シャンパンにまつわる10の雑学

シャンパンにまつわる10の雑学

祝いの席でグラスを掲げることはあっても、シャンパンの炭酸がどのように生まれるのか、なぜ黒ブドウから白いシャンパンが造れるのか、ラベルに記された小さなアルファベットが何を意味するのかまで知る人は多くない。フランスのシャンパーニュ地方で育まれてきたこの酒には、産地や品種、製法、ラベル、ボトルに至るまで興味深い背景が詰まっている。今回は、知れば次の一杯が少し面白くなるシャンパンにまつわる雑学をQ&A形式で紹介する。

Q1. そもそも「シャンパン」の定義は?A:フランス・シャンパーニュ地方で、AOCの規定に沿って造られた発泡性ワイン。

「Champagne(シャンパーニュ)」はフランス北東部の産地名。シャンパンを名乗れるのは、定められたシャンパーニュ地方の区域で収穫された認可品種のブドウを使い、収穫量や圧搾、瓶内二次発酵、熟成などAOCの規定に沿って造られた発泡性ワインだ。シャンパーニュ地方以外で同じ瓶内二次発酵を採用していても、原則として「Champagne」は名乗れない。ちなみに、米国には今も「California Champagne」と表記する商品が存在する。2006年3月10日以前に米国政府から承認を受けていた一部のラベルについては、EUと米国のワイン貿易協定に伴う祖父条項によって「Champagne」の継続使用が認められているためだ。

Q2. シャンパーニュ地方ってどんな場所?A:フランス北東部、パリの東約150kmに広がる冷涼なワイン産地。

シャンパーニュ地方は、フランス北東部に位置するワイン産地。パリから東へ約150km、ランスやエペルネといった街を中心にブドウ畑が広がっている。フランスの主要ワイン産地の中でも北に位置し、冷涼な気候によってブドウの酸が保たれやすいのが特徴。地域を象徴する白亜質や石灰質の土壌は水はけにも優れ、シャンパンの原料となるブドウ栽培を支えている。主な栽培地は、モンターニュ・ド・ランス、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ、コート・デ・ブラン、コート・ド・セザンヌ、コート・デ・バールの5エリア。それぞれ気候や土壌、斜面の向きなどが異なり、モンターニュ・ド・ランスではピノ・ノワール、ヴァレ・ド・ラ・マルヌではムニエ、コート・デ・ブランではシャルドネが多く栽培されるなど、地域ごとに得意とするブドウにも違いがある。

Q3. シャンパンには何種類のブドウが使われている?A:通常の認可品種は8種類。ただし、約99.7%を3品種が占める。

シャンパンに使用されているブドウは、通常の認可品種として8種類ある。ただし、シャンパーニュ地方の栽培面積の約99.7%を占めるのは、ピノ・ノワール、シャルドネ、ムニエの3品種だ。残る5品種は、アルバンヌ、プティ・メリエ、ピノ・ブラン、ピノ・グリ、2025年に正式認可されたシャルドネ・ロゼ。栽培量はごくわずかだが、古くからシャンパーニュで育てられてきた品種も含まれる。さらに、この8品種とは別枠で、病害への耐性を持ち、気候変動への適応などを目的とした「Voltis(ヴォルティス)」も試験的に現在は認められている。

Q4. 黒いブドウから、なぜ白いシャンパンが造れる?A:黒ブドウも果汁そのものは白いため。

シャンパンを代表する3品種のうち、白ブドウはシャルドネだけ。ピノ・ノワールとムニエは果皮が黒い黒ブドウだ。それでも多くのシャンパンが白く仕上がるのは、黒ブドウでも果汁自体にはほとんど色がついていないため。黒ブドウを搾ったあと、皮の色が果汁に移る前に分ければ白いワインを造ることができる。黒ブドウだけを使って造る白いシャンパンは「Blanc de Noirs(ブラン・ド・ノワール)」と呼ばれる。意味は「黒から造る白」。ピノ・ノワールやムニエから造られ、一般的にコクがあり、飲みごたえを感じやすい傾向がある。そして、白ブドウだけを使うものが「Blanc de Blancs(ブラン・ド・ブラン)」。こちらは「白から造る白」という意味で、現在流通する多くの商品ではシャルドネが使われている。

