
その時代の空気を鋭敏にとらえ、音楽を筆頭にユースカルチャーと共鳴するコレクションを発信してきたデザイナー、エディ・スリマン。伝説的デザイナーであるカール・ラガーフェルドに深く敬愛され、一時期はシャネルのクリエイティブ・ディレクター就任が噂されていたほど。今回は、そんなエディ・スリマンが歩んできたキャリアにフォーカス。ディオール オムで巻き起こしたスキニースーツ旋風、サンローラン強く打ち出したロックスタイルとブランド再編、そしてセリーヌでの大胆な方向転換とメンズラインの立ち上げなど、メンズファッションの常識を塗り替えてきた軌跡を辿る。
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エディ・スリマンとは?ビッグメゾンに変革をもたらし続ける鬼才デザイナー!写真家として活動する一面も
エディ・スリマンは1968年にパリで生まれ、パリ政治学院で政治学、ルーブル美術学校で美術史を学んだのち、ファッションの分野に進んだ。1997年にはイヴ・サンローランのメンズラインであるリヴ・ゴーシュ・オムのアーティスティック・ディレクターに就任。そこでの経験を経て、2000年にクリエイティブ・ディレクターとしてディオール オムの立ち上げを任される。その後、サンローランとセリーヌを率い、いずれのブランドでも独自のスタイルと戦略で大きな変革をもたらした。
また、写真家としても活動しており、自身のインスタグラムとウェブサイト「HEDI SLIMANE DIARY」にて作品を公開している。写真は11歳の頃から撮り続けており、過去にはインタビューでコレクション制作に対して「服をデザインするというより、写真を撮るように構成している」と語ったほどだ。
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ここからはエディがクリエイティブディレクターとして率いたディオール オム、サンローラン、セリーヌでの功績を紹介!
2000–2006年:ディオール オムのクリエイティブ・ディレクターを担当当時は革新的だったスキニースーツを発表し、ディオール全体に新たな顧客を呼び込む
2000年にディオール オムの初代クリエイティブ・ディレクターに就任したエディ・スリマン。デビューコレクションとなった2001年秋冬シーズン、極端に細身のスーツを打ち出して注目を集めた。スリムなシルエットとモノトーンを基調とした世界観は高く評価され、当時のメンズファッションでは、一般的でなかったタイトシルエットを定着させた。彼のシグネチャーでもある極端なスリムフィッティングといった特徴の根底には、細身である自身の体型にフィットする服がなかったという少年時代の経験があるそうだ。また、シャネルのクリエイティブ・ディレクターであったカール・ラガーフェルドがエディの服に惚れ込み、着用するために約40kg減量したという逸話も。エディが打ち出したスタイルは、ディオール全体に新たな顧客層を呼び込み、売上の拡大にも寄与。2000年代前半のメンズファッションにおいて圧倒的な影響力を誇り、ブランドの成長とトレンドを牽引した。
そんな彼のディオール オムでの名作として極端にタイトなフィッティングと立体的な加工が特徴のスキニージーンズ「JAKE」を紹介したい。こちらは彼のラストコレクションとなった2007年秋冬シーズンに発表されて大ヒット。ストレッチ性のある素材を使用し、膝やヒップに施されたダメージ加工が特徴的であり、彼の退任後も定番として継続的に展開されていた。その他に「アイスブルーシリコンコーティングデニム」「ナポレオンジャケット」「スモーキングジャケット」なども代表作だ。彼が在任していた時期のディオール オムのアイテムは、現在でも二次流通市場において高値で取引されている。
写真:Fashion Anthology/アフロ
2012–2016年:サンローランのクリエイティブ・ディレクターを担当ロックテイストを色濃く打ち出し、売り上げを2倍以上に拡大!
