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無類のコラボ好きが定義する良コラボと残念コラボの見極め術

無類のコラボ好きが定義する良コラボと残念コラボの見極め術

毎シーズン多くのブランドから発表されるコラボレーションアイテム。限定アイテムということから注目が集まりやすいが、成功ばかりではなく中には失敗に終わる例もある。コラボの良し悪しの見分け方はどこにあるのだろうか?ファッションアイテムにおけるコラボ史を辿りながら、コラボ情報を日々収集している無類のコラボ好きである筆者が定義する見極め術を紹介していく。

アートとモードの交差から始まったコラボという“文化的手法”ファッションアイテムにおけるコラボのはしりは何だったのか?

今日、各所で次々に生まれる「ダブルネーム」や「トリプルネーム」といったコラボレーションは、決して一過性の現象ではない。その起源は、約100年前の1930年代にまでさかのぼる。伝説的ファッションデザイナー エルザ・スキャパレッリが、シュルレアリスムの巨匠 サルバドール・ダリと手を組み、ロブスタードレスやハイヒールを模した帽子、シューハットなどを発表(1937年)。芸術家の発想を服に落とし込む手法は、当時のファッション業界に衝撃を与えた。ブランド同士ではないが、“異ジャンルの協業”による象徴的資本の掛け合わせ、つまりこれがコラボレーションの原型とされている。続く1960年代には、イヴ・サンローランが抽象画家のピエト・モンドリアンの構図をドレスに転写し、アート×モードの共作を再び普及させた。ここに「他者が持つ価値との化学反応で自らを昇華させる」というコラボのあり方が根付き始めた。

現在に至るまでのコラボの歴史裏原ムーブメントを経てラグジュアリーにも浸透、そしてコラボがマスプロジェクト化

その後、アートカルチャーとの結びつきだけでなく様々なタッグの形が模索され、ユニークなアイデアをもって人々を魅了するコラボレーションが次々に生み出されてきた。ここでは代表的なものを時代を追いながらピックアップしていく。

1980年代:サブカルチャーとスポーツの交差
1986年、伝説的ヒップホップグループ Run-D.M.C.が「My adidas」という楽曲を制作し、コンサートにアディダスの役員を招待したことで、ヒップホップアーティストとして史上初のスポーツメーカーとの大規模契約を結んだ。もともとRun-D.M.C.のメンバーはアディダスのスーパースターを愛用していたが、この契約によりスニーカー史における一大モデルとなり、後にコラボデザインのスニーカーも発売されている。

写真:Iconicpix/アフロ

1990年代:裏原宿ムーブメントとストリート起点の限定コラボ
日本では1990年代前半、藤原ヒロシらを中心とする「裏原宿ムーブメント」が発生。彼が主宰した グッドイナフや、NIGO率いるア・ベイシング・エイプ、スケートシングのC.Eらが、Tシャツやスニーカーを通じて「限定」「抽選」「再販なし」という消費者の購買動機をくすぐるコラボの形を日本に根付かせた。代表的事例として、Levi’s × GOODENOUGH(1994年)/Stüssy × GOODENOUGH(1997年)/Nike × fragment design(2000年代初頭)/PORTER×fragment design(2005年)などがある。2002年に始まったナイキの「HTM」(Hiroshi Fujiwara/Tinker Hatfield/Mark Parker)は、素材実験・少量生産型として“コラボを開発ラボ化”するモデルを打ち出した。

2000年代前半:ラグジュアリーの参入とマス的プロジェクトの制度化
2003年、ルイ・ヴィトンと村上隆によるコラボがラグジュアリーブランドにおけるコラボという考え方の転換点となった。また2004年には、H&Mとカール・ラガーフェルドによるゲストデザイナー企画により、ファストファッションとハイファッションの協業モデルが登場。ここ数年では、ユニクロがジル・サンダーやJWアンダーソンなどのデザイナーとのコラボコレクションを展開しているが、その礎となる形がそれだった。

写真:AP/アフロ

2000年代後半〜2010年代:短期的コラボではなく独立したブランドを打ち立てる長期協業モデル
2002年に始まったアディダスとヨウジ・ヤマモトによるコラボプロジェクト「Y-3」は、単発ではなく継続型コラボブランドとして機能し、スポーツと前衛デザインを長期的に統合。話題性のあるものというよりも、独立した一つのブランドとして根付き、現在はサッカー日本代表のユニフォームを手がけるほどの存在感を放っている。

2010年代〜:単発コラボの爆発、トリプルネームの登場、コラボ文化の成熟
2017年、ルイ・ヴィトン×シュプリーム/ナイキ×オフホワイト「The Ten」という2つのビッグコラボが話題をさらった。これらはいずれも入手困難で、価値が上がることが確実視されていたため転売ヤーたちの格好の餌食にもされた。特にThe Tenは故ヴァージル・アブローによる革新的なコレクションとして知られ、ナイキの歴代人気スニーカーのデザインを再構築し、シリーズとして10モデルを段階的に発売していったもの。次はどんなモデルが出てくるのかと、消費者の関心の熱を高めるPR手法としても優秀だった。