Q5. シャンパンの炭酸はどうやって生まれる?A:ベースとなるワインに糖と酵母を加え、瓶内で発酵を起こして炭酸を生み出す。

シャンパンは、まず発泡していないベースとなるワインを造る。それらをブレンドした後に加えるのが「Liqueur de Tirage(リキュール・ド・ティラージュ)」。糖と酵母を加えた液体で、瓶の中でもう一度発酵を起こすために使われる。酵母が糖を分解するとアルコールと炭酸ガスが発生し、密閉された瓶内で炭酸ガスがワインに溶け込むことで、シャンパンの炭酸が生まれる。シャンパンは、この「瓶内二次発酵」を行うことが製法上の条件として定められている。また、発酵を終えたボトルの内部には、一般的な自動車用タイヤの約3倍もの圧力がかかるため、通常のワインより頑丈なボトルが使われている。

Q6. シャンパンは完成までどれくらい熟成させる?A:ノンヴィンテージでも最低15カ月。ヴィンテージなら最低3年。

ベースとなるワインをブレンドし、糖と酵母を加えて瓶詰めすると、前述した瓶内二次発酵が始まる。発酵後は、そのまま瓶の中で熟成。シャンパンではこの熟成期間にも規定があり、複数の収穫年のワインを組み合わせて造る一般的なNon Vintage(NV)は瓶詰めから最低15カ月。その年に収穫したブドウを使い、ラベルに収穫年が記されるVintage Champagne(ヴィンテージ・シャンパン)では最低3年と定められている。実際には規定を上回り、NVで2〜3年、ヴィンテージで4〜10年ほど熟成させるケースも多い。熟成中の瓶には、二次発酵を終えた酵母が沈殿物として残る。これが「澱」だ。この澱とワインを長期間触れさせることで、パンや焼き菓子、トーストなどを思わせる複雑な香りが生まれる。

Q7. シャンパンは熟成後、どんな工程を経て完成する?A:澱を瓶口に集めて取り除き、最後に甘辛度を調整して仕上げる。

熟成を終えたシャンパンは、まず瓶の中に残った澱を瓶口へ集める。この工程が「Remuage(ルミュアージュ)」だ。伝統的な方法では、瓶を「Pupitre(ピュピトル)」と呼ばれる穴の開いた台に斜めに差し込み、少しずつ回転させながら徐々に瓶口を下へ向けていく。これを繰り返すことで、瓶内に広がっていた澱が瓶口付近へ集まる。かつては熟練した職人が1本ずつ手作業で行っていたが、現在は「Gyropalette(ジャイロパレット)」と呼ばれる機械を使い、多数のボトルをまとめて回転・傾斜させる方法が主流となっている。

ルミュアージュで澱を集めた後、実際に取り除く工程が「Dégorgement(デゴルジュマン)」。瓶口を約マイナス27℃まで冷やして澱をワインごと凍らせ、栓を外した際の瓶内の圧力によって外へ押し出す。

続いて行われるのが「Dosage(ドザージュ)」だ。デゴルジュマンによって減った分を補いながら、ワインと糖分などからなる「Liqueur d’Expédition(リキュール・デクスペディション)」を加えて最終的な甘辛度を調整する。仕上がったシャンパンは糖分量に応じてBrut、Extra Brut、Demi-Secなどに分類され、糖を加えないBrut Natureも存在する。

Q8. シャンパンにも「格付け」はある?A:かつては、ブドウが栽培される「村」ごとに格付けする制度が存在した。

かつてシャンパーニュ地方には、ブドウが栽培される村ごとに評価を付ける「Échelle des Crus(エシェル・デ・クリュ)」という制度が存在した。1911年に始まったもので、各村を80〜100%で評価し、その数字をブドウの取引価格に反映。たとえば95%と評価された村のブドウなら、基準価格の95%で取引されるという仕組みだった。その後、100%と評価された村には「Grand Cru(グラン・クリュ)」、90%以上の村には「Premier Cru(プルミエ・クリュ)」という呼称が導入された。ブドウ価格を決めるためのエシェル・デ・クリュは2010年に廃止されたが、これらの呼称は現在も残っており、対象となる村のブドウだけで造られたシャンパンにはGrand CruやPremier Cruと表示できる。つまり、シャンパンにおけるGrand CruやPremier Cruは、生産者やボトルそのものを順位付けしたものではなく、ブドウの産地となる村の歴史的な格付けに由来する呼称だ。

