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ALOはなぜ人気?男も知るべき価値観変容とウェルネス審美の新潮流

ALOはなぜ人気?男も知るべき価値観変容とウェルネス審美の新潮流

ロサンゼルス発のアクティブウェアブランド「ALO(アロ)」が支持を広げている理由は、服そのもののデザインや品質だけでは語りきれない。背景にあるのは、服や化粧で飾り立てること以上に、身体そのものへの関心が高まっている時代の空気だ。しかもそれは、マッチョな世界観のもとで鍛え上げることや、勝つことを目指す価値観ではない。身体との向き合い方は、トレーニングだけでなく、休息、移動、日常の所作にまで及びつつある。だからこそALOは、レディースの人気ブランドという話にとどまらず、いま何が美しく映り、どんな身体意識が支持されているのかを考えるうえで見過ごせない存在になった。なぜALOは人気なのか。その背景をたどることは、いまのファッションを動かす価値観の変化を読み解くことにもつながる。

ALOとは?セレブ人気を追い風に、存在感を高めるLA発のアクティブウェアブランド

ALO(アロ)は、2007年にロサンゼルスでダニー・ハリスとマルコ・デジョージが創業したアクティブウェアブランドだ。ブランド名は「Air、Land、Ocean」の頭文字に由来する。出発点はヨガウェアにあるが、ブランドの輪郭をそれだけで捉えると実態を見誤る。創業者自身が掲げる思想の核には、単に運動用の服を売るのではなく、ヨガやマインドフルな実践を日常へつなぐ「studio-to-street」という考え方があるからだ。

実際、ALOはワークアウトウェアを軸にしながら、スウェットやアウター、シューズ、アクセサリーまで展開を広げ、運動の場と日常の装いの境界をまたぐブランドとして存在感を強めてきた。2016年には、初の旗艦店をビバリーヒルズにオープン。その後、北米と中東を基盤にしながら、欧州では英国、アイルランド、オランダ、アジアでは韓国へと展開を広げ、2025年時点で世界169拠点を運営していると報じられている。

さらに海外ではHarrodsやSelfridges、Bloomingdale’sといった有力百貨店での取り扱いも確認でき、直営中心のブランドでありながら、感度の高いファッション流通にも食い込んでいる。近年はメンズにも力を入れており、公式でもトレーニング、ラン、ヨガ、リカバリー、ラウンジまで横断する構成を打ち出している。レディース人気の印象が先行しやすいブランドではあるが、実像としては女性向けヨガウェアの話にとどまらず、身体への意識を含んだライフスタイル全体を提案するブランドとして見るほうが近い。

なぜ今ALOが人気?私服として浸透し、戦略的な起用で人気を加速

街で見かけるブランドになった理由まず熱を生んだのは、セレブの私服としての広がり

ALOがここまで存在感を高めた背景には、著名人の私服として浸透してきた事実がある。海外誌『Vogue』では、ダコタ・ジョンソンやローラ・ハリアーが好むエアリフト系、マーゴット・ロビーやベラ・ハディッドが選ぶエアブラシ系、ソフィア・リッチー・グレインジが愛用するアロソフト系といった具合に、着用者とアイテムの関係まで踏み込んで紹介されてきた。『British Vogue』でも、ヘイリー・ビーバーやカイア・ガーバー、ロージー・ハンティントン=ホワイトリーらの着用が取り上げられており、ALOはワークアウトの場だけでなく、犬の散歩や買い物、カフェ、移動といった日常の延長で着られるブランドとして認知を広げていった。ワークアウトウェアが街着へにじみ出る感覚を、もっともわかりやすく可視化した存在のひとつと言っていい。

有名芸能人やスポーツ選手の公式起用が人気を後押しブランド側も、誰に何を託すかを明確に設計

一方で、ブランド側もその流れを受け身で眺めていたわけではない。ALOは、自らの世界観を誰に託すかをかなり明確に設計してきた。公式ではモデルのケンダル・ジェンナーを前面に押し出し、「Luxury Is Wellness」という価値観を視覚的に訴求。さらに、BLACKPINKのジス、BTSのジン、NBA選手のジミー・バトラー、NFL選手のジョー・バロウらを起用し、女性向けヨガウェアという見え方にとどまらないブランド像を築いてきた。私服としての浸透が熱をつくり、ブランド側の起用がその熱に輪郭を与えた。その両輪が、いまのALO人気を支えている。

人気の芯はどこにある?露出戦略だけでは片づけられない、ウェアそのものの完成度の高さ

もっとも、こうした露出をそのまま自然発生的な人気と見るのは早い。メディア露出やインフルエンサー投稿のすべてが、純粋な私的選択だけで成り立っているとは限らないからだ。衣装の無償提供(ギフティング)や契約の有無を含め、外からは見えない事情も少なくないはずだ。だからこそ、私服着用の記事、ショッピング記事、ブランドの公式起用、SNS投稿を一緒くたにせず、分けて読む視点は欠かせない。

それでもなお、ALOを単なる露出戦略の産物として片づけにくいのは、ウェアそのものに審美的な説得力があるからだ。たとえば代表的なAirliftは、適度な圧縮感とわずかな光沢を備え、身体の線をすっきり見せやすい。一方のAirbrushは、よりマットでコットンライクな表情を持ち、街着にもなじみやすい。つまりALOは、ただ着心地のよさを追うのではなく、素材ごとに見え方や着地点を細かく分けているのである。

