
約半世紀にわたり政界の最前線で重責を担い続ける麻生太郎。総理大臣や外務大臣として幾多の修羅場をくぐり抜け、85歳となった2025年現在も自民党の重鎮として確かな存在感を放つ。今回はそんな彼のスーツスタイルにフォーカス。国内外で注目を浴びてきたその装いは、風格と説得力を兼ね備えており、まさに重圧の中で信頼を勝ち取るための戦闘服だ。麻生太郎の装いを通じ、長く重鎮として君臨し続ける男のスーツ哲学を紐解く。
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麻生太郎に学ぶスーツスタイルの哲学1決してブレない基本美学
麻生太郎は、大学時代から現在まで、青山の老舗「テーラー森脇」でスーツを仕立てている。生地は常にロロ・ピアーナやゼニアといった最高級のモノ。そして、暑い地域への外遊などを除けば、選ぶのは決まって濃紺やチャコールグレーなどのダークトーンだ。ボルサリーノの帽子姿が印象的なため、イタリアっぽい雰囲気を想起する人が多いかもしれないが、スーツそのものは常に英国調の構築的な仕立てである。“和製チャーチル”とも呼ばれた吉田茂を祖父に持ち、自身も含め一族揃って英国への留学経験がある彼らしいサヴィル・ロウを想起させる佇まいだ。そんな威厳や風格に軸足を置いた装いこそ、政治の修羅場を生き抜いてきた麻生太郎のスタイルである。
麻生太郎に学ぶスーツスタイルの哲学2“神は細部に宿る”という言葉を体現した着こなし
ベストドレッサー賞を受賞したこともある麻生太郎のスーツスタイルは、生地や仕立ての良さのみならず、細部にまで貫かれたこだわりにこそ注目したい。彼のスーツの着こなしを象徴するのが、カフリンクスとシグネットリングだ。18〜19世紀のヨーロッパ上流階級の礼装シャツに端を発するダブルカフスシャツの袖に留められたカフリンクスは、常に彼の手元を彩る。左手小指に光るシグネットリングは、伝統的な英国紳士が身につける唯一の装飾品。古くは家紋や紋章を刻み、絆や信頼の証として受け継がれてきた。
さらに、彼の徹底的なこだわりを物語るのが、スラックスの裾に鉛を入れてシワを防いでいるという逸話だ。ある議員が「麻生氏だけスーツに一切シワがない」と不思議に思い、理由を尋ねたところ「裾に鉛が入っている」と明かされたという。見えない部分にまで手をかける、その精度が印象の差を生む好例だ。そして、彼の代名詞ともいえるボルサリーノのハットが、重鎮としての風格を完成させる。
麻生太郎に学ぶスーツスタイルの哲学3美しく着こなすための土台作り
どれほど上質なスーツも、着る人の体型が崩れればその精度は維持できない。麻生太郎が長年にわたり威厳ある装いを保ち続けられているのは、体型を変えない努力の賜物だ。とあるテレビ番組がテーラー森脇に取材したところによると、彼は大学時代から体型がまったく変わってないそう。食事管理や運動といった具体的な習慣を本人は公言していないものの、スーツを最良の状態で着るための自己管理を徹底していることは間違いないだろう。礼装の着こなしや体型から“ダラシ内閣”と揶揄された政権もあったが、麻生太郎のスーツスタイルは、その真逆を行く。多忙な日々のなかでも体型を崩さず、年齢を重ねても背筋の伸びた姿を保つことは容易ではない。それでも彼は、自らの外見を職務の一部として律してきた。見た目の印象を支えるのは、ブランドや仕立ての良さのみならず、日々の管理である。

























