ドレスからカジュアルまで、オンオフを問わずキレイ目なコーデを作るのに欠かせない端正な大人顔のボトムス「スラックス」。テーラード由来のドレス感を標準装備するスラックスは、ジャケパンスタイルはもちろんのこと、シャツやTシャツを使ったカジュアルな装いも上品に仕上がる。今回は「スラックス」にフォーカスし、選び方から注目の着こなし&アイテムまでを紹介!
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スラックスとは?
スラックスというとスーツパンツのようなスリムかつドレッシーなものを思い浮かべるが、アメリカ英語の「slack(ゆるい)」という単語から名付けられたため、本来は作業着やジーンズを除くゆとりのあるカジュアルパンツ全般を指す言葉だ。アメリカではスーツ以外のパンツを呼ぶ際に使われていたが、現在ではセミフォーマルなパンツとして呼称されている。それは日本でも同様で、スーツに付属するパンツやドレッシーなパンツをスラックスと呼ぶ。
ちなみにイギリス英語の“トラウザーズ”も同義語として使われることが多いが、スラックスと比べてドレステイストが高いイメージが強い。英語圏では基本的に、ドレスパンツのことをトラウザーズと呼ぶため、海外でショッピングなどをする際はスラックスとトラウザーズを使い分けられるとスマートだ。
スラックス選びでメンズが注目すべき6つのポイントを紹介!
サイズ感やシルエット、ディテールデザインなど、こだわるポイントが多く奥が深いスラックス。ここからはスラックス選びで悩まれているメンズに向けて、まず注目するのにオススメのポイントをピックアップ!
スラックス選びのポイント①「シルエットがコーデの印象を大きく左右する!」
まずスラックスで注目したいのがシルエットだ。ここでは「王道」と「トレンド」の2つの視点から、スラックス選びの参考になるポイントを解説!
やはり王道は“テーパードシルエット”!
現代で最もベーシックとされるスラックスは、腰回りに適度なゆとりを持たせながら、裾にかけて絞られていくテーパードシルエットのものだ。身体のプロポーションを活かすかのように、脚のラインに沿って自然と足首に向かって細くなっているものが主流となっている。また現代で主流なスラックスの裾幅は気持ち細めな18cm前後というのも見逃せないポイント。ワタリにたっぷりとゆとりを持たせながらも、足元で適度にスマートな雰囲気をキープした現代的なシルエットのスラックスは、オンオフ問わず使えるレギュラー品として一本は所有しておきたい。
トレンド視点で選ぶなら“ワイドスラックス”が本命に!
トレンド視点でスラックスを選ぶなら、深めな股上とゆるい腰回り、足元までストンと落ちるようなシルエットを採用したワイドシルエットが狙い目だ。80年代のバブル期に流行したアルマーニのソフトスーツスタイルを彷彿とさせるようなパンツのシルエットは、まさに洒落者たちが考えるイマの気分に近い。はたまた、トラッドなスタイルをオーバーサイズで現代的に昇華した旬なシティボーイファッションが好みの方ならパイブドステムのチノパンがしっくりくるかもしれない。いずれにせよ、テイストは違えどパンツのシルエットは共通してワイドが注目を集めている。
スラックス選びのポイント②「スラックスの顔となるタック・プリーツに注目!」
シルエットの次にスラックスの表情を決める重要ディテールとなるのがタック・プリーツだ。時代によってプリーツの有無や数のトレンドが異なるのは興味深いポイント。必ずしも流行に乗る必要はないが、プリーツひとつで印象が大きく変わるため、スラックスを選ぶ際はプリーツの有無を意識してみてはいかがだろうか?「ノープリーツ」「ツープリーツ/ツータック」「ワンプリーツ」の3つに分けて、それぞれの特徴や魅力について紹介していく。
2000年代の主流だった“ノープリーツ”はスタイリッシュな見た目が特徴
プリーツの無いパンツを指すノープリーツ。装飾が無いため、腰回りをスッキリと仕上げられるのが特徴だ。2000年代に入って約10年間のビジネスシーンでは、細身のノープリーツパンツが王道とされていたため、ノープリーツのスラックスに馴染みが深いという方も多いはず。ここ数年ではプリーツ入りのスラックスが主流であったが、昨今Y2Kファッションが注目されはじめているため、ブームが再燃する可能性も。
クラシックなムードに仕上げるなら“ツータック”が有力!
