
パーカに細身のジョガーパンツ、足元にはスニーカー。アスレジャーと聞いて、そんな2010年代らしい着こなしを思い浮かべるなら、そのイメージは更新したい。ランニングを筆頭にスポーツが存在感を増すいま、競技由来の機能服やシューズはファッションの領域へ深く浸透。かつての「スポーツウェアを街で着る」発想から、現在はスポーツ、ウェルネス、都市生活が自然につながるスタイルへ進化している。今回は、その変遷と現在地をひも解き、いま押さえておきたいブランドとともに魅力を紹介する。
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アスレジャーとは?スポーツウェアの機能性とデザインを日常着へ取り入れるファッションスタイル
アスレジャー(Athleisure)とは、Athletic(運動)とLeisure(余暇)を掛け合わせた造語。スポーツウェアが持つ機能性やデザインを、街着や日常着へ取り入れるファッションスタイルを指す。スポーツテイストを装いのアクセントとして楽しむ「スポーツミックス」とも近いが、アスレジャーは快適性や動きやすさまで日常着の価値として取り込む、ライフスタイルとの結びつきが強いのが特徴だ。現在では一過性のトレンドを越え、スポーツと日常をシームレスにつなぐ現代的な服装の考え方として定着している。
時代ごとに変化してきた支持される理由や象徴する事柄アスレジャーの変遷を辿る
アスレジャーは、時代とともに支持される理由や象徴するブランド、ファッションへの取り入れられ方を変えてきた。ここでは2010年代と2020年代に分け、その広がりと進化を追っていく。
スポーツウェアが日常着になった2010年代lululemonの台頭を機に、トレーニングウェアで1日をシームレスにつなぐ価値観が普及
フィットネスやヨガへの関心が高まり、服装全体のカジュアル化も進んだ2010年代。アスレジャー普及の象徴となったのがlululemon(ルルレモン)だ。運動時だけでなく、その前後の移動や食事、買い物までトレーニングウェアのまま過ごすスタイルが支持され、「着替えずに1日を快適につなぐ」という新たな価値観が浸透していった。同時期にはラグジュアリーファッション側でもスポーツへの接近が加速。ランウェイにナイロンやレギンス、スニーカーなど競技由来の要素が入り込み、スポーツウェアが実用品の枠を越えてファッションの表現として扱われる兆しも見え始めた。
July 27, 2020, Hong Kong, China: Canadian sportswear clothing band, Lululemon logo and store seen in Hong Kong. (Credit Image: © Miguel Candela/SOPA Images via ZUMA Wire)
PRADA Spring/Summer 2017 – Milan Collection
ウェルネスがファッションになった2020年代ALOがゲームチェンジャーとなり、アスレジャーはラグジュアリーなライフスタイルを映すファッションへ
2020年代に入ると、アスレジャーは「快適なスポーツウェアを日常で着る」だけでは語れなくなる。象徴的な存在がALO(アロ)だ。ヨガやトレーニングを出自としながら、ウェルネスを軸にラグジュアリー領域まで世界観を拡張し、服装を通じて健康への意識や過ごし方まで表現するスタイルを押し広げた。ファッションと本格的なパフォーマンスウェアの距離も急速に縮まり、2022年にはLOEWE(ロエベ)とOn(オン)、2024年にはOnとPOST ARCHIVE FACTION(ポスト アーカイブ ファクション)が協業。さらにDistrict Vision(ディストリクト ヴィジョン)やSATISFY(サティスファイ)など、競技性能と高いファッション性を前提に設計するブランドも存在感を増している。スポーツ、ウェルネス、ラグジュアリーの境界が溶け合うこと。それこそが現代のアスレジャーを特徴づける変化だ。
大人がアスレジャーを取り入れる魅力ファッション性と動きやすさを両立し、一日を快適につなぐ
