派手なロゴや装飾ではなく上質な素材や仕立てで魅せる、いわゆる「クワイエット・ラグジュアリー」なスタイルが、いまメンズファッション業界にてじわじわと注目度を高めている。
大人の男なら知っておきたい!クワイエット・ラグジュアリーの意味とは?
クワイエット・ラグジュアリーとは、ロゴや派手な装飾を排し、素材と仕立ての質にこだわった控えめなファッションスタイルである。このスタイルは、アンダーステートメントという美学に根ざしており、自己主張を抑えながらも本質的な価値を示すものである。目立たないことこそが、洗練されたセンスや本物の高級感を引き出すのだ。この考え方は、19世紀の英国ダンディズムを象徴するジョージ・ブライアン・ブランメルの哲学にも共通すると言って差し支えないだろう。彼の「目立たないのが本当のお洒落」という信念は、クワイエット・ラグジュアリーの本質であり、外見で派手にアピールするのではなく、服自体の質と着こなし方で控えめにセンスを表現するというものである。
目立たないスタイルに宿る成熟した美意識富裕層がクワイエット・ラグジュアリーに傾倒する理由とは?
筆者の周りに少なからずいる富裕層男性の友人は、「(服装で)あまり目立たないこと」を意識的に心がけているように見えるケースが少なくない。それもそのはず、よく考えれば彼らにとって自分が富裕層であることを悟られるのに何のメリットがあるだろうか。逆に、赤の他人に「お金持ってそうだな…」と思われることにより生まれるリスクは確実に存在するだろう。嫉妬されて足を引っ張られるかもしれないし、お金目当てで近づいてくる輩が出てくるかもしれない。彼らのなかには、単純に服装に全く興味がなくお金をかけないという人もいるが、一見すると地味な服装だけど、実は全身ブルネロ・クチネリで揃えているみたいなケースも少なくない。
クワイエット・ラグジュアリーは、「オールドマネー」と呼ばれる富の象徴とも関連が深い。オールドマネーの富裕層は、世代を超えて受け継がれた財産を持つ人々であり、彼らは富の誇示を控え、質の高さや洗練を重視する。彼ら、彼女らにとって、控えめで上質なファッションを選ぶことは、真の贅沢の証である。ロゴやブランド名でアピールするのではなく、長年の伝統や本物のクラフツマンシップを重んじることで、その品格とステータスを表現するのだ。
さらに、男性のクワイエット・ラグジュアリーなスタイルは、隣に立つ女性を引き立てる効果も持つ。過度に自己主張しない控えめなスタイルは、パートナーとのバランスを取り、全体としてエレガントで洗練された印象を与える。自らが目立つためのファッションを志向するではなく、あくまでも相手を引きたてるような着こなしを良しとする心の余裕が、まさに格好良い大人という感じだ。
目立ってなんぼのスタイルから、控えめなエレガンスへのシフトが加速中なぜ今、クワイエット・ラグジュアリーの注目度が高まっているのか?
2010年代後半、ストリートファッションの爆発的な人気により、ハイブランドや人気ストリートブランドのロゴを前面に押し出すいわゆるロゴドンのアイテムが急速に広まり、実生活やSNS上でステータスをアピールする恰好の道具となった。しかし、派手なロゴやデザインの刹那的な消費が続く中で、飽和感や食傷感が一部の消費者の間で広がり、より深い価値や持続可能な美学を求める動きがじわじわと広がってきた。
この変化は、単なるトレンドの反動にとどまらず、ファッションの価値観そのものが再評価されつつあることを示している可能性がある。2019年頃から、かつてはストリートノリのデザインを積極的に取り入れてきたハイブランドの間でも、シンプルでクラシックなデザインへのシフト傾向が見受けられている。これは揺り戻し的な一過性の動きではないと筆者は考えている。上質な素材と控えめなデザインを重視したクワイエット・ラグジュアリーは、成熟した消費者に昔から愛され常に一定の支持をキープしてきたのは言わずもがなであるが、今後はそのような消費者が増えることでその支持傾向がさらに強まるのではないかと考えている。クワイエット・ラグジュアリーが、今後のメンズファッションにおいてどんなポジションを占めるのか引き続き注目したい。
人気作の主人公男性は、男も女も魅了するクワイエット・ラグジュアリーは、韓国ドラマや映画を見ながら楽しく学べる!?
