
プロテインの値上げが相次いでいる。トレーニーから健康や美容を意識する人まで、幅広い層に浸透した今、改めて問いたい。プロテインを飲み続ける必要はあるのか。価格高騰の背景をひもときながら、これからのプロテインとの賢い付き合い方を探る。
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プロテイン高騰の背景筋トレ・美容需要が拡大。国内プロテインドリンク市場は約7.7倍に
国内の粉末プロテインとプロテインドリンクの両市場で、2025年のブランド別販売金額1位を記録したSAVAS(ザバス)。[1] 同ブランドを展開する明治は、2026年9月以降、粉末プロテイン14品の内容量を約11〜22%削減。「ザバス ホエイプロテイン100」の980g入りも800gへと順次変更された。さらに12月からは、プロテイン飲料22品の出荷価格を約6〜11%引き上げる予定だ。[2][3] この価格高騰の背景にあるのが、世界的なホエイ原料の需要拡大だ。栄養業界の専門メディア『NutraIngredients』によると、タンパク質含有率約80%の濃縮ホエイ原料「WPC80」は、2023年6月頃の1トン当たり5,500ドルから2026年6月には32,000ドルへと上昇。約5.8倍に達した。[4] 需要の拡大は国内市場の数字にも表れている。インテージSRI+の調査によれば、スポーツ系プロテインドリンク市場の販売金額は、2017年4月〜2018年3月と2025年4月〜2026年3月の比較で約7.7倍に拡大した。[5] 背景には筋力トレーニングの普及に加え、男女を問わず、美容や健康維持、ダイエットを目的にタンパク質を求める層が広がっていることがある。近年では、食欲を抑えるGLP-1系薬剤の普及に伴い、食事量が減少した人の栄養補給という需要も生まれている。[6][7] 食品企業も成長市場への投資を進めているが、ホエイの原料となる乳清は主にチーズ製造の副産物。需要が増えたからといって、簡単に生産量を増やせるものではない。さらに日本では円安も調達コストを押し上げる要因となる。海外製ホエイ原料を輸入する場合には円換算の仕入れ価格に直接影響し、国産ホエイでも輸入飼料やエネルギー費の上昇を通じて間接的に影響する場合がある。
プロテインのメリットと注意点タンパク質量、カロリー、添加物、おいしさ。その一杯を多角的に評価する
近年のプロテインは、香料や甘味料の配合、原料加工などの技術によって、おいしさの面でも進化してきた。2018年に『Journal of Dairy Science』に掲載された研究でも、甘味料の種類や組み合わせがプロテイン飲料の嗜好性に影響することが示されている。[8] さらに、コンビニやスーパーでも手軽に購入できるプロテインドリンクが充実。タンパク質を効率よく補いながら、飲み物としてのおいしさも楽しめるようになった。糖類の多い清涼飲料水の代わりに選ぶなら、商品によっては糖類の摂取を抑えながらタンパク質も補給できるだろう。こうしたメリットは積極的に評価したい。ただし、プロテインが手軽でおいしくなったからこそ、その一杯から得るものだけでなく、身体に取り込むものにも目を向けたい。例えば、タンパク質20gだけでも約80kcalに相当し、糖質や脂質を含む製品では総エネルギー量がさらに増える。減量を目的としているなら、普段の食事に追加することで生じるカロリーも無視できない。また、糖類を抑えるために使われる甘味料にも、注意しておきたい点がある。WHOは2023年、スクラロースなどの非糖質甘味料を体重管理の手段として用いることを推奨しないとの指針を公表した。長期的な体脂肪減少効果が確認できていないことなどが理由だ。[9] 甘味料そのものの安全性を否定するものではないが、糖類が少ないことと、ダイエットに有効であることは必ずしも同義ではない。原材料のシンプルさを重視するなら、無香料・無甘味料のプレーンタイプも選択肢となる。体質との相性も重要だ。乳糖を含む製品では、乳糖不耐症の人が腹部膨満感や下痢などを起こす場合がある。[10] 腎臓への影響については、健康な成人を対象とした研究で、高タンパク質摂取による明確な腎機能の悪化は確認されていない。ただし、腎機能が低下している人では摂取量に制限が必要な場合もあるため、総摂取量を含めて慎重に考える必要がある。[11][12] プロテインは、便利でおいしいというだけで十分に魅力的な商品だ。それでも、飲めば無条件に身体にプラスになるわけではない。タンパク質の含有量に加え、カロリーや原材料、体質との相性まで含めて評価することで、その一杯の価値はより明確になるはずだ。
プロテインから考える栄養戦略食生活と目的から逆算し、必要なサプリメントを選び抜く
まず見直したいのは、普段の食事だ。肉や魚、卵、大豆製品などには、タンパク質以外にもさまざまな栄養素が含まれている。例えば青魚にはEPAやDHA、卵にはコリンやビタミンB12、赤身肉には鉄や亜鉛など、それぞれに異なる栄養的な価値がある。同じタンパク質量でも、何から摂取するかによって身体に取り込む成分は変わる。興味深いのが、2017年に『The American Journal of Clinical Nutrition』に掲載された研究だ。筋トレ経験のある若い男性10人に、タンパク質量を18gに揃えた全卵と卵白を摂取させたところ、全卵の方が運動後の筋タンパク質合成を強く刺激したという。[13] 小規模かつ短期的な研究であり、通常の食事が粉末プロテインより優れていると断定することはできない。それでも、タンパク質の含有量だけでは食品の価値を測れないことを示す好例だろう。しかし、栄養豊かな食事には、もうひとつ見逃せない側面がある。毎日の献立を考え、肉や魚、野菜を買い揃え、調理して後片付けをする。