トレンドを象徴するキーワードとして現在進行形で注目されているのは「横ノリ」「ネオ・ノームコア」「グランパコア」などなど。現在進行形のトレンドはおさえながらも、さらに半歩先を行きたいメンズにおさえていただきたいと筆者が考えるキーワードにまつわる具体的なスタイルやアイテム、そのルーツ等を一挙に紹介していく。
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半歩先ゆくメンズの間で話題のスタイルキーワードは...ネオ・ウエスタンスタイル
ファッションシーンにおいて、次なるトレンドワードとして注目を集めはじめている「ウエスタンスタイル」。とりわけコテコテのウエスタンスタイルではなく、ウエスタンスタイルを現代風に解釈し着こなしに落とし込んだ、いわば「ネオ・ウエスタンスタイル」が、メンズシーンでブーム前夜を迎えている。そんなスタイルを牽引するのがファレル・ウィリアムスだ。24年春夏からルイ・ヴィトンのクリエイティブ・ディレクターとなった彼は現在、私服・コレクション共にウエスタンスタイルを全面に打ち出している。
Pharrell Williams and a guest arrive to attend a state dinner in honor of U.S. President Joe Biden and first lady Jill Biden at the Elysee Palace in Paris, France June 8, 2024. REUTERS/Sarah Meyssonnier
ルイ・ヴィトンのクリエイティブ・ディレクターに就任する以前から、ファッションアイコンとしてのポジションを確立しているファレル・ウィリアムス。そんな彼がファッション業界をリードする存在となったイマ、ブランドのフィルターを通して打ち出す「ネオ・ウエスタンスタイル」は、当たり前のように世界から注目を集めている。2024秋冬に提案するルイ・ヴィトンのメンズ·コレクションのキャンペーンビジュアルでは、パリからバージニアへと旅するルイ·ヴィトンの「旅の真髄(こころ)」をテーマに、伝統的なテーラリングウェアにウエスタン要素を融合したスタイルを表現。
Photographer: Colin DODGSON
また、その24秋冬コレクションの中核をなす”ワークウェア”をテーマとしたカプセルコレクションも発表された。このカプセル・コレクションは、ルイ・ヴィトンのサヴォアフェール(匠の技)を通じてアメリカ西部のワークウェアの起源を探求しており、ファレルとルイ・ヴィトンのフィロソフィーが融合したもの。コレクションを構成するアイテムにフォーカスすると、ウエスタンハットやウエスタンブーツ、さらにはウエスタンアイテムに見られる装飾を落とし込んだデニムが登場しており、ウエスタンが一貫したキーワードとなっているのが分かる。カプセルコレクションは、2024年の8月8日(木)に発売予定。ちなみにウエスタンからは少し話が逸れるが、ティンバーランドとのコラボによるルイ・ヴィトン初のワークブーツも大きな話題を集めているため、合わせてチェックしておきたい。
Photographer: Colin DODGSON
レディースファッションの「ネオ・ウエスタンスタイル」もチェック!
往々にしてレディースファッションのトレンドはメンズファッションのトレンドよりも一歩先を行っているが、ネオ・ウエスタンにおいてもそれは例外ではない。レディースファッションでは、2023年の夏頃よりロデオ選手のアダン・バヌエロスと交際中のベラ・ハディッドや、ケンダル・ジェンナーなどのセレブリティがウエスタンのアイテムを着用し始めたことで、人気を集めている。その中でも特に注目を集めているのがビヨンセだ。テキサスにルーツを持ち、幼少期からロデオなどに親しんできた彼女は、キャリアを通してウエスタン要素をファッションに取り入れていた。
Los Angeles, CA – *PREMIUM-EXCLUSIVE* – If that ain’t country what is?? Superstar Beyoncé arrived at a meeting in LA with her daughter Blue Ivy and entourage! Beyonce is seen following her latest album release ‘Cowboy Carter’ and she is sure dressed the part! Beyonce is seen wearing a head-to-toe full denim outfit consisting of trousers, button up shirt, denim boots and a cowboy hat to match. Yonce dipped her hat to avoid the camera’s and even had her lens with flash ready to snap a few pics! Pictured: Beyoncé BACKGRID USA 1 APRIL 2024 BYLINE MUST READ: SBJ / BACKGRID USA: +1 310 798 9111 / [email protected] UK: +44 208 344 2007 / [email protected] *UK Clients – Pictures Containing Children Please Pixelate Face Prior To Publication*
彼女は2016年頃より、『Daddy Lesson』などのシングルでカントリー&ウエスタンミュージックへアプローチを行っていたが、彼女の人種によって一部のカントリーファンから批判を浴びていた。そういった背景から、批判をこめて2024年3月29日にカントリー要素の強い『Cowboy carter』というアルバムをリリースし、全米アルバム・チャート初登場1位を獲得したことで、さらにウエスタンスタイルの牽引者として注目を集めている。ウエスタンスタイルをさらに掘ってみたいという方は、是非レディースのウエスタンスタイルを掘ってみてはいかがだろうか。
ネオ・ウエスタンスタイルの手引き①そもそもウエスタンスタイルとは?
