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クラフトビールがもっと美味くなる豆知識10選

クラフトビールがもっと美味くなる豆知識10選

いまやコンビニの棚にも個性豊かな銘柄が並ぶほど、身近な存在になったクラフトビール。味や香りはもちろん、思わず手に取りたくなる缶のデザインまで、その楽しみ方は実に多彩だ。さらに、クラフトビールの面白さは味や香りだけにとどまらない。歴史をたどれば意外な人物や事件が登場し、造り手たちの発想には思わず驚かされるエピソードもある。そんな背景を知れば、いつもの一杯だって少し美味しく感じられるはず。今回は、誰かに話したくなるクラフトビールの豆知識を紹介する。

クラフトビールの豆知識11994年の酒税法改正が転機。日本のクラフトビール文化はここから動き出した


日本のクラフトビール史における大きな転機が1994年だ。酒税法の規制緩和によって、ビール製造免許に必要な年間最低製造数量が2,000klから60klへ引き下げられた。それまで大規模な設備なしでは現実的でなかったビール造りに、小さな醸造所が参入できるようになったのだ。改正後の3年間で300を超える醸造所が誕生し、全国各地で「地ビール」ブームが巻き起こる。現在につながる日本のクラフトビール文化が一気に花開いた背景には、味や技術だけでなく制度の変化があった。(1)

クラフトビールの豆知識2ジミー・カーターがホームブリュー解禁に署名。米クラフトビール革命の土台に


アメリカのクラフトビール文化を語るうえで外せない人物のひとりが、意外にも第39代大統領Jimmy Carter(ジミー・カーター)だ。禁酒法が撤廃された後も、家庭でビールを造るホームブリューイングは連邦法上の規制が残っていた。1978年、カーターが関連法案に署名したことで、家庭で自家消費用のビールを造る道が連邦レベルで開かれた。その後、ホームブリューを楽しむ人々のコミュニティが拡大し、そこからプロの醸造家へ転身する者も続出。現代アメリカのクラフトビール革命を支えた土壌のひとつになった。(2)

クラフトビールの豆知識3禁酒法時代、工業用アルコール由来の違法酒で失明・死亡事故が発生


1920年から1933年まで続いたアメリカ禁酒法時代には、酒を求める需要が地下市場へ流れ、工業用アルコールを再蒸留した違法酒まで出回った。連邦当局は飲用への転用を防ぐため工業用アルコールの変性処理を強化したが、メタノールなど毒性のある成分を含む酒による中毒が社会問題化。失明や死亡に至るケースも発生した。近年の経済史研究でも、禁酒法撤廃後に都市部の事故死が大きく減ったことから、毒性の高い違法酒が当時の死亡増加に関わっていた可能性が指摘されている。クラフトビールを育てたホームブリュー文化の前史には、酒を造る自由そのものが大きく制限された時代があった。(3)

クラフトビールの豆知識4洗濯機メーカーの御曹司が廃業寸前の醸造所を再建。米クラフトビール革命の先駆者に


Fritz Maytag(フリッツ・メイタグ)は、家電メーカーMaytag創業者のひ孫。1965年、廃業寸前だったAnchor Brewing Company(アンカー・ブリューイング・カンパニー)の株式51%を取得し、のちに単独オーナーとなった。醸造経験はなかったものの、古い醸造書を読み、欧州のブルワリーを訪ね、ビール造りを徹底的に学習。アンカーを立て直すだけでなく、ポーターやバーレイワイン、ホップを大胆に使ったLiberty Aleなど、当時のアメリカでは珍しかったスタイルを次々に世へ送り出した。大量生産ラガー一色だった市場に「小さな醸造所だからこそ造れる味」を示した、現代クラフトビールの先駆者だ。(4)

クラフトビールの豆知識5おもちゃのアメフトゲームでホップを連続投入。名作『60 Minute IPA』誕生の裏側


Dogfish Head(ドッグフィッシュ・ヘッド)創業者のSam Calagione(サム・カラジオーネ)は1999年、料理番組でシェフが胡椒を少しずつ振り続ける姿を見て、ホップも連続的に投入できないかと考えた。そこで中古店で見つけた電動アメリカンフットボールゲームを改造。振動を利用し、煮沸釜へホップを少量ずつ落とし続ける仕組みを作った。この「continual hopping」と呼ばれる手法から生まれた代表作が、60分間ホップを加え続ける「60 Minute IPA」。実際に使われたゲーム機は、現在Smithsonianの国立アメリカ歴史博物館に収蔵されている。(5)

