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ジャンニ・アニェッリに学ぶドレススタイル【20世紀のイタリアが生んだウェルドレッサーの着こなしを解剖】

ジャンニ・アニェッリに学ぶドレススタイル【20世紀のイタリアが生んだウェルドレッサーの着こなしを解剖】

自動車メーカー・フィアットやサッカークラブ・ユヴェントスFCの名誉会長を務め、晩年は終身上院議員にも任命された20世紀のイタリアが生んだ偉人ジャンニ・アニェッリ。ウェルドレッサーとしても知られる彼のファッションスタイルは、多くの男性に影響を与えてきた。今回は彼の装いを通じ、その美学や哲学を紐解く。現代に生きる我々の着こなしやスタイルを構築する上でのヒントになれば幸いだ。

ジャンニ・アニェッリが貫いた装い哲学煌びやかさより本質を重視する姿勢

アニェッリの装いを語る上で注目すべきは、その選択の基準が決して表面的な豪華さや流行ではなかった点だ。彼が重視したのは、信頼できる職人の手仕事と、耐久性に優れた素材だった。スーツは、ローマの名門テーラー「ドメニコ・カラチェニ」や、ミラノの「A.カラチェニ」によるビスポーク。英国の「ハンツマン」など、サヴィル・ロウの老舗にも注文していた。生地はウールを中心に、長く着用できるものを選び、カシミアなど過度にラグジュアリーな素材には目を向けなかったという。

こうした“確かな背景を併せ持つ本質的なモノを選び抜く”という姿勢は、ライフスタイルにも通底している。孫のジョン・エルカンが著書で明かしているように、アニェッリは「新鮮な野菜は市場で、捕れたての魚介は漁師から」と語り、何事も鮮度や出自にこだわって選んでいたという。

実際、彼が仕立てたスーツは孫の世代に受け継がれている。もう一人の孫であるラポ・エルカンは、祖父から受け継いだカラチェニ製のフランネルスーツを今も大切な場面で着用しているという。三世代にわたって着用できるスーツを選んでいたその審美眼は、まさに本質主義を貫いた彼の哲学の象徴だ。

ここからは、彼の具体的なファッションスタイルに触れていきたい。上のギャラリー2枚目のように40代頃までのアニェッリは、これぞ貴族といった装いを体現しており、スーツの着こなしから、緻密に整えられた髪型、小物の選びに至るまで、一切の隙がなかった。その後、歳を重ねるにつれて、品格はそのままに、装いに遊び心が加わっていく。現在まで語り継がれる彼の象徴的なスタイルの多くは、この時期に形づくられたものだ。ここからは彼の着こなしを紹介する。

ジャンニ・アニェッリのアイコニックな着こなし1政財界を飛び越えて影響を与えたカフスの上に腕時計を巻くスタイル

アニェッリのアイコニックな着こなしとしてもっとも有名なのが、シャツのカフスの上から腕時計を巻くスタイルだ。袖の中に時計を隠していてはすぐに時間を確認できないという実用的な理由が発端とされている。ほかにも、ローマのシャツメーカのBattistoni(バッティストーニ)でオーダーした袖口がタイトなシャツを傷めないため、あるいは金属アレルギーによるとも言われてきた。

この着こなしは政財界を超えて話題となり、アンディ・ウォーホルのビジネスマネージャーだったフレッド・ヒューズが模倣したほか、先日逝去したヴァレンティノ・ガラヴァーニも「私もアニェッリを真似て、時計をカフの上に着けていた」と語っている。一方、トム・フォードは若い頃にこのスタイルを試したものの「気取った真似はアニェッリ本人以外に通用しない」として、自身には馴染まなかったと振り返った。

ちなみに、数多くの腕時計を所有していたとされているアニェッリだが、その中でも特にエベラールを愛用していたことで知られる。晩年には同ブランドの「トラベルセトロ」をカフスの上から着用する姿が、公の場でもたびたび確認された。

ジャンニ・アニェッリのアイコニックな着こなし2タイドアップスタイルとカジュアルシューズの組み合わせ

タイドアップしたスーツスタイルに、あえてカジュアルな靴を合わせるといった装いも、アニェッリを語るうえで欠かせない要素だ。足元に、ローファーやドライビングシューズ、さらには登山靴のようなブーツなどを合わせたスタイルは彼の定番だった。

とりわけブーツを履きはじめたのは、自動車レース中の事故で足を負傷し、医師に装具を勧められた際に、代わりに足首を支える登山ブーツを選んだことが発端とされている。以降、その実用性を独自のエレガンスとして昇華させていった。また、トッズの創業者であるディエゴ・デッラ・ヴァッレ氏から贈られた「W.G. ブーツ」を愛用していたことも広く知られている。このモデルは彼の着用をきっかけに、国際的に人気を獲得した。

現在ではスーツを着崩すテクニックとして定着したこうした着こなしも、アニェッリのように先駆的に取り入れたウェルドレッサーの存在があってこそ、受け入れられていったのだろう。

ジャンニ・アニェッリのアイコニックな着こなし3型にとらわれないネクタイとボタンダウンシャツの取り入れ方

セオリーを度外視したネクタイやボタンダウンシャツの取り入れ方も、ジャンニ・アニェッリのアイコニックなスタイルの一部である。いずれも遊び心を宿した装いとして印象づけられ、現在まで多くの著名人がこぞって模倣している。

ネクタイは、大剣よりも小剣を長めに垂らして裏からチラリと覗かせて取り入れていた。両剣ともベルト位置より下に垂らさず、全体を短めに整えるのも特徴。このこなし方には、タイ・ユア・タイ創業者フランコ・ミヌッチも影響を受けたと語っており、現在ではドレススタイルにおけるアレンジのひとつとして広く知られている。

ボタンダウンシャツにおいては、襟先のボタンをあえて外したまま着用するスタイルが見られた。こちらはラフな装いのみならず、タイドアップスタイルでも用いられており、ドレススタイルならではの品格を保ちつつ、こなれた雰囲気を演出している。元フェラーリ会長のルカ・ディ・モンテゼーモロや、トッズのオーナーであるディエゴ・デッラ・ヴァッレもこのスタイルを取り入れており、その背景にアニェッリの存在があったことは明らかだ。

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