いわゆるウエスタンスタイル=カウボーイスタイルと言っても差し支えないだろう。その起源は1848年のゴールドラッシュに遡る。当時ヨーロッパから移住し、牛飼いの文化を持ち込んだ彼らは馬を使って牛の世話をしていた。それがカウボーイと呼ばれるようになり、現在まで受け継がれている。1930年からは『駅馬車』などの西部劇や、ジミー・ロジャースなどに始まるカントリー&ウエスタンミュージックの流行により、カウボーイのスタイルがファッションとして意識されるようになってきた。具体的な当時の人気スタイルとしては、サスペンダーで吊ったリーバイスの501にウエスタンシャツの組み合わせ。5~60年代になると、ラングラー、リー、モンゴメリーワードなど、新たなカウボーイ向けブランドも現れ、よりファッションジャンルとしても確立されていった。テンガロンハットにウエスタンシャツを合わせ、ワイドベルトにデニムを履くようなウエスタンスタイルも、この年代以降のスタイルがベースとなっている。以下の写真は1960年公開の映画、『荒野の7人』のもので、まさに現代で想像されるカウボーイといったスタイルだ。
BRAD DEXTER, CHARLES BRONSON, HORST BUCHHOLZ, JAMES COBURN, ROBERT VAUGHN, STEVE MCQUEEN and YUL BRYNNER in THE MAGNIFICENT SEVEN, 1960, directed by JOHN STURGES. Copyright UNITED ARTISTS. Credit: UNITED ARTISTS / Album
ネオ・ウエスタンスタイルの手引き②他ジャンルと自由にミックスして、カントリー感を軽減する
クラシックなウエスタンスタイルにとどまらず、自由な解釈によって着こなしを構築するのがネオ・ウエスタンスタイルのポイントだ。具体的には、本来のウエスタンではあまり見られないモノトーンで色を統一したり、ウエスタンとは真反対の印象を持つシティーライクなスタイリングにウエスタンブーツを取り入れるなどが挙げられる。
ここからは、ネオ・ウエスタンスタイルの取り入れ方を様々な角度から紹介!
ネオ・ウエスタンスタイルの取り入れ方①ウエスタン要素を単品でプラス
「なかなかウエスタンスタイルを本格的に取り入れるのは難しい。」という方もいると思う。そんな方はブーツだけ、ベルトだけなど、一部に要素を散りばめてみてはいかがだろう。ネオ・ウエスタンスタイルを実践する海外の洒落者も、ウエスタンスタイルを完全に取り入れているわけではなく、一部に取り入れることでスタイルにトレンド感を出している。
ネオ・ウエスタンスタイルの取り入れ方②モダンな色合わせで野暮ったさを回避
ウエスタンスタイルとして思い浮かべる着こなしといえば、ブルーデニムにベージュのハットなど。街で着ると少し野暮ったい印象を与える可能性があるウエスタンスタイルも、色をモノトーンで統一すると一気に街に溶け込むスタイルに仕上がるだろう。
ネオ・ウエスタンスタイルの取り入れ方③リラックスシルエットをチョイスしてファッションとして成立させる
例えばジャストサイズのウエスタンのアイテムをチョイスすると、あまりにもリアルなカウボーイに寄り過ぎてしまう懸念がある。あくまでもファッションスタイルとして成立させるための手段のひとつとして、リラックスシルエットを意識するというのが有効。例えばウエスタンシャツに、最近流行しているリラックスフィットのパンツを合わせる。ワイドパンツにウエスタンベルトを取り入れるなどのアレンジをするだけでも、グッと感度の高さを感じるコーディネートを表現できるだろう。
最後に、普段のスタイルに一つ取り入れるだけで今っぽいウエスタンミックススタイルにプローチできるキーアイテムを紹介!
