
そのジャンルの最高峰を形容する言葉として“◯◯界のロールスロイス”という表現がある。例えば、スニーカーであればニューバランスの1300、時計であればパテック・フィリップ。様々なジャンルにそんな冠がつけられたブランドや商品が存在するが、カメラバッグ界では「Billingham(ビリンガム)」という英国ブランドがその座を占めている。今回は、そんなビリンガムの歴史や“カメラバッグのロールスロイス”と称される由縁、定番のアイテムにフォーカス!
質実剛健な英国のトラディショナルバッグブランド「ビリンガム(Billingham)」
高品質なアイテムで本国イギリスを中心に人気を集めるビリンガムは、1973年に英国ウェスト・ミッドランド地方における有数の工業都市であるバーミンガムで創業。その立ち上がり以前に、創業者のマーティン・ビリンガムが趣味である写真撮影に使う機材用バッグを、その妻のロス・ビリンガムが手作りしたことがブランドスタートのきっかけだ。前述の通り、ビリンガムのカメラバッグは趣味用であったが、その手作りの品が周囲の人たちから高い評判を受け、それを求める人が増えたことから、自然な成り行きでブランドとしての「Billingham(ビリンガム)」が立ち上がることに。ビリンガム夫婦の二人三脚で作られるバッグは英国らしい質実剛健なスタイルでクラシックなデザインが特徴。その中にビリンガム独自の機能を備えており、現在では英国を代表するバッグメーカーとして知られている。
ビリンガムのアイテムのデザインルーツは英国伝統のフィッシングバッグ。それをベースに、カメラバッグに必要な機能を搭載した高品質なバッグを手がけている。生み出されるアイテムはクラシックなルックスながら、英国ではまだ珍しい近代的な工場で生産されており、コンピューターで制御された縫製マシンや裁断機を自社で所有。また、商品ひとつひとつのタグにQRコードがプリントされており、その商品の生産時期や出荷先と時期、販売先などがデジタルで管理されている。
“カメラバッグのロールスロイス”と称されるのは、あの高級カメラブランド「ライカ」とのコラボを長年継続していることが理由!
冒頭でも触れた通り、ビリンガムは“カメラバッグのロールスロイス”と称されるブランド。その背景が気になるという方も多いだろう。バッグとしての完成度が高いことはもちろんだが、その最大の理由は高級カメラブランドの「Leica(ライカ)」と長年にわたってコラボモデルを発表している点にある。カメラ好きなら一度は憧れる一大メーカーと堂々のコラボを継続していることが、同時にカメラバッグとして確かな地位を築いていることを表しているのだ。
また、ライカとのコラボの他、ビリンガムは有名ファッションブランドのOEMも請け負っていた歴史を持つ。ブランド創業当時は軽くて丈夫なコットンやナイロン製のバッグが一般的ではなく、“大人が持つならレザー製のバッグがイケている”とされていた時代に、ビリンガムはレザーよりも水に強く耐久性があり、実用的なコットンツイル製のカメラバッグを製造していた。そんなビリンガムのバッグに目をつけたのが、アメリカの大手アパレルブランドであるBANANA REPUBLIC(バナナ・リパブリック)。機能性が高く、レザー製でなくても大人が持っていておかしくないイケてるバッグとして、アウトドアファッションに強みを持っていたバナナリパブリックが1980年代にOEMを発注していたのだそう。このエピソードからも、ビリンガムのバッグが創業当時からいかに優れていたのかを汲み取れるだろう。
カメラバッグで培ったモノづくりのこだわり・技術はそのままに、現在はタウンユース向けのバッグもラインナップ!
カメラバッグのブランドとしてスタートし、今もその分野で確固たる地位を築くビリンガムだが、現在はファッション使いに持ってこいなタウンユース向けのバッグも多く手がけているのをご存知だろうか?創業当時から続くカメラバッグ作りのこだわりはそのまま踏襲し、よりファッション性が高く、ビジネスや休日のファッションアイテムとして使いたくなるコレクションを展開している。例えば、こちらのコーディネートで携えているのは、ビリンガムのアイコンモデルである「SYSTEM-1」というバッグ。ニットにカーゴパンツを合わせたカジュアルな装いにこのバッグが加わることで、英国のクラシカルなムード漂うスタイルへとアップグレードされている。次項では、ビリンガムのタウンユースモデルに共通する特徴を紹介!
ビリンガムのバッグ 6万9300円、ジェイジェイマーサーのニット 3万800円、アークエアーのパンツ 3万1900円 (以上 グリニッジショールーム) その他スタイリスト私物
ビリンガムのタウンユースバッグに共通する3つの特徴とは?
