機械式時計の中でも一大ジャンルとなっている「パイロットウォッチ」。特徴的なデザインや歴史的背景に惹かれ「所有時計はすべてパイロットウォッチ！」というコアなファン、あるいは「ダイバーズウォッチとドレスウォッチしか持っていないので、次こそは…」という方もいるかもしれないが、いずれにせよパイロットウォッチに熱視線を送る男性は多い。今回はその魅力とおすすめの名作モデルを紹介する。 image:jackroad
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パイロットウォッチとは？
「パイロットウォッチ」とは、その名の通り“パイロット用に開発された時計”のこと。航空機を安全に操縦するための計器のひとつと言っても良く、優れた性能とメカニカルな外観が特徴だ。ダイビングに適した機能を持つ「ダイバーズウォッチ」と並んで腕時計の重要ジャンルの一つに数えられる。ダイバーズウォッチは、明確な「ISO(国際標準化機構規格)」や「JIS(日本工業規格)」が定められているが、これまでのパイロットウォッチには細かな基準が設定されていなかったため、高気密なケースや無反射コーティングの風防といった大枠の特徴は共通しているものの、細かな部分に個性を反映した様々なモデルが展開されてきた。解釈や時代によって、定義が変わってきたユニークなジャンルと言って良いだろう。
最近では、ドイツの時計メーカー「Sinn(ジン)」の発案により2012年に誕生したTESTAFと呼ばれるパイロットウォッチの技術規格をベースとし、2016年ドイツ工業規格の中にドイツにおけるパイロットウォッチの新規格「DIN8330」が発表された。これまでそのような明確な定義がなかったパイロットウォッチにも昨今変化が起きており、今後どのような規格が定着していくのか等も含めて注目が集まる。
↑2016年のジュネーブ、スイスで開催されたSIHH 2016で、IWCシャフハウゼンがパイロットウォッチの新製品を発表した際のイベントにて撮影されたXabi AlonsoとJuan Mata。
パイロットウォッチ誕生の歴史
飛行機の歴史と共に進化を遂げてきたパイロットウォッチ。パイロットウォッチの定義を仮に「航空機パイロットが身につけた時計」とするならば、人類初の動力飛行に成功したライト兄弟の弟であるオービルが身に着けていた懐中時計を、史上初のパイロットウォッチと言えるかもしれない。当時、腕時計は女性が付けるものという認識があり、男性は懐中時計をポケットに忍ばせて取り出して時刻を確認していたが、操縦中のパイロットとなるとそんな面倒な動作を行うのは難しく、大きな時計を太ももに括りつけて操縦桿を握っていたそう。そんな中、貴族であり飛行家のルベルト・サントス・デュモンが「フライト中でも時刻を確認しやすい時計を作ってほしい」と友人であったルイ・カルティエに相談。そこで誕生したのが、“腕時計”としての史上初のパイロットウォッチと言える「サントス」というモデルだった。このサントスが誕生してまもなく、第一次世界大戦が勃発し、航空機の発展に合わせてパイロットウォッチの需要も高まることとなった。
パイロットウォッチの魅力①「圧倒的な視認性の高さ」
パイロットに必要不可欠なのが、時刻などを瞬時に確認できる視認性の高さ。太陽光や暗闇などの状況下でも時刻を確認しやすいよう、12時位置に特大のアワーマークを施したり、時間を認識しやすいアラビア文字のインデックスを採用しているものが多い。さらに針やインデックスはできるだけ太くし、反射防止コーティングに加え、夜光塗料を塗布するなどのディテールを反映している。
パイロットウォッチの魅力➁「飛行をサポートする時計ならではの機能と堅牢性と耐久性」
故障すれば重大な事故に繋がることも考えられるパイロットウォッチは、高い堅牢性や耐久性を持っており、それも魅力の一つ。温度や気圧の急激な変化、揺れに重力、衝撃にも耐えうる様々な技術を搭載した時計は、飛行シーンだけでなく日常使いでも重宝。風防(ガラス)周りのリング状パーツである回転ベゼルや回転計算尺は、コックピットの計器が機能不全に陥ったときの万が一の際に計器の代わりになったりと、パイロットウォッチならではの機能性も備わっている。
パイロットウォッチの魅力③「操作しやすい大きなリューズ」
パイロットウォッチが開発された当時、防寒や手元の保護のためグローブを付けていたこともあり、素手でなくても操作しやすいように設計されている。その中でもよく見られる特徴が、大きな「リューズ」だ。滑らないよう溝を施していたり、指の引っ掛かりを良くするために円錐型にしたりと、様々な工夫が凝らされている。
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