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「ロンT」選びにこだわる【生地の選定がスタイルの精度を決める!?】

「ロンT」選びにこだわる【生地の選定がスタイルの精度を決める!?】

ビジネススタイルにおけるスーツ着こなしでは「梳毛のスーツ」「ブロードのシャツ」「表皮のドレスシューズ」というそれぞれのアイテムにおいて、これを選べば間違いないと言える生地・素材のお約束がある。であれば、洒落た大人の着こなしのスタンダードになりつつあるドレスMIXに合わせるTシャツの生地も、これぞ王道!と呼べるものがあって良いのではないだろうか。今回は『「ロンT」選びにこだわる【ドレスシャツのような理想のフィット感を考察】』の続編として、生地選びをテーマに理想のロンTの生地について考えてみる。

ドレス・カジュアルの見た目は編み方で変わる!?滑らかな光沢を放つスムース編みのTシャツに注目

例えば、ドレスシャツは同じ綿でつくられた生地でも、織り方によって種類が異なる。有名なのは、適度に表面に光沢があり、格式が高い場でのスーツ着こなしに対応可能とされている「ブロード」。そして、生地の表面に凹凸があり、ドレスカジュアルの着こなしに使いやすいとされている「オックスフォード」だ。これをTシャツに置き換えるなら「ブロード→スムース編み*1」「オックスフォード*2→天竺編み」のイメージが近いと筆者は考えている。スムース編みは天竺編みと比べて滑らかな表面感で光沢が生まれやすい。ドレッシーなブロードのシャツの代替として考えれば、ドレスMIXの着こなしのTシャツはスムース編みを選ぶのは理に適った選択と言えるのではないだろうか。

*1スムース編みとは、2つのゴム編みを裏合わせにして両面とも表地にした編み組織のこと。編地の表面が滑らかなことから“スムース”という名が付けられたが、別称としてインターロック編み、両面編みとも呼ばれる。

*2 ニットのもっとも基本的な編み組織。表目に縦方向の筋が見え、裏目は半円型の編目が表れる特徴がある。

編集部 橘
編み地だけでなく、Tシャツの生地に使用される糸の太さ、密度によっても生地の風合いは変わります。例えば、Tシャツの生地の糸は60番手以上になると繊細な印象を与えやすい傾向にあります。高番手の細い糸で編まれた生地は、上品な印象がある反面、耐久性の低さや肌が透ける問題が出てくるため、高番手の生地であればあるほど良いとは一概に言えないのが奥深いところ。以上のようなマニアックな視点でも生地をチェックできると、より自分の理想に近いロンT選びが実現できると思います。

Tシャツの一般的な編み地「天竺編み」でも繊細で光沢のある生地ならドレスMIXに使いやすい

再びシャツ生地の話に戻るが「オックスフォード」には糸の番手(太さ)や織りの密度によって呼び方が変わってくる。なかでも「ピンポイントオックスフォード」「ロイヤルオックスフォード」といった高番手という細い糸を高密度に織り込んだ生地は、凹凸が少なく光沢が生まれるため、ビジネススタイルに取り入れやすくなるという特徴がある。以上のように、カジュアルな印象を与えやすい構造の生地でも、繊細で光沢のある見た目に工夫されたものであればドレススタイルに合わせやすい場合も。

これをTシャツの生地に置き換えるなら、スムース編みと比べて凹凸がありカジュアルな見た目になりやすい天竺編みでも、高番手の糸を高密度に編んだり、光沢を生む加工が施された生地であれば、ドレスMIXスタイルにフィットしやすいと言える。スムース編みのTシャツに絞って理想のTシャツを探すのはもちろん正解だが、微妙なニュアンスにこだわった自身のスタイルを追求するために、あえて上品に仕上げられた天竺編みのTシャツでハズすという選択肢も一興だ。

狙うべき素材は?ロンTはやっぱりコットン製が主流!

