のボタンは上級士官の証。軍艦の指揮官などは、その地位を示すために金のボタンがついたPコートを着用していた。19世紀後半になるとPコートが軍服として広まり、そのボタンのデザインが軍事的な階級や誇りを強調するシンボルとして重要視されるように。また、それ以外のデザインにも階級や職務による違いが見られる。将校用のPコートは、兵士のものよりも丈が長く、そのシルエットによって階級の差が一目で分かるようになっていた。こういったディテールは、軍人としての誇りや士気を高める役割も担っていたのだ。
Pコートの豆知識3Pコートはヒッピー文化によって、ファッションアイテムの地位を獲得
第二次世界大戦後、多くの軍払い下げ品が出回ったことでPコートは一般人にも着用されるように。50年代に入り反戦の動きが高まると、他の軍モノと同様、Pコートは反戦の象徴的アイテムとして1950年代のビートニクスや60年代のヒッピーたちに愛された。若者文化や反骨精神の象徴として広まったことをきっかけに、Pコートを含む様々なミリタリーアイテムがファッションアイテムとして大衆に浸透していった。
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海の男たちを守ってきたPコートが持つ機能美とは?
海軍の歴史とともに進化してきたPコートは、そのデザインに多くの機能美を備えている。そんなPコートを象徴するディテールは、主に「襟」「ダブルブレスト」「ポケット」「素材」「ボタン」の5つの要素で説明できる。
まず、海上での集音効果を高めるためにデザインされた「アルスターカラーの大きな襟」が目を引く。この襟は、船上での強風や波音による音声の聞き取りにくさを改善する役割を果たしている。ダブルブレストデザインは、強風から身を守るための防風役となり、左前でも右前でもボタンを留められる仕様は、風向きに関係なく対応できるという利点を持つ。また、手を温めるために設計された「ハンドウォーマーポケット」も、Pコートのクラシックなディテールとして人気がある。さらに、Pコートに使用される「メルトン」素材は、高密度なウールで重厚感があり、防寒性に優れているため、船上での作業や任務を遂行する海兵たちの身を寒さから守った。最後に、ボタンに刻まれた錨の印は、海軍の象徴として400年以上の歴史を持ち、木製から金属、プラスチックに至るまで、進化を遂げているものの、そのシンボルの意味は今も変わらず深く根付いている。
続いてはPコートを使った最新の着こなしを紹介!
Pコートのメンズコーデ事例1ショート丈のPコートとワイドパンツでAラインを作る
ショート丈アウターと太めのボトムスが人気を集める今、両者を組み合わせてAラインを表現したスタイリングが旬。数あるコートの種類の中で一番短丈のPコートにワイドパンツを合わせ、そんな着こなしを実践しているのがこちらの男性。シルエット作りもさることながら、ニット帽以外をブラックで統一したモダンなアイテム使いがクールでカッコいい。
Pコートのメンズコーデ事例2古着MIXで流行を意識した今風のPコートスタイルに
ワイドパンツ合わせの他にトレンドを意識したコーデを考えるなら、古着MIXスタイルも選択肢のひとつ。ダメージ加工・色落ち加工が施されたフーディ、ダメージジーンズと一緒にPコートをコーディネートすれば、流行を意識した今風のPコートスタイルに。クラシックなイメージがあるPコートを上手くモダンに着こなした成功事例だ。
Pコートのメンズコーデ事例3アウターonアウター、タイドアップシャツの合わせで作る上級者スタイル
アウターonアウターも今季注目したい冬コーデアイデア。特にデニムジャケットをインナー使いしたコーディネートは、ここ数年のピッティウオモでもよく見られる着こなし方のひとつで、日本でも少しづつ見かけることが増えてきた。そんなレイヤードをPコートで実践したのがこちらの男性。一番内側にタイドアップシャツを仕込むなど、ドレスとカジュアルのMIX具合が巧みで、ただものではない雰囲気を漂わせている。上級者の着こなしなのでハードルは高いが、うまく着こなせたら周囲から一目置かれること間違いなしだ。
Pコートのメンズコーデ事例4下襟アレンジで王道のPコートコーデとは違った装いに
Pコートは下襟のあしらいで印象をガラッと変えられるアウター。こちらのスナップのように第一ボタンを留めてステンカラーコートのように着ることで、インナーの要素が排除され、王道のPコートコーデとは一味違ったイメージに。手持ちのPコートでいつもとは違うコーディネートを組む際の参考にしてみてはいかがだろうか?
Pコートのメンズコーデ事例5風格のある男を演じるなら上襟を立てたアレンジを!
上襟を立てて風格のあるスタイルを打ち出しながら、デニムシャツやVネックニット、革靴の合わせで品のあるイメージも同時に盛り込んだキレイめラギッドスタイル。サングラスではなくメガネを着用したり、革靴は内羽根のドレッシーなものを選んだりと、小物使いで大人っぽい品格を補っているのがポイントだ。