加えて、細めのウエストまわりや裾のフレア、スプリットヘムのように、運動着の延長でありながら街で見たときに違和感が出にくい造形も巧みだ。ロゴや装飾で押し切るのではなく、光沢の出し方、マットな質感、ラインの整え方で印象をつくっているからこそ、ワークアウトウェアの枠に収まりきらない広がりが生まれる。仕掛けだけでここまで支持が定着することはない。ALOが人気を集める背景には、露出戦略だけでなく、ウェアそのものの完成度の高さがある。

lululemon以後の市場で何が起きた?人気の背景には、アスレジャーをめぐる価値観変容がある

ただし、ウェアそのものの完成度だけで、ここまでの熱量を説明しきることもできない。ALO人気の背景には、アスレジャーをめぐる価値観そのものの変化がある。高機能で洗練されたアクティブウェア市場を先に切り開いたのはlululemon(ルルレモン)だが、その後に続いたALOやVuori(ヴオリ)は、同じ市場をただなぞったわけではなかった。lululemonが機能性や習慣、コミュニティを軸に支持を広げたのに対し、ALOはウェルネス審美やセレブ的な生活感を、Vuoriは快適さと日常性をそれぞれ押し広げてきたからだ。その背景には、ロゴや価格で外側を飾り立てることへの軽い疲れもあるのだろう。いま人々が惹かれ始めているのは、虚飾や虚勢ではなく、身体そのものや生活習慣がにじませる説得力のほうだ。つまり、いま起きているのは単なるブランドの流行ではない。身体をどう扱い、どう見せ、どんな生活感覚と結びつけるかという価値観の枝分かれと再編である。

新しい価値観はどう枝分かれした?lululemonが切り開いた市場を、ALOとVuoriが別方向へ広げた

lululemonが切り開いたのは、単なるヨガウェアの人気ではない。高機能で洗練されたアクティブウェアを、運動習慣のある生活者のための服として定着させたことに大きな意味がある。そのうえでALOとVuoriは、その市場を同じように広げたわけではなかった。ALOがそこへ持ち込んだのは、ウェルネス審美やセレブ的な生活感、そしてワークアウトと街着の境界を曖昧にする感覚である。

lululemonのメンズコレクションを見てみる

一方のVuoriは、肩の力の抜けた西海岸的な快適さを軸に、より日常へなじむ方向へ支持を広げてきた。同じアスレジャーの文脈に立ちながら、lululemonは機能と習慣、ALOは審美と空気感、Vuoriは快適さと日常性へ、それぞれ重心を置いている。

Vuoriのメンズコレクションを見てみる

ALOとの違いが最もよく表れる対照軸Under Armourが象徴してきた、勝利・競争・突破を軸とする従来の身体観

こうした価値観の枝分かれを理解するうえで、Under Armour(アンダーアーマー)の存在はひとつの対照軸になる。同ブランドが強く結びついてきたのは、勝利、競争、突破といった価値を前面に出す従来型の男性アクティブウェア観だ。そこでは、身体は鍛え上げる対象であり、服はその力を最大限に引き出すための装備として位置づけられてきた。もちろん、その価値がいまも多くの支持を集めていることに変わりはない。だが一方で、ALOやVuoriが広げてきたのは、それとは別の重心を持つ身体観でもある。勝つことや強さの誇示だけでなく、休息、可動性、移動、日常での見え方まで含めて身体と向き合う感覚が広がる中で、求められる装いもまた変わり始めている。

メンズ視点でALOをどう見る?女性人気のブランドで終わらない、男が知るべき理由

メンズにとっても無関係ではない理由身体への関心が変われば、男の装いも変わる

たしかに、ALOはレディース人気を軸に存在感を高めてきたブランドだ。実際、その熱量が先に可視化されたのも女性市場だった。だが、そこで思考を止めると、この流行の本質を見誤る。いま起きているのは、女性向けアクティブウェアのヒットではなく、身体への関心そのものが装いの選び方を変え始めている、という変化だからだ。かつて男性のワークアウトウェアは、競技性や筋力、強さの誇示と強く結びついていた。だが今は、可動性や休養、姿勢、日常での見え方まで含めて、身体とどう付き合うかが問われるようになっている。そうした空気の中で、ワークアウトだけで閉じず、移動や外出、日常着へと接続するALOのあり方は、メンズの装いを考えるうえでも示唆に富む。

LYFTやCRONOSと何が違う?日本のワークアウトブランド文脈で見ると、ALOの違いが見えてくる

この変化は、日本の読者にとっても決して遠い話ではない。たとえばCRONOS(クロノス)LYFT(リフト)は、トレーニングウェアを街へ持ち出す感覚を、日本の男性市場で育ててきたブランドとして理解しやすい存在だろう。だからこそALOの違いも見えやすい。筋肉や競技性を正面から押し出すというより、ウェルネス、休息、移動、ライフスタイル全体のトーンまで含めて見せている点に、このブランドの特徴があるからだ。言い換えれば、LYFTやCRONOSがワークアウト起点で広がったブランドだとすれば、ALOはそこへセレブ的な空気感や静かな高級感を重ねながら、より広い生活領域へにじみ出たブランドと言える。つまりこの流行を読むことは、女性人気ブランドの情報を追うことではない。外側を過剰に飾り立てることよりも、身体そのものや生活の質感へ重心が移りつつある時代に、これから男の装いへどんな身体観や生活感覚が入り込んでくるのか。その変化を先回りして捉えることでもある。

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