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さらに2019年以降は、ナイキ×サカイ×カウズ、フラグメントデザイン×トラヴィス・スコット×エアジョーダンなどのトリプルネームコラボが登場。三者が異なる文化的属性をもつことで、ダブルネームコラボよりも立体性を持ったコラボの形が成立した。トリプルネームの構造は2010年代後半以降に一般化され、それ以前には局地的な試みはあったが定着には至っていない。また、モンクレールが「モンクレール ジーニアス(2018〜)」として、毎シーズン異なるデザイナーやアーティストなど様々なジャンルのクリエイターを迎える“継続的単発コラボ”を展開。コラボ文化の成熟を示した。

もはやコラボなしでは生きていけないのか?消費者側だけでなくブランド側も魅せられる、中毒とも言えるコラボアイテムの“魔力”

ここまでのコラボ史を振り返ってみると、コラボという商業形態は時代を追うごとに市場を拡大し、ブランドのマーケティング手法として定番化。流星群のように各所で発生し続けている。消費者は常に新しくて珍しいコラボアイテムを待っていて、ブランド側も売上と話題性を担保できるコラボという手法を常に模索する。つまり、消費者もブランドもコラボという“魔力”に魅せられているのだ。

かつて消費者はブランドそのものに憧れを抱いた。しかし今では、ブランド単独の新作では熱狂を喚起しにくくなっており、「誰と組むのか」「どんな意外性を付与できるか」が話題性の主要トリガーとなっている。つまり、コラボでないと大きな話題として取り上げられることが難しい時代になっており、消費者がレア度と目新しさを前提条件として求めるコラボ体質となった。

一方でブランド側もまたコラボ依存へ陥っている。前述の通り単独の新作ではヒットを生みにくいため、コラボはメディア露出・SNS波及を誘発する話題性の燃料として利用され、生存戦略のひとつとなっている。成功しているブランドは、コラボに依存せず世界観を拡張する実験として位置づけており、短期的な打ち上げ花火的商法とは明確に異なる。これは、ジョルジオ・アルマーニが良い例だろう。長年コラボを実施することなく、独自にブランドの世界観を維持し続けてきた同ブランドが2024年に突如、ブランド初となるコラボを発表。しかもKITHという誰も予想していなかった意外性たっぷりのコラボということで大きな話題を呼んだ。

現代ファッション市場には、消費者もブランド側も“コラボ中毒”とでも呼ぶべき構造が顕在化しており、これだけコラボが乱発していると、必然的に良いコラボだけでなく残念なコラボも出てくる。そうなると目利きが必要になってくるわけだ。次の項目で、今回のテーマである良いコラボと悪いコラボの見極め方を述べていく。

必然性と整合性が鍵良いコラボと悪いコラボを見極めるための3つの判断基準

筆者が考える、良いコラボかどうかを判断するための具体的な基準は以下の通りだ。(もちろん個人によって価値基準が異なるため、この基準に反対意見があっても然るべきだと思うし、これ以外の判断基準も多くあるはず、という理解の上で)

1.「ストーリーの必然性」
なぜこのタイミングでこの組み合わせなのかという説得力に満ちているかどうか?例えば、ラグジュアリーとストリートが密接に結びつく大きな契機となったルイ・ヴィトンとシュプリームのコラボ。この革新的なコラボは、当時ルイ・ヴィトンのメンズラインを率いていたキム・ジョーンズが、ストリートカルチャーへの深い理解を持っていたことが背景にあって実現した。当時はストリートファッションがトレンドとして注目されていたこともあって、ラグジュアリー×ストリートという新しい形を提案するタイミングとしても完璧だった。彼は90年代のロンドンのクラブシーン出身で、シュプリームの創業者であるジェームス・ジェビアとも旧知の仲であったこともあり、さらにLVMHグループが次代の若年層取り込みを急いでいたという経営的文脈もあったのだそう。つまり「個人間の信頼」「経営戦略」「時代の潮流」が交差した結果として、このコラボは成立したのだ。

逆に、有名ブランドが話題作りとして数を打つために、なりふり構わずストーリー性のないコラボを乱発しているのでは?と感じられるものは要注意。そういうものは得てして完成度が低かったり、コラボである必要性が感じられないクオリティのデザインだったりするため、コラボというだけで飛びつくのは危険だ。

