メガネの聖地「鯖江」ちょっと意外な誕生秘話と戦略

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メガネの聖地「鯖江」ちょっと意外な誕生秘話と戦略

鯖江といえば「メガネの聖地」として世界から脚光を浴びるメガネ産地。すぐれた職人技術をベースに「東京ガールズコレクションへの進出」「メガネベストドレッサー賞の主催」「海外見本市への積極展開」「海外デザイン賞を勝ち取る日本人メガネデザイナーの台頭」「SABAEブランドの世界認知のひろがり」など日本人として誇らしくなる躍進が光ります。今回は「鯖江のメガネが誕生した意外なきっかけ」「発展の歴史」「V字回復を果たした戦略転換」「鯖江メガネ体験スポット」の紹介を通して鯖江メガネの魅力に迫ります!

メガネの一大産地「鯖江」を数値からみる

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鯖江産のメガネフレームは、国内シェア約95%とほぼ独占状態。低価格眼鏡が勢いを増す中にあっても世界シェア約20%を占めるなど輝かしい実績を誇ります。他にも「眼鏡産業従業者数5308人。鯖江市の就業者のうち6人に1人はメガネ産業に従事」「出荷額761億円」「眼鏡関連事業所数531軒」など、数値面から見てもメガネの一大産地となっています。(※平成20年工業統計調査鯖江市独自調査より引用) 写真は鯖江のシンボルタワーとしても有名な「メガネ会館」

鯖江のメガネ産業は「農閑期の副業」が原点

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鯖江市における眼鏡製造は明治38年に「国産メガネの祖」とも称される増永五左衛門が「豪雪に見舞われる農閑期の副業として、少ない初期投資で現金収入が得られる事業である」という点に目をつけ「メガネは近い将来、必需品になる」という先見性のもとスタートしたと言われています。しかし現在とは違い農業以外の産業が根付いていなかった鯖江ですから、メガネ職人といった人材は皆無。そんな文字通りゼロスタートの中、眼鏡作りが盛んだった大阪や東京から職人を師として招き、鯖江在住の若者に弟子として眼鏡の製造技術を習得させるという枠組みの中で、少しずつ産業として発展していきます。

職人による分業独立が進み街全体がひとつのメガネ工場に!

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職人師弟制度の中、「帳場」とよばれる工程ごとに細分化された職人グループごとに職人たちが腕を競い、切磋琢磨することで技術向上と分業独立がどんどん進み、街全体がひとつの「メガネ工場」と言えるような一大メガネ産地が形成されていきます。忍耐力を要する細かい作業を丁寧に根気よくこなせる真面目な県民性をベースにしつつ、大量生産にありがちな垂直統合型ではなく専門分野に特化して「己の技を磨くことに没頭できる環境」が整っていったことこそが鯖江メガネの品質を世界をうならせるレベルにまで引き上げた理由であると言っても過言ではないでしょう。

戦後の高度経済成長の中でメガネの需要が急増、鯖江がメガネ産地として成長

戦後の高度経済成長の中で眼鏡の需要が急増し、メガネ産地として大きく成長を遂げます。製造自動化による生産効率アップ、品質向上と技術開発に注力していきます。そんな鯖江の実力に目をつけた海外の1流ブランドからメガネ製造依頼も増加していきます。現状に満足せず技術開発を重ねた結果、1981年には世界初のチタン金属を用いたメガネフレームの製造技術の確立に成功。軽量かつ耐久性やバネ性に優れ、金属アレルギーを起こしにくいチタン製のメガネフレームは世界を席巻。鯖江の名が世界に知れ渡るきっかけともなりました。

中国メーカーの台頭による格安フレームの席巻に対抗。OEMから鯖江ブランドへと進化!

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順調に成長を続けるものと思われた鯖江のメガネ産業ですが、1992年をピークに生産量が落ち込み、出荷額・生産者ともに3割減、メガネ産業関連事業所の数は実に4割も減少しました。鯖江のメガネ産業は、製造受託いわゆるOEMがメインでした。中国メーカーの低価格フレームの流通、国内における格安メガネ店の増加によって衰退の道をたどっていきます。
そんな状況に歯止めをかけるべく2000年以降、鯖江市は事業者と一体となり「鯖江ブランド」を打ち出し、製造だけではなくプロモーションや販売も手がける戦略に方向転換。もともと世界的に評価の高かった職人技術をしっかりとアピールすることで、価格破壊が進む厳しいメガネ市場の中にあって、盤石の地位を築きあげることに成功していきます。

THE291 Fukui「20社以上が加盟する産地統一ブランド」

大きな方針転換の中、2003年からは「鯖江のメガネ」を国内外にアピールするべく、地元メーカー20社以上が参加する産地統一ブランド「THE291」(ザ・フクイ)が創立されます。「THE291」においては、厳しい審査を経て、認定を受ける必要があります。「高品質で高級品であり独創性があること」「世界に通用する洗練されたデザインと機能美を備えていること」「世界に誇る新素材や加工技術が盛り込まれていること」という3つのポイントをクリアした商品のみが「THE291」を名乗ることを許されるのです。

めがねミュージアム「現地から鯖江眼鏡を発信!」

地元業界が中心となり、鯖江のシンボルタワーでもある「めがね会館」内に「めがねミュージアム」が2010年3月にオープン。Made In JAPANの最新モデルが購入できるショップ、めがねフレームづくりを体験できる体験工房、めがねの歴史をより深く知ることができるめがね博物館によって構成されるスポット。めがねを「買う」「楽しむ」「識る(知る)」を満喫できる場所です。入場は無料。

GLASS GALLERY 291「青山のスタイリッシュな空間で最新の鯖江メガネが買える!」

福井県鯖江市が東京・南青山にて直営する国産眼鏡ショールーム。商品開発が行われている他、協会加盟のメガネ製造メーカー商品が展示されており、日本全国の小売店が商品を仕入れ検討するだけではなく、一般消費者が購入もできるスポット。最新の鯖江メガネが展示、販売されている高感度なスポットです。

鯖江メガネファクトリー「現場から発信する眼鏡のウェブマガジン」

数々のメガネ職人や鯖江のメガネ製造技術、メガネを愛する人々を取り上げるなど現場からディープなメガネ情報を発信するウェブマガジン。鯖江市産業環境部商工政策課が取材・編集・デザイン・Web製作を行っているそうです。メイドインジャパン推進における産官連携のお手本のような取り組みですね。メガネについて掘り下げた良質なコンテンツが豊富に揃っているので、メガネについてより深く知りたいという方に強くおすすめしたいウェブサイトです

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