トレンドであるゆったりとした腰回りを作るプリーツ(タック)。ウエスト周辺にヒダが入ることで動きに遊びをきかせつつ、視覚的に華やかさをプラスできるディテールだ。そんなディテールを両側フロントに2つずつ施したものを“ツータック/ツープリーツ”と呼ぶ。現在はクラシック回帰の流れもあり、トレンドを意識したパンツにはほとんどこのディテールが取り入れられているといっても過言ではない。
迷ったらバランスの取れた“ワンプリーツ”が安心
2プリーツだとTOO MUCH、逆にノープリーツは気分じゃないなど、どちらのチョイスにも踏み切れないという方には、1プリーツ入りのほどよいゆとりを持ったスラックスが◎ スマートとルーズの中間を行くシルエットで体に馴染みやすく、トレンドコンシャスでスタイリッシュな装いにキマることうけあいだ。
知ると差がつく豆知識:タックとプリーツの違いは?
ショップや雑誌、SNSで見かける「タックパンツ」や「プリーツパンツ」という名称。普段はなんとなく目にしてスルーしているものの、いざその違いを聞かれると返答に詰まるという方は少なくないはず。基本的にプリーツとタックは下記のような判断で呼び分けられている。頭の片隅に留めておけば、ショップスタッフに専門用語で案内されてもスマートに受け応えられるはず。
・プリーツ:直線状に上から下まで生地に折り目を付けたもの
・タック:プリーツの線を途中で消したもの
実はスラックスのプリーツは向きによって呼び方が変わる!
ちなみにプリーツの向きも重要なポイント。ヒダが内側を向いたインプリーツ(フォワードプリーツ)が英国的かつクラシックなディテールとされている。またイタリアでは外側を向いたアウトプリーツ(リバースプリーツ)が主流で、こちらはよりカジュアル感が増すと言われている。シーンやスタイルに応じて使い分けるのがオススメだ。
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スラックス選びのポイント③「クラシックならベルトレス。しかし、ビジネスシーンでベルトが必要な場合はベルトループ付きを!」
クラシックなスタイルを取り入れるのであれば、ベルトレスも外せない選択肢のひとつ。そもそもベルトループとは1920年代に生まれたディテールで、服飾史においては歴史が浅いうえに作業着や軍服などに用いられていたもの。リーバイスが開発した世界初のジーンズ“501”も、初期モデルはベルトループがなくサスペンダーで吊るすタイプであった。そのためベルトレス仕様が最もクラシックであり、パンツはサスペンダーで吊るしウエスト部分のサイドアジャスターで調節するのが正統とされている。
しかし、ビジネスシーンにおいてベルトは欠かせないアイテムのひとつ。ベルトをしていないとスーツスタイルに締まりがなく、どこか抜けた印象に仕上がってしまうことも。そのため、現代のビジネスシーンにおいて大事な会議やプレゼン、打ち合わせなどびしっとキメた服装が求められる際にはベルトを締めるのがベターだろう。ちなみに、フォーマルな装いが要求される場においてスリーピーススーツを着る際にはベルトをしないのが一般的とされているため、着用シーンはもちろんスーツの種類によってもベルトの有無を選択するのが◎
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スラックス選びのポイント④「シーンや季節に応じた生地、柄を選ぶのがお約束」
いかにシルエットやディテールにこだわっていても、季節に応じた生地が使用されていないとコーデにチグハグ感がでるのはおろか、着用する気も起きないというのが本音というところ。ロロ・ピアーナ社の“フォーシーズンズ”や、ドーメル社の“アマデウス365”などオールシーズン快適に過ごせる生地ももちろん良いが、コーディネートに洒落感を持たせるなら季節感を演出する選択肢も捨てがたい。春夏はコットンやリネン、サマーウールなど軽い素材の生地を。秋冬であればフランネルやサキソニー、ツイードといった起毛感と重厚感のある生地をチョイスすると季節らしさを演出できる。
春夏主要生地 | 秋冬主要生地 |
コットンツイル | フランネル |
リネン | サキソニー |
モヘア | ツイード |
シアサッカー | コーデュロイ |
トロピカルウール | キャバリーツイル |
フレスコ | ベルベット |
クレープ | ドスキン |
コードレーン | ベロア |
出張が多いという方には、ゼニア社の“トラベラー”などのシワの復元力がある生地を使用したスラックスがオススメだ。ポリエステルやナイロンといった化学繊維を用いてストレッチ性や耐シワ性、ウォッシャブル性といった機能を持たせたモデルも良いだろう。
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スラックス選びのポイント⑤「裾の仕上げもシーンに合わせてチョイスを!シングルvsダブル」