こうした食生活を維持するには、食材費に加えて相応の時間と労力がかかる。2026年に『Current Developments in Nutrition』で発表された米国の研究でも、仕事や育児などの責任に費やす時間が、食事の準備に割ける時間を制約することが示されている。[14] 食材の下ごしらえや料理の作り置きによって負担を軽減することはできるが、仕事や家族構成によって食事に割ける時間は異なる。自分では料理をしていなくても、パートナーや家族がその労力を担っている場合もある。栄養バランスに優れた食生活を維持できること自体、恵まれた環境の表れなのかもしれない。こう考えると、値上がりしたプロテインにも確かな価値が見えてくる。調理に時間を割かず、必要なタンパク質を効率よく補えるという利便性だ。食事の栄養的な豊かさを完全に代替することはできないが、仕事や家族との時間、トレーニングや休息の時間を確保するうえで、合理的な選択肢になり得る。さらに、その一杯の価値は何の代わりに飲むかによっても変わる。糖類の多い清涼飲料水との置き換えなら栄養面でプラスに働く可能性があるが、栄養バランスの整った食事をプロテインドリンクだけに置き換えれば、ほかの栄養素を摂る機会が失われる。普段の食事に追加する場合も、タンパク質だけでなく摂取カロリーが増えることを忘れてはならない。だからこそ、プロテインを飲むかどうかを考える前に、まずは自分が何を十分に摂れていて、何が不足しがちなのかを把握しておきたい。栄養摂取量を正確に把握するには、食材の重量や栄養成分表示の確認が必要だが、食事の写真をAIに読み込ませるだけでも、栄養バランスや食生活の偏りを大まかにつかむことはできる。[15] そこで見えてきた不足を、まず食事の改善によって補えるか考える。そのうえで、普段の食生活だけでは補いにくい栄養素や、身体づくり、美容、健康維持、ダイエットといった目的に対して有効性が認められた成分を、サプリメントとして取り入れるという発想だ。例えば、筋力向上を目指す男性なら、筋トレとの併用による効果が研究で示されているクレアチンが候補になる。2024年のメタ分析では、クレアチンを併用したグループは、筋トレのみのグループと比べて除脂肪体重の増加量が平均1.14kg多かった。[16] iHerbで取り扱うCalifornia Gold Nutrition(カリフォルニアゴールドニュートリション)の「スポーツ ピュアクレアチン モノハイドレート」などが具体的な選択肢だ。また、食物繊維が不足しがちな食生活なら、水溶性食物繊維のサイリウムも検討に値する。2025年のメタ分析では、サイリウムの摂取によるLDLコレステロールの低下が報告されている。[17] 商品例としては、Viva Naturals(ビバナチュラルズ)の「オーガニック オオバコ外皮パウダー」などがある。ただし、十分な水とともに摂る必要があり、野菜や果物に含まれるほかの栄養素まで代替できるわけではない。さらに、日照機会や食生活からビタミンD不足が疑われる場合には、必要性を確認したうえで、NOW Foods(ナウフーズ)の「ビタミンD3 1,000 IU」のような製品も候補となる。ただし、ビタミンDは過剰摂取にも注意が必要な栄養素であり、不足しているかどうか分からない段階での安易な追加は避けたい。[18] このように、サプリメントにもそれぞれ異なる役割がある。プロテインは不足しがちなタンパク質を補うために使い、クレアチンのように継続的な摂取が前提となる成分は目的に応じて活用する。必要なものを手元に備えておけば、忙しい日にも自分の身体に合った選択がしやすくなるだろう。もっとも、備えておくことと、何でも飲むことは別の話だ。サプリメント同士で成分が重複していないか、期待する効果に十分な科学的根拠があるか、身体への負担はないかまで見極めたい。プロテインも、数あるサプリメントのひとつに過ぎない。食事から得られる栄養の豊かさ、調理にかかる時間や労力、サプリメントの成分や身体への影響も含めて考える。何を摂るかと同じくらい、何を摂らないか。その選択にこそ、身体への投資の質が表れる。
参考文献
[1] 株式会社 明治「ザバスクオリティ」 (インテージSRI+、2025年1月〜12月、粉末プロテイン市場・プロテインドリンク市場、ブランド別累計販売金額)
[2] 食品産業新聞社ニュースWEB「【明治】栄養食品やスポーツ栄養の価格改定・内容量変更」 (2026年7月31日)
[3] 食品新聞「明治 プロテイン飲料22品値上げ 12月出荷分から6~11%」 (2026年10月13日)
[4] Nicolle, L. “Protein brands grapple with soaring whey costs amid heightened demand.” NutraIngredients (2026年6月19日)
[5] 食品産業新聞社ニュースWEB「明治『ザバス BIOPRO ヨーグルト味』発売 / 『ザバス』ブランド初、乳酸菌発酵の『発酵プロテイン』を採用」 (2026年7月1日)
[6] Lyubomirova, T. “Women are shaping the next frontier of protein innovation.” FoodNavigator (2025年10月15日)
[9] World Health Organization. “Use of non-sugar sweeteners: WHO guideline.” (2023年5月15日)
[10] National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases. “Symptoms & Causes of Lactose Intolerance.” (2018年)

















