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男はいかにして、アクセサリーを選ぶべきか?

男はいかにして、アクセサリーを選ぶべきか?

かつてヨーロッパの貴族にとって、アクセサリーはおしゃれのための飾りではなかった。家紋を刻んだシグネットリングは、家系を示すと同時に、文書へ自らの印を残すための道具。ナポレオンが創設し、自身も身につけたレジオン・ドヌールの徽章は、軍功や国家への貢献を示す栄誉の証だった。受け継いだ血統を表すもの。己の力で勝ち取った名誉を刻むもの。そこには必ず、身につける理由があった。では、現代の男はどうだろう。流行しているから? 服が物足りないから? 何となく格好よく見えるから? 男がアクセサリーを着ける意味を、今一度考えたい。

男前たちから学ぶアクセサリーに対する5の向き合い方

アクセサリーは、何を着けるかよりも、どのような意識で身につけるかで差がつく。かつて貴族が血統や立場、功績を装身具に託したように、現代の男にもアクセサリーとの向き合い方を考える余地は十分にある。

アクセサリーに対しての向き合い方1己を飾るためではなく自分の意思を保つために選ぶ

かつてのシグネットリングは、家系や身分を示す印だった。勲章や徽章には、本人が果たした役割や功績が刻まれている。アクセサリーは単に容姿を華やかにするものではなく、その人が何者であるかを伝える道具だった。現代の男が、血統や爵位を示す必要はない。それでも、身につける品には本人の価値観が表れる。値段や知名度ではなく、自分が選んだ理由があるか。その理由は、大っぴらに他人へ説明するためでなく、自分自身が納得して身につけるために必要だ。

例えば、昇進、独立、転職、事業の成功。人生の節目に選んだアクセサリーは、自分が成し遂げたことを形に残す一品となる。ただし、それを周囲へ誇示し始めた瞬間、そのアクセサリーは本人の自信ではなく、他人からの評価を求める道具に変わりかねない。節目のアクセサリーは、他人へ成功を説明するためではなく、自分がどこまで進んできたかを忘れないために着けるもの。迷いが生じたとき、身につけたアクセサリーを見て、当時の決断や覚悟を思い出す。そうした個人的な役割があれば、必要以上に目立たせる必要はない。

ヴァシュロン・コンスタンタンの時計572万円(ヴァシュロン・コンスタンタン 0120-63-1755)フレッドのブレスレット91万8500円、バックル51万1500円、リング44万2200円(フレッド カスタマーサービス 03-6679-2011)ジュリアスタートオプティカルのサングラス5万4450円(コンティニュエ 03-3792-8978

アクセサリーに対しての向き合い方2主役を増やすほど、伝わるものはぼやける

映画『スパイダーマン3』は、主人公の葛藤に加えて、3人のヴィランと複数の人間関係を一作に詰め込み、物語の焦点が散ったと評された。見せ場は多い。それなのに、何を見るべきかが分からない。これはアクセサリーも同じだ。存在感のある時計、リング、ブレスレット、ネックレス。すべてに主役を任せれば、華やかにはなる。しかし、全部が自分を主張した瞬間、どれも印象に残らなくなる。アクセサリーは、数を増やすほど良くなるわけではない。自分にとって意味のある一品を決め、それ以外を引く。その方が、その男が何を大切にしているかは伝わりやすい。

写真:ロイター/アフロ

チャールズ国王は、左手の小指にシグネットリングを着け、その手のひら側へ細い結婚指輪を重ねている。家系や公的な立場を示すリングと、婚姻という私的な約束を示すリング。意味の異なる2本だが、ともに国王自身を形づくるものとして、一つの指にすっきりと収められている。

アクセサリーに対しての向き合い方3服よりも、場所と役割に合わせる

アクセサリーを選ぶとき、多くの男は服との相性を考える。シルバーなら黒い服、ゴールドならブラウン系といった合わせ方も、見た目を整えるうえでは有効だろう。しかし、服以上に意識したいのが、出向く場所と、そこで自分が担う役割だ。重要な商談に臨むシーンと、海辺で休日を過ごすシーンでは、同じアクセサリーでも適切な見せ方が異なる。仕事の場では、相手への敬意を優先して装飾を抑える。旅先なら、その土地の文化や手仕事を感じさせるバングルを楽しむ。格式ある会食では、品のある時計やカフリンクスが、その場を大切にしている意思を伝える。

ただし、TPOをわきまえるとは、常に控えめでいることではない。エルヴィス・プレスリーは1973年頃、宝飾職人に対し、誰が見てもエルヴィスだと分かる大きなステージリングを求めた。何万人もの視線を引き受ける舞台では、日常の節度よりも、「キング」としての存在感が必要だったからだ。彼にとって大ぶりなリングは、単なる好みではなく、演者としての自分を一回り大きく見せる舞台装置だった。

