多くの洒落者が実践し、今ではすっかり定番化しているスーツ×スニーカーのスタイリング。これまでのスーツスタイルではドレスのセオリーに縛られるあまり型にはまった印象になりがちであったが「スーツの足元にスニーカーを合わせるスタイルがクール」という気分が醸成されたことにより、コーデや着こなしの自由度と表現力も格段に広がった印象をうける。今回はそんな「スーツ×スニーカー」のスタイリングにフォーカスし、注目の着こなし&おすすめアイテムを紹介!
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いまやスーツ×スニーカーの着こなしはメンズコーデの定番に
スーツにスニーカーを合わせるコーディネートが市民権を得たのは、スタイルミックスやハイブリッドドレッシング、型にはまったスタイリングの印象をリフレッシュし“こなれ感”を演出する”ハズし”のテクニックが広く認知されたからに他ならない。さらにそれぞれのアイテムを社会的な意識の変化から捉えると、ビジネスパーソンの仕事着、冠婚葬祭の礼服という“制服”的な制約から解放されたスーツが、組織や儀式のユニフォームから自己表現のコスチュームへとその意味合いが広がったことと、単なるアスレチックシューズであったスニーカーがファッションシューズとしてのステータスを確立したことが挙げられる。
もちろんドレスの伝統と約束事を重んじるスーツの着こなしからすれば正攻法ではなくトリッキーではあるが、機能性とデザイン性を兼ね備えたスニーカーがモダンでエレガントなルックスとこなれ感をもたらすドレスダウンのギミックとしてこれまでにない機能を果たすことが証明され、影響力のあるセレブやインフルエンサー、モードを牽引するブランドによってクールなスタイリングとしてのお墨付きを得たこともその普及に少なからず貢献している。このスタイリングがいつ頃から注目されたのかは諸説あり定かではないが、ドレスとスニーカーの組み合わせをモードとして明確に打ち出したのは、「アディダス」をテーマにしたヨウジヤマモトの2001-02年秋冬ウィメンズ・コレクションで、レディースではあるがランウェイにはセットアップにスニーカーを合わせたルックが登場する。そしてこの時、後にY-3が生まれるきっかけとなる初のコラボレーションモデル「アディダス フォー ヨウジヤマモト」のスニーカーが披露された。これを機にモードとスポーツは急接近し、とりわけスニーカーはスポーツの垣根を超えてスタイリッシュにこなせるファッションアイテムへと進化を遂げる。
もちろんそれまでにも1980年代、ナイキ エアジョーダンの流行やRun-DMCのブレイクによりヒップホップのファッションアイテムとしてスニーカーがもてはやされていたのは事実だが、あくまでもそれはストリート的な文脈、スポーツブランドのトラックスーツやバケットハット、スニーカーを取り入れたオールドスクールなヒップホップスタイルの進化でありこの時点でのドレスとの関係性はないとする見方が有力だ。
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一方日本のビジネスシーンにおいては、働き方改革におけるスーツをカジュアルに着こなそうという社会的機運の高まりとスポーツ庁が推進している官民連携プロジェクト『FUN+WALK PROJECT』、ビジネススニーカーという新たなカテゴリーによる後押しも忘れてはならない大きな要因と言えるだろう。さらにパンデミック後の世界では、よりカジュアルでリラックス感のあるドレススタイル、スーツにスニーカーを合わせてドレスダウンすることがニューノーマル、スタンダードになると社会学的な見地から多くの識者が予測している。ちなみに2011年から2019年まで放送されシーズン9をもってシリーズが完結した人気海外ドラマ「SUITS/スーツ」では、主人公がスーツにスニーカーを合わせて通勤するシーンが頻繁に描かれており、このドラマもスーツ×スニーカーの着こなしを是とするムードの醸成に少なからず影響を及ぼしていると思われる。
スーツ×スニーカーの着こなしが浸透したとはいえTPOは弁えるべし!
スーツとスニーカーを合わせるスタイリングが世の中に浸透したとはいえ、職業や職種柄、ビジネスパーソンとしてのドレスコードを重んじるシチュエーションやフォーマルな式典でスーツとスニーカーを合わせることはご法度だ。そんなスーツ×スニーカーの着こなしでTPOを弁えることの重要性を思い知らされる出来事があったのをご存知だろうか?このトピックにおける主役は稀代のファッショニスタとしても知られるポップアイコン、かのジャスティン・ビーバー氏。去る2021年6月21日フェット・デュ・ラ・ミュージック(音楽の祭日)に合わせて妻のヘイリーとともにフランス共和国大統領官邸であるエリゼ宮を訪問した彼は、スーツにナイキのスニーカーを合わせた着こなしでマクロン大統領と面会し、大統領夫妻との記念写真を自身のインタスタグラムで公開。これをみた人たちから、「大統領との面会にはふさわしくない装いだ」「こうした場での服装を彼に教える人はいなかったのか?」と批判の声が数多く寄せられ、ネット上で炎上したというものだ。スタイリングの格好良さよりも優先されるべきはTPOを弁えることであり、もちろんモードの都フランス・パリにおいても例外ではなく万国共通。とりわけスーツにスニーカーを合わせる際は、くれぐれもそのスタイルがシチュエーションに相応しいかどうかの見極めは慎重に。
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