映画やドラマに登場するキャラクターの中には、クワイエット・ラグジュアリーを体現する人物が多い。例えば、『トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜』のキム・シン(コン・ユ)は、ウールやカシミヤのコートにタートルネックを合わせ、控えめながらも上質なファッションを披露している。
また、『ヴィンチェンツォ』のヴィンチェンツォ・カサノ(ソン・ジュンギ)は、スーツスタイルだけでなく、カジュアルな場面で品の良いカシミアやウールのセーターを取り入れ、控えめながらも洗練されたファッションを見せている。『キム秘書はいったい、なぜ?』のイ・ヨンジュン(演:パク・ソジュン)も、役柄もあってスーツ姿が多いが、オフのシーンではシンプルで上質なセーターを着こなし、エレガンスを漂わせている。
『キングスマン』のハリー・ハート(コリン・ファース)はクラシックな英国紳士スタイルを体現し、タイムレスなエレガンスを感じさせる。また、『ゴッドファーザー』のマイケル・コーレオーネ(アル・パチーノ)や『007』のジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)も、派手さを避けながらも存在感のあるスタイルで、クワイエット・ラグジュアリーを表現している。日常生活においては、ジョージ・クルーニーやウィリアム王子も控えめでありながら上質なスタイルを貫き、公私ともにエレガンスを象徴する存在として知られる。
最後に、クワイエット・ラグジュアリーな装いを実現するのに筆者がおすすめするブランドの一部を厳選紹介する。
クワイエット・ラグジュアリーなおすすめブランド1イタリアのソロメオ発のラグジュアリー「Brunello Cucinelli」
1978年にイタリアのソロメオで設立されたBrunello Cucinelliは、カシミアを中心とした最高級の素材を用いたアイテムを展開している。このブランドのアイテムは、シンプルでありながらもエレガントなシルエットが特徴で、富裕層の男性に支持されている。ロゴを前面に出さず、品質で勝負する姿勢は、クワイエット・ラグジュアリーの本質を体現している。▶︎Brunello Cucinelliのアイテムをチェックしてみる!
クワイエット・ラグジュアリーなおすすめブランド2創業1924年、イタリアのカシミアとウールの名門「Loro Piana」
Loro Pianaは、1924年にイタリアのクアローナで創業され、世界的に有名なカシミアやウールの製品を提供するブランドである。特に、シンプルで洗練されたデザインのコートやスーツが人気で、長年にわたり富裕層に支持されている。クワイエット・ラグジュアリーを求める男性にとって、このブランドは理想的な選択だ。▶︎Loro Pianaのアイテムをチェックしてみる!
クワイエット・ラグジュアリーなおすすめブランド3テーラリングの名門イタリアブランド「Zegna」
1910年にエルメネジルド・ゼニアによって設立されたZegnaは、イタリアの高級テーラードブランドとして知られている。洗練されたテーラリング技術を持つこのブランドは、かねてよりスーツやフォーマルウェアでの評判が高く、シンプルかつエレガントなデザインで富裕層に支持されている。さらに近年はエレガンスを保ちながら、よりモダンで若々しい感性に響くようなアイテムの展開でも知られ、魅力を増している。▶︎Zegnaのアイテムをチェックしてみる!
クワイエット・ラグジュアリーなおすすめブランド4シンプルでミニマルな現代ラグジュアリー「The Row」
The Rowは、シンプルでありながらも細部にこだわりを持つブランドとして評価が高い。ミニマルなデザインに上質な素材を組み合わせ、控えめでありながらも洗練されたアイテムを提供している。ニュートラルな色合いを基調としたアイテムが多く、クワイエット・ラグジュアリーを現代的な感覚で実践する上で理想的な選択肢となるブランドだ。▶︎The Rowのアイテムをチェックしてみる!
クワイエット・ラグジュアリーなおすすめブランド5英国の伝統を引き継ぐクラシックブランド「Dunhill」
Dunhillは、1893年にアルフレッド・ダンヒルによってロンドンで創業され、英国の伝統的な紳士スタイルを現代に伝えるブランドである。特にクラシックなスーツやレザー製品で知られ、派手な装飾を排したエレガントなデザインが特徴。控えめでありながらも質の高さが際立つアイテムは、クワイエット・ラグジュアリーを体現している。▶︎Dunhillのアイテムをチェックしてみる!
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