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ジャーマントレーナーの魅力と歴史。マルジェラが再発見した軍用靴の名作5選

ジャーマントレーナーの魅力と歴史。マルジェラが再発見した軍用靴の名作5選

旧西ドイツ軍のトレーニングシューズをルーツに持ち、いまやファッションの定番となったジャーマントレーナー。その謎多き歴史とMartin Margiela(マルタン・マルジェラ)との関係を紐解きながら、現在選びたい名作5足を紹介する。

ジャーマントレーナーはどこから生まれた?名作なのに「誰が作ったか」がわからない。ジャーマントレーナーの謎多き歴史

ジャーマントレーナーは、旧西ドイツ軍で使用されていたトレーニングシューズを起源とする。しかし、その設計者や誕生までの経緯には不明な点が多く、現在も複数の説が残されている。

ジャーマントレーナーの原型西ドイツ軍の兵士が履いた「BW Sport」

日本で「ジャーマントレーナー」と呼ばれるスニーカーは、英語圏ではGerman Army Trainer、略して「GAT」と呼ばれることが多い。その原型は、1970年代後半から旧西ドイツのBundeswehr(ドイツ連邦軍)でトレーニング用に採用されたスポーツシューズ。Bundeswehr Sportschuheや「BW Sport」などの名称で知られ、1980年代には大量に製造された。基本形は白系レザーのアッパーにグレー系スエードの補強を施し、薄いガムラバーソールを組み合わせたもの。体育館やトレーニングで動きやすい低いフォルムと簡素な設計が特徴だ。結果として、現代ではランニングシューズほどスポーティに見えず、コートスニーカーほど整いすぎない独特のバランスを生んでいる。ジャーマントレーナーのルーツを1936年のベルリンオリンピックまで遡り、Jesse Owens(ジェシー・オーエンス)が履いたDassler Brothers Shoe Factory(ダスラー兄弟靴工場)製スパイクとの関連を指摘する説もある。オーエンスの競技靴を手掛けたのは、後にadidas(アディダス)を創業するAdi Dassler(アディ・ダスラー)らだ。ただし、このスパイクから後年のBW Sportへ直接発展したことを示す確実な記録は確認されていない。

写真:アフロ

ジャーマントレーナーのオリジネーター論争adidasかPUMAか。現在も決着していない生みの親問題

ジャーマントレーナーの設計者については、現在も結論が出ていない。アディダスがBundeswehr向けのBW Sportを製造していたことから同社を起源とする説がある一方、Adiの兄Rudolf Dassler(ルドルフ・ダスラー)が設立したPUMA(プーマ)によるプロトタイプ説も存在する。ただし、軍用品は一般的なファッション商品とは生産の仕組みが異なる。Bundeswehrが定めた仕様をもとに、複数のメーカーが製造していた可能性もある。ヴィンテージのGATに細かな仕様差が見られることも、この見方と矛盾しない。世界中のブランドが引用するほど完成された靴でありながら、デザイナーの名前が残っていない。この匿名性もまた、ジャーマントレーナーを特別な存在にしている。1980年代末以降、Bundeswehrによる発注は縮小。冷戦終結とドイツ再統一に伴う軍縮もあり、1990年代には多くの軍用品がヨーロッパのサープラス市場へ流通した。ここからジャーマントレーナーの舞台は軍からファッションへ移っていく。

ジャーマントレーナーとマルジェラの関係無名の軍用靴をモードのアイコンへ変えたMartin Margiela

軍用品だったジャーマントレーナーをファッションの文脈へ持ち込んだ代表的な人物がマルタン・マルジェラだ。既存物の価値を捉え直す彼のアプローチによって、GATはモードの世界で新たな意味を獲得した。

1990年代に起きた価値の逆転サープラス品だったジャーマントレーナーをランウェイへ

1990年代、マルジェラはオーストリアで軍のサープラス品として流通していたジャーマントレーナーを入手したとされる。1999年春夏のArtisanalプレゼンテーションでは、実際の軍用トレーナーをクリーニング、補修、加工して使用。シュータンにはメゾンを象徴するナンバリングを加えた。すでに存在する製品を拾い上げ、手を加え、別の文脈へ置き直す。その手法は、匿名性や再利用を重んじた初期マルジェラの思想そのものだった。つまりマルジェラはジャーマントレーナーを発明した人物ではない。無名の軍用品にファッションとしての価値を見出し、その見え方を変えた人物だ。

メゾンを象徴する一足へ軍用品のコピーを隠さなかった「Replica」

ヴィンテージの軍用品を使用した後、メゾンはジャーマントレーナー型のスニーカーを自ら生産するようになる。現在までMaison Margiela(メゾン マルジェラ)を代表する存在となった「Replica」だ。特徴的なのは、その名称。Replicaとは「複製」を意味する。軍用品を参照している事実を隠してオリジナリティを主張するのではなく、既存物の再解釈そのものをコンセプトとして提示した。現行モデルでも低いフォルムやつま先のスエード切り替えなど、GATを想起させる基本構成を維持。軍用品だった一足をラグジュアリーへ転換した象徴として、ジャーマントレーナー史を語るうえで欠かせない存在となっている。