現代のアパレル市場では、各メーカーが様々な工夫を凝らしてカットソー素材を生み出している。例えば、ここ数年では「メリノウール」を100%使用したカットソー類が注目を集めているが、カジュアルブランドが展開している場合が多く、ドレスMIXのファッションスタイルに合わせるために着用できるアイテムはまだ数が少ない。1枚での着用だけでなく、テーラードジャケットのインナーとしても使える着回し力の高さを考慮するなら、コットン100%の生地が有力な選択肢になるだろう。

ちょっとした差別化を狙うなら「シルク」「カシミヤ」「リネン」などを混紡することで、コットン生地に一味違う風合いを持たせた生地のロンTも狙い目だ。ただし、上で挙げた素材はどれも一般的なコットン素材よりも原料費が高い分、価格面で購入のハードルが上がる懸念がある。とりわけ「シルク」「カシミヤ」は洗濯によって風合いが変わりやすい素材のため、取扱いに一層の注意を払わなければならない場合も。そんな懸念点を理解した上で、ラグジュアリーなロマンを求められる余裕がある方は、ぜひ挑戦してみて欲しい。

 

トレーサビリティを取れる現代だからこそ生地の原料にまでこだわり、理想のスタイルを追求する

ハイブランドを筆頭に、トレーサビリティという「その製品がいつ、どこで、だれによって作られたのか」を追跡可能な状態にする取り組みが進む現代のファッション市場。ファッションブランドだけでなく、どのメーカーや産地の生地を使用しているかまで視野を広げられれば、より強固に自身のファッションスタイルを確立できるはず。例えば、コットンならスーピマ協会の商標がついたスーピマコットン。産地、品種、クオリティなど、厳しい基準をクリアした綿にだけスーピマという名称がつけられるため、同生地でつくられたTシャツはわかりやすく滑らかで高級感のある光沢を感じられるはずだ。他にも原料のブランド的な名称として知られているものだと、シーアイランドコットンやエジプシャンコットンなどが挙げられる。良い原料を使用したTシャツは相応の価格がするものの、ハイブランドのファッションロゴを見せつけるようなデザインを選ぶよりも控えめで、さりげなく見た目にクラス感を演出できるのが魅力。適度な大人のクラス感が求められるテーラードジャケットやスーツの着こなしに合わせるなら、コットンの原料メーカーにまでこだわった生地のロンTを選びたい。

また生地メーカーの職人に話を聞くと、同じコットン原料&編み地の生地でも、糸にする紡績、生地にする編立、色付けの染色・加工といった工程を、どの工場で誰が行うのかによって仕上がりの風合いが全く異なるという。トレーサビリティの取り組みがより浸透していけば、アパレル業界内の川上(生地や糸など、衣服の素材を製造する業種)ならではの「あの工場の仕上げはやっぱり違うよね」なんて会話が、消費者層の間でも当たり前になる日が来るかもしれない。

有名過ぎる生地のブランドはより目利きが重要な時代に突入!?

少しマニアックな話になるが、量販店でも使用されるほどメジャーな高級原料を使用している生地は、取り扱うファッションブランドによってグレードが分かれている場合も少なくない。例えば、低価格・コストパフォーマンスの良さを強みにしたブランドで使用されているのは、高級原料を象徴する名称を使用するために必要な最低限の基準を満たした生地だったりする。逆に「他でよく見る同じ名前の原料だけど、このブランドで使ってる生地は質感が違うな」と感じた場合は、基準を大幅に上回るグレードの高い原料を使用した生地の可能性が高い。「あの有名な原料を使ってるんだから、生地のクオリティは同じでしょ」と決めつけず、自身で生地の良し悪しを見極められる力を養っておくと、価格に納得感のある後悔のない買い物ができるだろう。

で、結局理想のロンTは何?

これまでロンT選びで筆者が重要だと感じるポイントを挙げてきたが、最終気になるのは「理想のロンTはどこに売っているのか」だろう。次の記事では、今までのフィット感と生地の観点から、理想に近いロンTを紹介していこうと思う。

この記事の著者

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