イマどきなウエスタンスタイルのキーアイテム①ウエスタンベルト
模様が彫られた大型のバックルに、ベルト先のプンターレ(チップ)が特徴であるウエスタンベルト。従来はスタッズやステッチなどで装飾を施したデザインものが多く、かなりインパクトの強いアイテムという印象だった。しかし、現代のウエスタンMIXスタイルで取り入れられているベルトは、通常より大きいバックルやプンターレといった象徴的なディテールを一部取り入れながら、細身のベルト幅かつ控えめな装飾に仕上げることで、様々なスタイリングに溶け込むよう調整されたものが多い。
OUR LEGACYのウエスタン レザーベルト
バックルやプンターレ以外の装飾を削ぎ落とすことで、幅広いコーディネートにフィットするよう調整されたウエスタンベルトを展開しているOUR LEGACY。同ブランドは、他にもウエスタン要素を強めたスタッズ付きのベルトなども発売しているため、シンプルなウエスタンベルトだけでなく、もう一癖のあるデザインをお求めの方にも是非チェックしていただきたい。
TORY LEATHERの1 Creased Belt
馬具メーカーとして誕生した背景を持つTORY LEATHER。バックル、プンターレに彫刻的なデザインを取り入れながらも、それ以外の装飾は施さず洗練された雰囲気をキープしているため、普段使いしやすい仕上がりとなっている。
イマどきなウエスタンスタイルのキーアイテム②ウエスタンシャツ
スナップボタンやショルダーヨーク(肩の切り替え部分)、フラップ付きのポケットが特徴のウエスタンシャツ。後述のウエスタンブーツやフリンジアイテムよりも普段のスタイルから外れないアイテムなので、服でウエスタン要素を取り入れたいとお考えの方は、まずはここから挑戦してみることをおすすめしたい。
LEMAIREのウエスタンシャツ
ジャストサイズかつデニムのイメージが強いウエスタンシャツも、リラックスシルエットかつデニム以外の素材で取り入れれば、さりげないウエスタン要素に。キレイめコーデにさりげなくネオ・ウエスタンのトレンド感を足すなら、ルメールのこんなシャツが狙い目だ。
OUR LEGACYのFrontier デニムシャツ
イイ感じにフェードしたブラックデニムの生地感が特徴的なウエスタン型シャツ。少しオーバーなサイジングが現代的なムードを演出するのにぴったりだ。
イマどきなウエスタンスタイルのキーアイテム③フリンジ付きのアイテム
ウエスタンを感じさせるディテールの代表格であるフリンジ。フリンジ付きのアイテムというと、レザージャケットやブーツといったものをイメージする人が多いだろう。近年はこれら以外にも様々なアイテムでフリンジが取り入れられているため、以下では今風で着こなしの主役となりそうなフリンジの取り入れ方をしているアイテムを紹介する。
Marcelo Burlon County of Milanのフリンジ ストレートジーンズ
サイドに付けられたフリンジがアクセントとなっているデニム。ネイティブアメリカンのウォーボンネット(頭飾り)を想起させるようなカラーリングで、当時敵対しながらも交流をしていたカウボーイとネイティブアメリカンの関係性を感じさせるようなアイテムとなっている。
Marcelo Burlon County of Milanのデニムを見る
Nanushka Jenのフリンジ クラッチバッグ
超ロングのフリンジがインパクト大のバッグ。非常にモードな印象で、持つだけでスタイリングのポイントとなることうけあいだ。フリンジの長さを活かし、結び方で自分なりのアレンジを加えてみるのも面白い。
イマどきなウエスタンスタイルのキーアイテム④ウエスタンブーツ
ウエスタンブーツも、いよいよトレンド観点から街で身につけるファッションアイテムとしての市民権を獲得していきそうな予感!?トニーラマ、ジャスティンなどの老舗ブランドをチョイスしてクラシックに寄せるも良し、独自の解釈を加えたデザイナーズブランドでモード感を追加するのもアリだ。今回はデザイナーズブランドのウエスタンブーツから、筆者の感性に響いた珠玉のアイテムを紹介する。
CamperLab Vengaのレザーブーツ
ウエスタンブーツをベースとし、ソールやアッパー部分の素材感などでファニーな要素が追加されたレザーブーツをピックアップ。ファイヤーパターンはウエスタンブーツで比較的多いタイプのデザインであるが、そんな中でも個性が光るパターンを採用しており、醸し出される唯一無二の存在感がグッとくる。
Eckhaus Lattaのレザーブーツ
こちらのアイテムはウエスタンブーツをベースとしているものの、ソールやアッパーが本格ウエスタンブーツと比べて華奢な印象になっており、よりモード感の強い雰囲気となっている。トゥがスクエアになっていたり、スエード素材で切り替えたりと、随所からエコーズ・ラッタらしい革新性を感じる一足となっているのが◎