歴史から現代的な再解釈までジャーマントレーナーを選ぶなら押さえたい名作5選

現在のジャーマントレーナーは、忠実な復刻からラグジュアリーによる再解釈まで幅広い。歴史との関係やデザインの独自性を踏まえ、押さえておきたい5モデルを厳選した。

ジャーマントレーナーをファッション史に残した象徴Maison Margiela「Replica」

GATをファッションとして選ぶなら、まず候補に挙がるのがメゾン マルジェラの「Replica」。ナッパレザーとスエードを切り替えた低いアッパーに、ハニー系ラバーソールを組み合わせる。軍用品由来の簡素な構成を保ちながら、素材と仕立てでラグジュアリーへ昇華。GATをモードへ持ち込んだメゾン自身が現在まで作り続けているという背景も、このモデルならではの価値だ。

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GATの本流を感じる一足adidas「BW Army」

歴史との直接的なつながりを重視するなら、アディダスの「BW Army」が有力だ。ドイツ軍のトレーニングシューズをモチーフに、レザーを主体としたロープロファイルへ現代的に再構成。Sambaと似た薄底シルエットだが、Sambaは1950年代に生まれたフットボールシューズで出自が異なる。アディダスからGAT系統を選ぶなら、こちらがより本筋に近い。

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軍用靴を復刻するという正攻法REPRODUCTION OF FOUND「GERMAN MILITARY TRAINER」

ヴィンテージGATの雰囲気を素直に楽しみたいなら、REPRODUCTION OF FOUND(リプロダクション オブ ファウンド)が適任。軍用トレーニングシューズのアーカイブを調査し、当時軍用品を生産していた欧州のファクトリーで復刻するブランドだ。「GERMAN MILITARY TRAINER」も細身のフォルムやスエードの切り替えを忠実に踏襲しつつ、現代の素材と品質で仕上げられている。

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工業製品を職人の手仕事へ翻訳Hender Scheme「manual industrial products 05」

Hender Scheme(エンダースキーマ)は、ジャーマントレーナーをクラフトの視点から再構築する。「manual industrial products 05」はGATを思わせるパネル構成を、カウレザーのアッパーやレザーソールで表現。白×グレーの配色を模倣するのではなく、革そのものの質感と経年変化を主役に据えている。大量生産された軍用品を、手仕事の靴へ置き換えた独自性の高い一足だ。

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ラグジュアリーが描く薄底レザースニーカーの現在形DIOR「B01 マッチポイント スニーカー」

ラグジュアリーによる現代的な解釈として挙げたいのが、DIOR(ディオール)の「B01 マッチポイント スニーカー」。低いシルエットにレザーとスエードを組み合わせ、アンバー系ラバーソールを採用したモデルはGATとの造形的な近さを感じさせる。ジャーマントレーナーの復刻ではないが、薄底レザースニーカーという様式が現代のラグジュアリーへ浸透した現在地を示す一足だ。

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Q&Aジャーマントレーナーの気になる疑問を解説

Q1. ジャーマントレーナーはなぜ品よく見える?薄底かつ細身で、足元がスポーティになりすぎない

ソールが薄く、フォルムも低く細身。さらに装飾が少なく、白、グレー、ガムソールと色使いも控えめなため、一般的なランニングスニーカーほど足元にボリュームが出ない。スラックスなど端正なパンツにも馴染みやすいのは、このコンパクトな見え方が理由だ。

Q2. ジャーマントレーナーとadidas Sambaの違いは?見た目は似ているが、ルーツはまったく異なる

adidas(アディダス)のSambaは1950年頃、フットボールシューズとして誕生したモデル。対してジャーマントレーナーは、後年に旧西ドイツ軍で使用されたトレーニングシューズをルーツに持つ。薄いガムソールやレザーとスエードの組み合わせなど共通点はあるが、Sambaがジャーマントレーナーから派生したわけではない。

Q3. 当時のオリジナルのジャーマントレーナーは今でも買える?現在もヴィンテージ市場で流通している

旧西ドイツ軍へ納入されたヴィンテージのジャーマントレーナーは、現在も欧米のサープラスショップや古着市場で流通している。ただし製造メーカーや年代によって仕様が異なり、長期保管によるソールの劣化もある。日常的に履くことを前提に選ぶなら、状態確認は必須だ。

Q4. ジャーマントレーナーはなぜガムソールを採用している?薄いガムラバーソールは屋内トレーニングに適した実用仕様

ジャーマントレーナーの特徴である飴色のガムラバーソールは、体育館などでのトレーニングを想定した実用的な仕様。薄く柔軟で足裏の感覚を得やすく、屋内運動との相性に優れる。この機能的な構造が、現在ではジャーマントレーナー特有のシャープな足元を形作っている。

Q5. ジャーマントレーナーのサイズ選びで注意することは?モデルごとにフィットが異なるため、ブランド単位で確認したい

ジャーマントレーナー型は細身に見えるモデルが多いものの、サイズ感はブランドによって異なる。アッパーの素材やライニング、パッドの厚みによって内部のフィットも変わるため、「細身だからサイズアップ」と一律に判断するのは避けたい。各ブランドのサイズガイドや実寸を確認したうえで選ぶのが確実だ。

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