特徴①「撥水加工・ラミネート加工による二段構えの防水性」
ビリンガムのバッグは各モデル共通で、表地にポリエステルコットンの撥水ツイル生地を採用している。また、そのツイル生地と裏地のポリエステル生地で防水フィルムを挟み込んだ3層構造のラミネート加工も採用しており、二段構えの防水仕様に。これによって耐水機能を飛躍的に向上させており、カメラをはじめとする大切なバッグの中身が水に濡れることを防いでいる。傘を差していてもバッグは雨から守り切ることがなかなかに難しいが、こんな素材使いをしているビリンガムのバッグなら、精密機械や書類などの水濡れに弱い荷物を入れていても安心だ。
特徴②「味のある経年変化を楽しめるブライドルレザーを使用した各パーツ」
持ち手やフラップのベルト、エッジのパイピングは全て英国製のブライドルレザーを使用。このディテールが入ることで、バッグ全体のルックスが英国らしいクラシックな顔立ちになると同時に、摩擦による劣化が起きやすいパーツの耐久性を向上させている。ブライドルレザーとはもともと馬具に使われていた革であり、馬の強い力にも耐えられるように通常の牛革よりも丈夫で、雨天時の外でも使用できるようにロウ(ワックス)を塗り込んで耐水性をアップさせているのが特徴。タフに作られたブライドルレザーは長く使えるだけでなく、この製法ならではの独特な経年変化を見せるため、ビリンガムのバッグも長年愛用して自分の色に染めていく楽しさを味わえる。
特徴③「クラシックなカメラバッグブランドならではの物理的な雨よけディテールを、現行モデルにもデザインとして踏襲」
現代的なバッグには、浸水を防ぐためにモダンな止水ジップなどの雨よけディテールが取り付けられていることも少なくないが、ビリンガムはラミネート加工などを採用しながらも見た目の部分はあくまでクラシックなデザインを追求。モデルによって異なるが、タウンユースバッグにもクラシックなカメラバッグブランドならではの雨よけディテールが備えられている。例えば、大きなフラップの内側に付いた小物入れにもフラップが付いていたり、フラップでは雨の侵入を防ぎきれないショルダーストラップ脇の角には、物理的に水をシャットアウトする雨蓋が。他にも雨水がバッグの中に流れ込むのを防ぐために、水が外へと滑り落ちやすい丸みを帯びたカッティングを角に施していたり。現代的な防水機能がなかった創業当時にカメラを守るために工夫して施されていたディテールが、機能美として現行のモデルにも残されているのだ。
写真家たちに愛されてきたビリンガムが提案するタウンユースバッグ5選
写真家たちに愛され続けてきたビリンガムだが、現在ではカメラバッグ以外の選択肢も豊富に取り揃えており、タウンユースとしておしゃれに使いたくなるモデルがラインナップされている。ここからは、ビリンガムのタウンユースバッグから定番のモデルを5つ紹介!
ビリンガムのタウンユースバッグ①ブランドを代表するアイコンモデル「SYSTEM-1」
先のスタイリング事例でも使用していた、ビリンガムを代表するアイコンモデル「SYSTEM-1(システム-1)」。タウンユースバッグのコレクションの中で唯一カメラバッグの形を体現するアイテムで、創業者のマーティン・ビリンガムが初めて作ったカメラバッグを復刻させたモデルだ。カメラバッグではあるもののファッションユースにぴったりなデザイン性の高さで、普段使いはバックパックやショルダーバッグなどが主流の中、周りと違った趣で差をつけられるはず。大容量なので旅行や出張のお供にも◎
ビリンガムのタウンユースバッグ②使いやすいサイズ感でブランド人気No.1のモデル「WICKHAM SATCHEL Small」
休日のちょっとした外出に最適なミニショルダータイプの「WICKHAM SATCHEL Small(ウィッカムサッチェル スモール)」は、ブランド一番人気のモデル。フラップの下はメインコンパートメントの他にポケットが二つ付いており、小ぶりなサイズ感ながらも500mlのペットボトルや10.9インチのタブレットが収納力を持つ。フラップは前述した雨よけの仕様を取り入れており、角が丸みを帯びたカッティングに。今季から上品な深みのあるニューネイビー(画像右)が新色として登場した。
ビリンガムのタウンユースバッグ③アイコンモデルをコンパクトにアップデートしたショルダーモデル「STUDIO SATCHEL」
A4サイズのモノも収納できるショルダーバッグ「STUDIO SATCHEL(スタジオサッチェル)」は、ブランドアイコンのSYSTEM-1を簡略化した復刻モデル。SYSTEM-1から両サイドのレザーディテールをカットし横幅を縮めることで、コンパクトですっきりとしたフォルムのバッグへとアップデートされている。フラップの角はWICKHAM SATCHEL Smallと同様に丸みをつける縫製が施され、ビリンガムらしさは健在。内側にはノートパソコンやiPadなどのタブレットを収納するポケットを搭載しており、持ち運びも安心な仕様に。こちらも今季からニューネイビーが新色として加わっている。
ビリンガムのタウンユースバッグ④日常使いに持ってこいなA4サイズトート「NETHERTON TOTE」
ビリンガムらしいデザインは落とし込みながらも、カメラバッグ的な要素を感じさせないファッションバッグとしてトートタイプもラインナップ。こちらの「NETHERTON TOTE(ネザートントート)」は、A4サイズが収納可能な日常使いに持ってこいのトートバッグだ。持ち手のレザーベルトは長さが調整可能で、長めにとって肩にかける使い方はもちろん、短く縮めてハンドバッグのような使い方もできるマルチな仕様が嬉しい。両サイドにポケットが付いている他、内側にも物を整理して入れられる大ポケットが1つ、小ポケットが2つ備えられている。こちらもWICKHAM SATCHEL SmallとSTUDIO SATCHELと同様に、ニューネイビーが新色として登場した。
ビリンガムのタウンユースバッグ⑤存在感バツグンで機能的な大型トートバッグ「TATTON TOTE」
最後に紹介するのは、存在感バツグンな大容量が特徴のトートバッグ「TATTON TOTE」。従来モデルは持ち手全体がレザー製であったが、肩にあたるトップの部分をグログランテープにチェンジしたことで、肩への負担を軽減したより使いやすい仕様に。開閉部分にはバッグが開きっぱなしになるのを防ぐためにマグネットを搭載したり、サイドと内側に備え付けられたポケットはバッグの高さに合わせず深さを調整することで、底にある物も取り出しやすいように設計。クラシックな見た目ながら、細部に気の利いた機能を取り入れた使い勝手の良い大型トートバッグに仕上がっている。