伝統的な正装として知られる燕尾服やタキシード、モーニングのパンツの裾には折り返しがついていないのが一般的だ。そのため、シングルはフォーマルに仕上がり、ダブルであればスポーティーに。冠婚葬祭のときなど礼装が要求される場ではダブルはタブーだが、ビジネスシーンにおいてはシングル・ダブルどちらを選んでも何ら問題ないとされている。ダブルにする際は幅3.5~4㎝がベーシックで、太すぎるとカジュアルな印象が強くなってしまうため、そのバランスには注意したいところ。
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スラックス選びのポイント⑥「王道はやはりパンツ専業ブランド!」
数年続くクラシック回帰の流れを作ったのはイタリアが誇るパンツ専業ブランドに他ならない。英国のクラシカルディテールをイタリア的に解釈しモダンに仕上げ、かつ生地までこだわりぬいている。トレンドコンシャスなデザインのスラックスを選ぶなら、王道の王道をゆくパンツ専業ブランドをチェックしてみてはいかがだろうか。
イタリア随一の名門パンツ専業ブランド「INCOTEX(インコテックス)」
1951年にイタリアのヴェネツィアで創業したパンツブランド“INCOTEX”。従業員20名ほどの工場からのスタートだったが、クオリティの高い素材、職人の巧みな縫製技術から作り出される製品が評価されていく。その品質・信頼性の高さから過去にはバーバリーやプラダなど、世界に名を馳せる一流ブランドのパンツを手がけたことも。厳選された素材、高度な裁断・縫製技術による洗練された美脚シルエットと抜群の穿き心地の良さを誇る。日本人対応のディテールを取り入れた“N35”や、そのN35にプリーツを施した進化版“N24”など多くのモデルが高い評価を得ている。
あのドメニコ・ジャンフラーテ氏が手がけるパンツ専業ブランド「PT TORINO(ピーティー トリノ)」
2008年にイタリア・トリノで創業した“PT TORINO”。以前のブランドネームはPT01。他のパンツ専業ブランドに比べ歴史は浅いものの、イタリアのパンツブランドとして不動の地位を獲得している。メンズファッションスナップの常連でもあるドメニコ・ジャンフラーテ氏がディレクターを務めていることでも有名だ。「メンズクロージングにおいて最も重要なアイテムはパンツ」というコンセプトのもと、技術とノウハウが注がれたパンツはまさに逸品。定番モデルである“TRAVELLER”や、クラシックなディテールやシルエットに現代的な解釈で改良を加えてニュークラシックに仕上げた“THE DRAPER”などが人気を博している。普段使いはもちろん、ビジネスパンツとしても使える汎用性の高さもメンズ達が惹かれる理由の一つだ。
シルエットの美しさに定評のあるパンツ専業ブランド「GTA(ジーティーアー)」
1955年、イタリアのセルバッツァーノで創業したパンツ専業ファクトリーとして知られる“GTA”。日本でもINCOTEXやPT01に並ぶほどの知名度と人気を誇り、穿き心地とラインの美しさには定評がある。長年のドレスパンツ作りで培った美脚、美尻、足長効果抜群のシルエットや素材の表情豊かで色使いの綺麗な生地を使用し、ディテールにまでこだわったモノ作りが特徴だ。1プリーツで大人気の“BAYRON”をはじめ、2プリーツでベルトレス仕様のクラシカルデザインな“HERRIK”など選択肢が幅広いのも嬉しい。
細部までのこだわりでツウを唸らせる真面目なパンツ専業ブランド「ROTA(ロータ)」
1962年にイタリア・パルマで創業したパンツ専業ブランド。一般的なブランドでは取り入れられないようなディテールにまでこだわる真面目なパンツ作りによって、世界中のファッション玄人から支持を集めている。例えば、全ての箇所に採用するボタンはナットボタンであったり、パンツ裾は補強布を施して堅牢性を高めるなど。現在の主流とは一線を画す、普遍的なラインとエレガントな雰囲気が魅力的な、クラシコイタリアを代表するパンツブランドだ。
イタリアらしい遊びゴコロのきいたスラックスを手がけるパンツ専業ブランド「BERWICH(ベルウィッチ)」
1975年にイタリアのプーリア州マルティナフランカにてパンツ専業会社として創業したICOMAN 2000 s.r.l.が、2004年に展開をスタートしたオリジナルのパンツブランド“BERWICH”。テーパードのかかった現代的なシルエットが特徴のモデルを多く展開している。パーツに至るまで100%メイドインイタリーにこだわり、遊びゴコロのあるディテールを取り入れたモノ作りで支持を集めている。クラシカルな雰囲気と現代の気分をうまく取り入れたフォルムの“PIERO”や、流麗なテーパードを描く“RAFFI”など高い人気を誇るモデルが多数存在する。
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