英国海軍のミリタリー服やフランス・ブルターニュ地方の漁師たちが着用したワーク服を出自とし、機能性とデザイン性を兼ね備えた防寒アウターの定番「Pコート(ピーコート)」。重厚感のあるタフ顔でありながら武骨過ぎず、上品でキレイめな着こなしにもマッチする汎用性の高さを誇る。今回はそんな「Pコート」にフォーカスし、大人の着こなし&おすすめアイテムをピックアップ!
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Pコート(ピーコート)は海の男たちの必需品として生まれたコート!
19世紀末から英国海軍や漁師たちが船上の防寒服として着用していたのがPコートだ。中でもフランスのブルターニュ地方の漁師がよく着用していたと言われている。Pはオランダの衣服の「pij jekker」=「ラシャ(ウールの一種)のコート」から由来したもの。派生して「Pea Jaket」という言葉が生まれ、現在のPコートという呼び名にいたる。ちなみに、ドイツ語では「Caba」と呼ばれているそう。
クラシックなPコートの定義とは?
一口にPコートといっても今では様々なタイプが存在しており、クラシックなタイプから変化形までそのバリエーションはチェスターコートを凌ぐほど豊富。何をもってPコートと呼ぶか理解しておくことで数あるPコートから、自分好みのものを選ぶための視点のひとつになるのではないだろうか。
クラシックなPコートを定義付けるポイントは「素材」「前立て」「襟」「ポケット」「ボタン」の5つだ。船橋や甲板など、海上における厳しい気候条件のもとで海軍の兵士や漁師が耐え忍ぶための工夫がそれぞれのディテールに込められている。
Pコートの定義①「重厚感のある高密度のウール素材」
Pコートに使用されるウール素材は「メルトン」という高密度で重厚感のある生地を使用している。一度織り上げた生地を縮絨し、織りを隠すようにフェルト加工を施すことで、風などの侵入を防ぎ、防寒機能を向上させているのだ。現在では、コットン素材を使用したPコートなども存在しているが、「メルトン」素材を使用したものがよりクラシックなPコートだと言えるだろう。
Pコートの定義②「風の侵入を防ぐよう工夫された前立て」
船上における生活には強風がつきものだ。そのため船上で着用されるPコートにとって、いかに風を防ぐかは重要なファクターであった。Pコートにはダブルブレストにより、風の侵入を防ぐディテールが施されている。また、左右どちらが上前でも前を締められる設計で、どこから風が吹いても対応出来る仕様もPコートならでは。クラシックなPコートを探す場合は、前立てのディテールを見て判断するのもアリだろう。
Pコートの定義③「集音効果を考慮して設計された衿」
Pコートの始まりはヨーロッパ海軍のセーラーにあり、セーラーのディテールの名残が存在する。セーラーカラーには、甲板上で風や波音、船の騒音の影響によって音声が聞き取りにくい際に、襟を立て集音効果を得るための設計が施されている。Pコートにも、おなじく集音効果を高めるために大きな衿の設計が施されているのだ。アルスターカラーやリーファーカラーと言われる衿に形状は近いが、正式名称は定かではない。大きく襟を立てて着用できるPコートは、クラシックな仕様を採用している言えるだろう。
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Pコートの定義④「機能性の高いマフポケット」
ハンド・ウォーマー・ポケットとも呼ばれ、手を温めることを主眼においたポケットのこと。円筒形の毛皮でできた手を温める防寒具がマフと呼ばれ、形が似ていることからマフポケットと言われている。手の出し入れを快適に行えるように、縦に切り口が入ったデザインがクラシックな仕様だ。箱ポケットのタイプとは、また少し形状が異なるので注意して確認したい。
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Pコートの定義⑤「英国海軍の名残ある錨が象られたボタン」
海軍の象徴とも言える碇(いかり)の印をあしらったボタンは、Pコートの特徴の1つだ。ボタンに配されたファウルアンカーと言われるこの印は、400年前から続くもの。元々は1588年のアルマダの海戦にて、スペインの無敵艦隊をイングランドが打ち破った時の海軍司令長官ハード・エフィンガム卿の印として知られていた。初期は木製の素材を使用していたが、現在はプラスティックや金属ボタンなど様々なものが使用されている。ブランドが出すPコートには、碇のマークを参考にしたオリジナルデザインを展開しているものも存在する。
続いてはPコートを使った注目の着こなし&アイテムを紹介!
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