クラフトビールの豆知識6IPAはペールエールから発展。インド輸出で人気を広げた“ホップ強め”のエール


IPAは、ペールエールから発展したスタイル。どちらもホップの香りや苦味を楽しめるエール系で、IPAは香りと苦味をよりはっきり感じられる。名前だけを見ると別ジャンルのようだが、両者の系譜はかなり近い。また「インドまで運ぶ途中で腐らないよう、ホップを大量投入してIPAが発明された」という有名な説明も、実際の歴史をかなり単純化したもの。当時インドへ輸出されていたペールエールの中で、ホップを強く効かせたタイプが徐々にIPAとして認識されていったと考える方が実態に近い。(6)

クラフトビールの豆知識7酵母をロケットで宇宙へ。帰還後に造られたインペリアルスタウト『Ground Control』


2014年、アメリカのNinkasi Brewing Company(ニンカシ・ブリューイング・カンパニー)は、民間ロケットで6種類の醸造用酵母を宇宙へ送った。無事に帰還した酵母を使って地上で醸造されたのが、インペリアルスタウト「Ground Control」だ。ヘーゼルナッツ、スターアニス、カカオニブも加えられた異色作で、クラフトビールらしい実験精神を宇宙まで拡張した格好。正確には「宇宙で醸造されたビール」ではなく、「宇宙を旅した酵母から造られたビール」である。(7)

クラフトビールの豆知識8オバマ大統領が醸造キットを購入。ホワイトハウス産の蜂蜜でビールを自家醸造


Barack Obama(バラク・オバマ)政権では2011年、ホワイトハウス内でビール造りが始まった。きっかけを作ったのは当時の上級政策顧問Sam Kass(サム・カス)らで、オバマ自身が醸造キットを購入。最初の「White House Honey Brown Ale」を皮切りに、Honey BlondeやHoney Porterも造られた。さらにユニークなのが、ホワイトハウス南庭の養蜂箱で採れた蜂蜜を使っていたこと。Smithsonianによれば、ホワイトハウス敷地内でビール醸造を行った大統領として確認されているのはオバマが初とされる。(8)

クラフトビールの豆知識9約2700年前の“ミダス王の酒”を科学で復活。古代の味をクラフトビールで再現


Dogfish Head(ドッグフィッシュ・ヘッド)は、考古学者Patrick McGovern(パトリック・マクガヴァン)と組み、古代の酒を現代に蘇らせる「Ancient Ales」を展開してきた。その代表格が「Midas Touch」。ミダス王の墓とされる紀元前700年頃の墳墓から発見された飲料の残留物を化学分析し、大麦、蜂蜜、マスカット系ブドウ、サフランを組み合わせて再構築した。厳密には現代のビール、ワイン、ミードの境界をまたぐような酒だが、約2700年前の味を科学とクラフト醸造で現代へつないだ発想は圧巻だ。(9)

クラフトビールの豆知識10アルコール度数55%。“ビールの限界”に挑んだBrewDog『The End of History』


2010年、スコットランドのBrewDog(ブリュードッグ)が発表した「The End of History」のアルコール度数は、驚異の55%。ベルジャンスタイルのブロンドエールをベースに、凍結濃縮によってアルコール度数を極限まで高めたものだ。スコットランド産のイラクサやジュニパーベリーも使用し、限定生産されたボトルはオコジョや灰色リスの剥製に収められた。凍結濃縮した55%の酒をどこまで「ビール」と呼ぶのかという議論まで巻き起こしたが、それこそが「ビールとは何か」という常識を揺さぶるブリュードッグの狙い。クラフトビールの自由さを極端な形で体現した一本と言える。(10)

参考文献

(1) The Japan Times「Japan’s craft beer scene: 25 years in the making」 (2018年10月6日)
(2) Smithsonian Magazine「The Schoolteacher Who Sparked America’s Craft Brew Revolution」
(3) Explorations in Economic History「Urban mortality and the repeal of federal prohibition」
(4) Craft Beer & Brewing / The Oxford Companion to Beer「Maytag, Fritz」
(5) Smithsonian Magazine「Here’s What’s Brewing in the New Smithsonian Beer Collections」 (2019年9月16日)
(6) Smithsonian Magazine「How the India Pale Ale Got Its Name」 (2015年4月7日)
(7) Smithsonian Magazine「How Do You Make Beer in Space?」
(8) Smithsonian Magazine「How Barack Obama Became the First President to Brew Beer at the White House」 (2017年7月12日)
(9) Smithsonian Magazine「The Beer Archaeologist」
(10) Eater「BrewDog Unveils the World’s Strongest, Squirreliest Beer Ever」 (2010年7月22日)

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