Elvis Presley, 1956 写真:PictureLux/アフロ

初対面の相手と主導権を争う商談や、多くの視線を集める登壇でも、普段より強い自分を見せる必要がある。そんなとき、輪郭の明確な時計や重みのあるシグネットリングは、言葉を発する前から男の覚悟や立場を印象づける。引くべき場では引き、前へ出るべき場では力を借りる。アクセサリーは、その場で自分が果たす役割を、外見から支える道具にもなると心得たい。

アクセサリーとの向き合い方4受け継いだアクセサリーを日常に馴染ませ、自分の時間を重ねる

父や祖父から譲られた時計の価値は、製造年の古さや市場価格だけでは測れない。自分より前の世代が身につけていたものを、今度は自分が使う。その連続性に意味がある。受け継いだ時計を特別扱いして保管するのではなく、現在の生活の中で自然に使う。その行為によって、家族の記憶は懐古趣味ではなく、自分の時間の一部へ変わっていく。

↑俳優のマイルズ・テラーは、亡くなった祖父の時計を受け継いでいる。2025年のロサンゼルス山火事で自宅から避難した際、持ち出せた数少ない私物のひとつがこの時計だった。その後、『The Late Show with Stephen Colbert』へ祖父の時計をシンプルなオールブラックの装い合わせて出演し、観客に披露している。

アクセサリーとの向き合い方5旅先で見つけた一品で、記憶を持ち歩く

旅先で手に入れたアクセサリーには、商品そのものを超えた記憶が残る。買った土地の空気、その場で交わした会話、ともに旅をした相手。身につけるたび、忘れかけていた時間が呼び戻される。このアクセサリーは、自分にとって具体的な場所や経験と結びついているから、ほかで代替できなくなる。

自分の歴史は自分が作るアクセサリーの意味は、買った後に生まれる

貴族のシグネットリングも、ナポレオンが授けた徽章も、作られた時点で意味を備えていたわけではない。家系が受け継がれ、功績が積み重なった結果として、その形に意味が宿った。

現代のアクセサリーも同じ。店で手に取った瞬間は、まだ素材とデザインでしかない。それを着けて商談に臨み、家族と食卓を囲み、旅に出る。何度も身につけ、その都度の判断や約束を重ねるうちに、一本のリングや一本の時計は、自分の履歴を映すものへ変わっていく。だからこそ、どれを買うかと同じくらい、買った後にどう扱うかが重要になる。

血統や爵位が、意味を保証してくれる時代ではない。何を選び、どの場所へ着けていき、どれだけの時間をともにするか。男のアクセサリーに宿る意味は、自分の手で積み上げるほかない。

写真:Launchmetrics/spotlight/アフロ

 

編集部 三井
マフィアの世界では、地位が上の人間ほど身なりを整えなければならないという文化がある、と聞いたことがあります。立場を可視化するために身につける。アクセサリーには、そういう戦略的な役割もあるはずです。その理由を、いちいち他人へ説明する必要はありません。ただ、自分の中で答えを持っているかどうかは、身につけたときの佇まいに表れると思っています。
編集部 入江
私が普段から身につけているのは、祖母から受け継いだ70年代のセリーヌのブレスレットです。母を産んだばかりの祖母が、自営業を営んでいた兄妹から贈られたものだと聞いています。祖母には孫が6人います。誰に渡してもよかったはずのものを、なぜ自分だったのか。あるとき母から、祖母がこう話していたと聞かされました。「あの子が一番かわいくて、一番期待している。兄妹が商売をしていた頃のように、この家がもう一度栄えてほしい。そう願って託したのだ」と。その商売は、兄妹が亡くなったことで、すでに幕を下ろしています。それでも、期待だけがこのブレスレットに残って、私の手首にあります。目に入るたび、祖母が元気なうちにもっと成長して、少しでも孝行したいと思わせてくれる一本です。
編集部 泉
結婚指輪に選んだのは、エルメスのエヴァー・シェーヌ・ダンクル。そして30歳を迎えた節目には「これからもよろしく」という互いへの贈り物として、ブレスレットのシェーヌ・ダンクルを購入しました。どちらも、一生をかけて付き合っていくつもりのアクセサリーです。数年間ほぼ毎日着けていますが、いまだに飽きが来ません。ふとした瞬間に目に入るたび、やっぱりいいな、と満足感に浸っています。

戦略として。受け継いだものとして。誰かと交わした約束として。同じ編集部の中でも、アクセサリーを着ける理由はこれだけ違う。あなたはどうか。今日身につけているそのアクセサリーを選んだ理由を、ぜひアンケートで聞かせて欲しい。

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