2012年にはイヴ・サンローランのクリエイティブ・ディレクターに就任。ブランド名を創業当初の表記に倣い「Saint Laurent Paris(サンローラン・パリ)」へと変更した。ブランド全体の創造的責任を担う方針のもと、ロゴ、ショップの内装、店員の制服、パッケージに至るまで自らが指揮をとり全面的に刷新。2013年秋冬にはグランジに着想を得たスタイルを打ち出し、既存顧客やメディアからの批判もあったが、反骨精神と若年層への訴求を前面に押し出した。広告では「Saint Laurent Music Project」などのキャンペーンを展開し、フォトグラファーとして撮影も担当。無名の若手ミュージシャンからレジェンドまで幅広く起用し、音楽とファッションを横断する独自の世界観を構築した。こうした戦略によりブランドは急速に若返り、売上は就任前の2倍以上に拡大した。
エディは、サンローランでもディオール オムで打ち出した細身シルエットを一貫して打ち出し、それに加えてコレクション全体でロックスタイルを表現。ロックテイストをラグジュアリーファッションへと見事に落とし込み、ブランドの新たな基調を築いた。裾幅を極限まで絞ったスーパースキニーパンツやモーターサイクルジャケット、テディジャケット、チェルシーブーツなどは印象に残っている方も多いのではないだろうか。
2018–2024年:セリーヌのクリエイティブ・ディレクターを担当Z世代を中心に訴求し、クールな若者のブランドというイメージを構築!
2018年にセリーヌのクリエイティブディレクターに就任。前任フィービー・ファイロが築いた知的でミニマルな路線を刷新し、ブランドロゴの「É」からアクセントを外して「CELINE」に変更した。初コレクションではロックテイストの強いスキニースーツやミニドレスを打ち出し、賛否を呼んだものの、以降は1970年代のブルジョワスタイルにロックテイストを加えたエッジの効いたスタイルを確立。離れかけた既存顧客からも再評価を獲得した。また、Z世代を中心とする若年層にも訴求。TikTok世代を意識したと評されるクリエイションによって、ブランドイメージは「知的な大人の隠れ家的ブランド」から「尖った若者のクールなブランド」へと一新された。そして、ブランド初のメンズ専用ライン「セリーヌ オム」をスタートさせ、商品カテゴリを拡充。売上は倍増し、LVMH内ではルイ・ヴィトン、ディオールに次ぐ規模へと成長した。
エディは、セリーヌでもディオールやサンローランで確立したロックテイストを継承しながら、より柔軟で時代に寄り添う姿勢を示した。その象徴が、2022年サマーコレクションで登場した「エレファントジーンズ」だ。90年代の空気感を反映したルーズなシルエットのデニムは、タイトなフィット感が代名詞であった彼の表現の幅を示すアイテムとして注目を集めた。また、シグネチャーアイテムとしては、サンローランでも人気だったテディジャケットやライダースジャケット、シャープなラインが特徴のブーツ類が挙げられる。バッグカテゴリーでは、新作「16」「C」に加え、1970年代の馬車止めモチーフを再解釈した「トリオンフ」が象徴的存在に。セリーヌのヘリテージを現代的に昇華させることで、新たなアイコンを生み出した。
あのブランドへの就任も噂に...エディ・スリマンの次の行き先は?
2025年11月現在、フリーの立場となっているエディ・スリマン。その去就には世界中のファッション関係者の関心が集まっており、一部では、創業者の逝去により空席となったジョルジオ・アルマーニのクリエイティブ・ディレクターに就任するのではないかとの憶測も浮上している。彼は、ディオール オム、サンローラン、セリーヌといったビッグメゾンのクリエイティブ・ディレクターを歴任する中で、常にブランドの既存路線を再構築し、売上と影響力の両面で大きな変化をもたらしてきた。一方で、各ブランドのアーカイブを丹念に再解釈し、ヘリテージを現代的な感性で蘇らせる手腕も発揮。こうした伝統と革新の両立により、Z世代を中心とした新たな顧客層を獲得しつつも、ブランドの既存顧客からの支持の獲得にも成功している。筆者個人としては、彼がいかなるブランドに加わっても、そのブランドの歴史や文化をリスペクトしながら若者に寄り添い続ける姿勢は、確実に成果を上げると考えている。彼の今後の動向に注目だ。


