アスレジャーの魅力は、ファッション性と日常の快適さを両立できることにある。ストレッチ性や軽量性、吸汗速乾性、クッション性といったスポーツウェアならではの機能は、歩く、移動する、長時間座るといった日常の動作を快適にするだけでなく、そのままジムへ向かったり、仕事帰りにランニングをしたりと、ワークアウトへのハードルまで下げてくれる。そのうえ、テクニカル素材や立体的なシルエット、ランニングシューズなどを取り入れれば、いつもの装いにも現代的な変化が生まれる。着こなしを楽しみながら、行動範囲まで広げられることがアスレジャーの強みだ。
アスレジャーのイマがわかる!現在のアスレジャーを象徴する5ブランド
アスレジャーの広がりとともに、選択肢となるブランドも大きく変化した。ここでは、その礎を築いた存在から、ウェルネスやランニングを軸に新たな価値観を提示する新世代まで、現在のアスレジャーを語るうえで押さえておきたい5ブランドを紹介する。
アスレジャーを日常着として定着させたパイオニア1. lululemon
1998年にカナダ・バンクーバーで創業したルルレモンは、ヨガウェアを起点にアスレジャーというカテゴリーを世界へ広げた代表格。現在のメンズでは、ランニングやトレーニングに対応する本格的なスポーツウェアから、日常使いを想定したパンツやトップスまで幅広く展開する。なかでも「ABC」シリーズは、ストレッチ性や速乾性といった機能を備えながら、一般的なトラウザーや5ポケットパンツに近いルックスを実現。スポーツウェアの快適性を普段着へ持ち込むという、アスレジャー本来の魅力を体現する存在だ。
ウェルネスをラグジュアリーなライフスタイルへ昇華2. ALO
2007年にロサンゼルスで誕生したアロは、ヨガウェアをルーツに持ちながら、現在はアスレジャーの枠を大きく越えている。シルクやカシミヤを取り入れたコレクション、イタリア製レザーバッグ、ウェルネスクラブなどへ領域を広げ、健康や運動をラグジュアリーな生活の一部として表現。2026年にはカンヌ国際映画祭やモナコグランプリに合わせてヨット上でウェルネス体験を展開するなど、「何を着るか」だけでなく「どう過ごすか」までブランドの世界観へ取り込んでいる。
【関連記事】
高性能なランニングギアをファッションの最前線へ3. On
スイス発のオンは、独自のランニングテクノロジーを武器にしながら、ファッションとの距離を急速に縮めてきたブランド。LOEWEとの協業ではラグジュアリーなクラフトとパフォーマンス技術を融合し、POST ARCHIVE FACTIONとのプロジェクトでは前衛的なプロダクトデザインをランニングウェアやシューズへ落とし込んだ。PAF側も、オンとの協業をファッション業界へ踏み込むプロダクトデザインの延長として語っている。競技用シューズがそのままファッションアイテムになり得る、2020年代のアスレジャーを象徴する存在のひとつだ。
スポーツアイウェアを起点にランニングとウェルネスをひとつの文化へ4. District Vision
Saint LaurentやAcne Studiosで働いていた創業者2人が、ランニングと瞑想への関心をきっかけに2015年に立ち上げたディストリクト ヴィジョン。日本の技術を取り入れた高性能なスポーツアイウェアからスタートし、現在はランニングウェアやシューズまで展開する。特徴的なのは、身体能力だけでなく精神面まで含めてアスリートを捉えている点。ランニング、ファッション、ウェルネスがひとつのライフスタイルとして交差する、現代アスレジャーを理解するうえで格好のブランドだ。
ランニングウェアにパンクとハイファッションの感性を持ち込む5. SATISFY
2015年にパリでスタートしたサティスファイは、本気で走るための機能性と、既存のスポーツウェアとは一線を画すデザインを両立させたランニングブランドだ。創業者Brice Partouche(ブライス・パルトゥーシュ)が抱いていたのは、「走るからといってアスリートらしい格好をする必要はない」という発想。ヴィンテージのバンドTシャツやパンクカルチャーから着想したグラフィック、独自開発のテクニカル素材などを組み合わせ、ランニングウェアそのものに強いファッション性を与えた。いまではDistrict Visionと並び、ラグジュアリーファッション市場からも注目される存在となっている。







