2.「製品クオリティと価格設計のバランス」
価格に見合うクオリティが担保されているか、もしくはクオリティに見合った価格設定になっているか、という視点も見極めにおいて重要。例えば、ハイブランドやデザイナーズブランドとスポーツブランドのコラボスニーカーなどは、前者のネームバリューに引き上げられて、スポーツブランド側の通常の価格帯よりも高く設定されることがほとんど。この場合は、そのアイテムの“コラボ具合”を見よう。例えばナイキ×サカイのスニーカーは、ナイキの既存モデルをサカイが再解釈しハイブリッドなデザインにアップデートした形が人気。その両ブランドでしか生まれ得ない特別な価値があるため、価格が高額になっても納得感がある。逆に、デザインは変えずにコラボ相手の小さなブランドロゴが追加されただけで通常よりも価格が上がっているものは、コラボとしては質も意義も低クオリティで、そこに投資するのはもったいないと筆者は考えている。ユニクロとジル・サンダーの「+J」などは、ハイクオリティで価格設定も良心的、発売当日に店舗に行列ができるほど話題性も十分で、優良なコラボだと言えるだろう。

3.「コラボでしか生み出し得ない特異性という観点」
そのブランド同士でないと生まれ得ない個性を活かしたアイテムは、良いコラボになる可能性が極めて高い。例えば、バブアーとバラクータという英国を代表するアウターブランドのコラボでは、バブアーのワックスコットンを使用したハリントンジャケットを発売。それぞれが持つアイコンのタータンチェックもミックスするなど、両者の魅力を一着で味わえる、コラボでしか実現できないアイテムを制作した。先述したナイキ×サカイのハイブリッドデザインスニーカーもその一例だと言えるだろう。

コラボは必ずしも良い結果が出るわけではない大成功コラボ、残念コラボの事例

最後に大成功したコラボ事例と残念な結果に終わったコラボ事例を紹介していく。

【大成功事例】

ルイ・ヴィトン×シュプリーム(2017):LVMHグループの2017年通期売上高が42.6億ユーロとなった中で、このコラボが話題を牽引したと報じられた。成功要因は「ラグジュアリーとストリート」という文化的革命を分かりやすく構造化し、希少性・抽選という購買イベント化を徹底した点にある。ストリートトレンドが落ち着いた今でも、このコラボのアイテムは中古市場においてかなりの高額で取引がされている。

ユニクロ×ジル・サンダー「+J」(2009〜、2020〜):初回リリースで完売続出、ユニクロ株価がリリース後数週間で約20%上昇したという報道も。2020年に「+J」の復活が発表されると、メディアは初回の人気ぶりを大々的に報道し、第二章の期待感を煽った。大衆市場にデザイナー哲学を持ち込んだモデルケースとして高く評価されている。

ディオール×ナイキ(2020):定価2000ドル(当時のレートで約21万4000円)という、スニーカーとしては過去最高クラスの価格にもかかわらず、全世界で抽選希望者が500万人を超えた成功事例。発売直後には、リセール市場で20倍の価格(約430万円…!)で取引されたという報道が複数存在する。

オフホワイト×ナイキ「The Ten」(2017):このコラボは「ナイキの10足の象徴的スニーカーを分解・再構築」する形式を採り、いずれも発売直後に即完売となった。出典として、Sotheby’sによる「Nike x Off-White ‘The Ten’: The Iconic Sneaker Collaboration Explained」記事において「The Tenコレクションは即座に完売し、グレイル(憧れ)ステータスを確立した」と明記されている。成功要因は、ナイキの定番モデルをデザイン的実験によって書き換え、限定性・文化的文脈・SNS拡散を三位一体で設計した点にある。

【残念事例】

アディダス×カニエ・ウェスト「YEEZY」(2022):イージーブーストで大きな人気を集めたコラボプロジェクトであったが、カニエ・ウェスト(Ye)の反ユダヤ主義的な発言やナチス称賛などの問題発言を繰り返したことでパートナーシップが突如解除された。これにより余剰在庫を処分するため、原価で放出するとアディダスが発表したことに対して、それ以前に定価で購入していた既存顧客から批判の声が続出した。

サカイ×JMウェストン(2024〜):2024年秋冬に第一弾が発売されたサカイとJMウェストンのコラボプロジェクト。デザインとしてはサカイらしい個性的なもので、それまでのJMウェストンのクラシックな概念を覆すものとして話題を集めたが、いざ発売してみると売れ行きはスローで、数ヶ月後も在庫が残っているサイズが目立った。理由としては、価格の高さが考えられ、ベーシックなデザインのJMウェストンのローファーなら長年履ける投資対象として認められるが、デザイン性が高くトレンド色の強い当該コラボのアイテムは数年後には履けなくなっている可能性が高いこと、デザインが奇抜でJMウェストンの既存ユーザーには受け入れられなかったことなどが考えられる。

アディダス×アイビーパーク(2022):発売当初の期待値に対して20%未満と売上が大幅に未達だったことで、パートナーシップを解消。ターゲットの曖昧さ・中途半端な価格設定・ブランド立ち位置の不整合が重なったことが原因として考えられる。

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