Q9. シャンパンのラベルを見ると何がわかる?A:甘辛度や収穫年、使われたブドウ、生産者の形態まで読み取れる。

シャンパンのラベルには、その1本について知るためのさまざまな情報が記されている。AOCを示す「Champagne」の表記をはじめ、ブランド名、生産者名、容量、アルコール度数、甘辛度などは必ず確認できる。さらに商品によっては、収穫年や使われたブドウのタイプ、前述した村の格付けなども記載される。なかでも覚えておきたいのが、甘辛度を示す表記と生産者登録番号だ。甘辛度は糖分量によって複数に分類され、生産者登録番号の先頭にある2文字からは、そのシャンパンがどのような生産体制で造られたのかまで読み取れる。それぞれの意味は以下の通り。

甘辛度
表記 糖分量
Brut Nature / Pas Dosé / Dosage Zéro 3g/L未満、かつ糖分を添加していない
Extra Brut 6g/L未満
Brut 12g/L未満
Extra Dry 12〜17g/L
Sec 17〜32g/L
Demi-Sec 32〜50g/L
Doux 50g/L超
生産者登録番号
表記 名称 意味
NM Négociant Manipulant 自社栽培に加えて、購入したブドウなども使ってシャンパンを造る生産者
RM Récoltant Manipulant 自ら栽培したブドウを使い、シャンパンを造って販売する生産者
CM Coopérative de Manipulation 組合員が栽培したブドウを使ってシャンパンを造る協同組合
RC Récoltant Coopérateur 自ら栽培したブドウを協同組合へ持ち込み、そこで造られたシャンパンを自らのブランドで販売する生産者
SR Société de Récoltants 同じ一族など複数の栽培農家が共同で、自分たちのブドウからシャンパンを造る形態
ND Négociant Distributeur 完成したシャンパンを購入し、自社でラベルを付けて販売する事業者
MA Marque d’Acheteur 販売店など買い手側のブランド名で販売されるシャンパン

Q10. 巨大なシャンパンボトルは特注品?それとも決まった呼び名がある?A:決まった呼び名がある。30Lまで、容量ごとに固有の名称が付けられている。

シャンパンには750mlを超える大型ボトルが複数あり、1.5Lから最大30Lまで容量ごとに固有の呼び名が付けられている。大型になるほど旧約聖書などに登場する人物の名前が増えていく。この命名習慣は19世紀にシャンパンハウスが始め、その後ほかのワイン産地にも広がったとされる。ただし、なぜ聖書の人物を採用したのかは現在も明らかになっていない。例えば「Jéroboam(ジェロボアム)」は古代イスラエルの王、「Mathusalem(マチュザレム)」は969歳まで生きたとされる旧約聖書の人物、「Nabuchodonosor(ナビュコドノゾール)」は古代バビロニアの王ネブカドネザル2世に由来する。

シャンパンのボトルサイズと名称を見る
容量 名称 750mlボトル換算
750ml Bouteille(ブテイユ) 1本
1.5L Magnum(マグナム) 2本
3L Jéroboam(ジェロボアム) 4本
4.5L Réhoboam(レオボアム) 6本
6L Mathusalem(マチュザレム) 8本
9L Salmanazar(サルマナザール) 12本
12L Balthazar(バルタザール) 16本
15L Nabuchodonosor(ナビュコドノゾール) 20本
18L Salomon(サロモン) 24本
27L Primat / Goliath(プリマ / ゴリアテ) 36本
30L Melchizedec / Midas(メルキゼデック / ミダス) 40本

 

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